●ニュースNo170(2002年11月1日発行)

「法と心理学会」3回大会参加報告
高裁前でまいたビラ
戦争は究極の人権否定 世界の人民とともにイラク反戦を

大井町ビラまき報告


 

9月20日 高裁前でビラまき

第三刑事部は私たちの申し入れに誠実に応えよ!

検察官に証拠開示を命令せよ!

高裁前でビラまきの写真1 高裁前でビラまきの写真2

【今回も大奮闘の坂本さん】

「法と心理学会」第三回大会参加報告

 「法と心理学会」の第三回大会が10月19日、20日の両日、神戸学院大学で行われたので、私と山村が参加しました。神戸学院大学というのだから、てっきり神戸の地で開催だと思いこみ、出獄した翌日の1995年12月20日以来だ、あの時はまだ震災の傷跡が生々しかったがどうなったかなと大会プログラムで確認したら、神戸ではなくて明石。でも、そんなことには少しもめげず「広島のアナゴご飯に負けないくらい明石もアナゴがうまいぞ」と期待に胸ふくらませて出かけました。

 さて、肝心の「法と心理学会」。今回は、一回・二回大会と異なって「富山事件」についての口頭発表はありません。

 ワークショップは「目撃供述のガイドライン・目撃供述の聴取について」(企画責任・法と心理学会目撃供述ガイドライン検討会)に参加しました。「もうすぐ学会は3年目を迎える。これを機会に、本学会は(目撃供述)ガイドラインの完成を目指した活動をあらためてはじめることにした」(プログラム)とあるとおり、すでに『季刊・刑事弁護』第32号には浜田寿美男さん(花園大学)の「目撃供述ガイドライン作成のために@『目撃』はいかにして証拠たりうるか」が掲載されています。
【具体例として「富山事件」をとりあげて、「7人の目撃者たちが複数回の事情聴取において、犯人の年齢をどう供述したか」「最初、『20歳から35歳まで』の範囲でてんでバラバラに分布していた。ところがこの供述が最後には『24歳から28歳まで』という4歳差の幅のなかに収斂している。もちろん目撃後、年齢の記憶が徐々に正確になるなどということは考えられない。とすればこの供述変遷をどのように理解すればよいのか」を分析。二審判決の「写真面割の正確性を担保するための基準」を「現実の事件に当てはめるときの認定があまりに杜撰」「問題点を列挙する」「真っ昼間に路上で間近に目撃したからといって、簡単に目撃状況がいいとはいえない。この事件の場合犯人は4人、それぞれがどこで何をしたかを目撃記憶するのは容易でないし、現に証人たちの多くがその点に無視しえない混乱を来している。また凶器でもって殴り殺されるところを見るという強い情動場面の影響も無視できない。おまけに目撃証人のなかには視力上の問題を抱えた人もいた。心理学上検討すべき点がいくつも指摘されているのにもかかわらず、判決はこれらを一切無視している」「写真面割りが早期に行われるという基準については、それを満たした人もいたが、現実にはずいぶんとこれが遅れた人もいた。『なるべく多数者の多数枚による写真が使用されていること』も、確かに多数枚の写真を見せたのだが、いずれも犯行声明を出した党派の人たちの逮捕写真ばかりで、目撃者はどの人物を特定しても『空くじ』なしの状態だった」「とりわけ問題だったのは『写真面割りの全過程が十分公正さを保持していると認められること』『呈示された写真のなかに必ず犯人がいるというものではない旨の選択の自由が識別者に確保されていること』である。実際の供述聴取、写真面割りの場面がまったく不可視の状態なのに、ただ取調官の法廷供述のみをもってこの基準をクリアしていると認定した。そしてこの点にからんで、『以上の識別は可及的相互に独立した複数人によってなされていること』にしても、『可及的相互に独立した複数人』によって目撃の供述・面割りがなされたとの保証はなく、むしろ捜査官を媒介にして7人の供述が影響しあっていることは、先の年齢供述だけでなく多くの論点でうかがわれた。捜査官が意図して誘導したとまではいわないにしても、『誘導』の事実はあちらこちらに垣間見られる。しかし裁判所はその点を看過して、一般的な基準を掲げ、その基準をクリアしているとの形式的な判断を下して、有罪の判決を行い、またそれがのちに最高裁で確定する。しかもその基準が実務上の成功例として後に援用されていく」と批判したうえで、「こんな様子を見ていると、まったく暗澹たる思いになって、愚痴のひとつも言いたくなる。しかし愚痴に終わってよい話ではない。心理学の研究者としてこの世界に関わり始めた以上、その責任において私たちのガイドラインを提案として提示していくことが、私たちの役割だと覚悟せねばならない」と決意が披瀝されています】
 「設立準備シンポジウム(1999年12月)での提案をたたき台に、内容の順序にしたがい、順次検討を加える」という方法を採るということで、今回のワークショップでは「初期の段階における目撃供述の聴取」をテーマにとりあげ、「目撃供述聴取に臨む基本姿勢」として「目撃供述の聴取全般にかかわって、その捜査手続きを適正なものにするために必要な基本姿勢は、『仮説検証の姿勢を守る』ことにある」「被疑者目撃供述が指し示す仮説を事実として認定するについては、考えうるその他の仮説が明確に排除されなくてはならない。つまり被疑者目撃供述についてあくまで仮説検証的な姿勢をとることを基本原則するべきである(※何が『仮説検証的な態度』を妨げてきたのか? →見込み、経験や勘への依存、確信の問題)」そして「この仮説検証的な姿勢を堅持するためには、次の3点を守らなければならない」と「1〈全手続き過程の厳正化〉被疑者目撃供述が聴取される過程、また被疑者との同一性識別の手続き過程はすべて、誘導・暗示の効果を排除すべく、できるかぎり厳正化されなければならない。供述という人的証拠は、物的証拠と違って、聴取者の質問の仕方、取り調べや手続きの状況によって左右されやすい微妙な証拠だからである。とりわけ容疑者を絞り込んで後に、その容疑を固めるべく証拠集め(有罪を示唆する証拠を選択的に収集する)するというような発想はきわめて危険であることを心得ていなければならない。供述の聴取や識別手続きという証拠収集の過程そのものが仮説検証であることを銘記すべきである」「2〈全手続き過程の可視化〉」「3〈全手続き過程の記録開示〉」の3点があげられた提起に具体的提案を加えて議論を深めることが目指され、日本の刑事裁判の実態たるや科学的知見とは無縁で、心理学者にとっては「信じがたい」の連続という驚くべき現実があらためて突き出されるなかで、これをいかに克服するかの原理的確認、方法論の確立が急務であるがその困難さもまた厳しい現実であることなど山積する課題がいっそう鮮明になるとともに、この学会の存在理由と成長・発展が望まれる根拠も浮き彫りになりました。法学のコメンテーターからのこの5年で10件の無罪判決があったという紹介に対して、会場から無罪率から推測すればその何百倍ものえん罪に泣く人がいるという指摘があるなど活発な意見の応酬があって、司法の現実への憤りがいかに激しいかを物語る場となりました。幾人か参加されていた若い研究者や学生諸君は、少なからぬ知的刺激を与えられたのではないでしょうか。私も当事者ということで「事件と裁判の実態、内容、とりわけ目撃供述聴取の様子と供述調書の隠匿・開示拒否という事実が知られていない。知らせる努力が足りないと実感している。広範な民衆にきちんと知ってもらい、理解してもらえば証拠開示・再審開始の展望は開けると考えている」旨発言させてもらいました。

 ポスター展示も興味深いテーマがいくつかあったうえに、鑑定をお願いしている心理学者の方の学識の一端に接するチャンスまであって、充実ということばがふさわしい雰囲気で頭に栄養を補給しながら懇親会に参加しました。
 前二回に比べると、会員も増え、実体も整ってきたが、今後も変わらず発足時の熱意が堅持されることを祈念しつつ帰途につきました。
 お目当てのアナゴは、アナゴづくしを鱈腹食べてきました。おいしかったです。頭もおなかもごちそうさまでした。 (富山)

(高裁前でまいたビラ 表)

無実は無罪に  富山保信さんは無実だ

再審請求を8年3ヶ月も放置

東京高裁第三刑事部は事実審理を開始せよ
検察官に証拠開示を命令せよ

 みなさん、現在東京高裁第三刑事部に係属している富山保信(とみやまやすのぶ)さんの再審事件(「富山事件」)は、再審請求からすでに8年3ヶ月がたとうとしています。その間に次々と裁判長が交代して、現裁判長の中川武隆裁判官で5人目です。交代する度に審理はやり直しを強いられます。こんなことがゆるされてよいのでしょうか。これでは再審制度は絵に描いた餅も同然です。再審においても、いや再審だからこそ「公平な裁判所の迅速な」裁判をうける権利がいっそう保障されるべきだと思います。
 私たちは、今年6月28日に高裁第三刑事部に7度目の申し入れを行いました。しかし、第三刑事部は、裁判官のみか書記官すら、私たちだけでなく富山さんにさえ会おうとはしませんでした。依然として証拠開示命令も出されなければ、事実審理が開始される様子もありません。はたして私たちの申し入れは裁判官に届いたのでしょうか。それを確認することすらできない状態です。
 日本の裁判所は、東京高裁は、第三刑事部は、いったいどうなっているのでしょう。こんな裁判所の、こんな有様で、私たちの人権は守られるのでしょうか。おおいに疑問です。
 富山さんは一貫して無実を訴えています。「公平らしさ」「法の安定性」を言うのならば、高裁第三刑事部は最低限、《検察官が隠し持っている証拠の開示命令》を出すべきです。「日本の刑事裁判を血の通った信頼できるもの」にするためにも、私たちは証拠開示命令そして一刻も早い再審開始を求めてやみません。
 みなさんのご支持、ご協力、ご注目を、心からお願いいたします。

富山さんは無実だ!一日も早い再審開始・無罪判決を

 1974年10月3日、品川区東大井で「殺人事件」が発生しました。この事件の「犯人」として、翌年1月、富山さんが逮捕されましたが、彼は一貫して「自分はやっていない」「事件があった時刻には池袋にいた」と無実を訴え続けています。アリバイは弁護士の調査によって裏付けられました。
 捜査当局が富山さんを犯人だとする根拠は、偶然、事件現場を通りかかった人々の目撃証言だけで、他に何の証拠もありません。
裁判の主要な争点は、この目撃証言の信用性です。しかし、目撃調書だけでも「34人分ある」(法廷での捜査責任者の証言)はずなのに、7人分しか開示されていません。しかも、いずれの証人も当初は富山さんとは似ても似つかぬ犯人像を供述していたのが、取り調べを重ねるにしたがって富山さんに似た犯人像を述べ始めます。
 一審は、この変遷には取調官の暗示・誘導が窺えるから信用できないと無罪を言い渡しました(1981年3月)。ところが、二審は、取り調べた警察官の「暗示・誘導はしていない」という主張を根拠に逆転有罪(懲役10年)を言い渡しました(1985年6月)。警察官が「私は暗示・誘導しました」と正直に言うでしょうか。冤罪が後を絶たないという厳然たる事実は、警察官が真実の証言などしないことを証明して余りあるのではないでしょうか。最高裁は「事実誤認の主張だから上告理由にあたらない」と門前払いしましたが、無実の人間が投獄されかけているから救済せよ、真実を究明せよという主張ほど上告理由に相当するものはなく、門前払いは職責放棄というものです。服役を余儀なくされた富山さんは、獄中から再審請求を行い(1994年6月20日)、1995年12月19日の満期出獄後も無実を訴え続けています。

無実の富山保信さんの再審無罪をかちとる会
(東京都港区新橋2−8−16石田ビル・救援連絡センター気付)
  電話・FAX 03−3591−1301
 ホームページのアドレスは、
 http://www4.ocn.ne.jp/~tomiyama/
 メールアドレスは、
  tomiyama@io.ocn.ne.jp 

(高裁前でまいたビラ 裏)

高裁第三刑事部は私たちの申し入れに誠実に応えよ

申し入れ書(ニュースNo166掲載参照


裁判所は検察官に証拠開示を命令せよ

 私たちは6月28日の申し入れにおいて富山さんの申入書(右記)を提出するとともに、いっしょに参加された阿藤周平さん(八海事件元被告)が「富山さんも私も裁判所を信用する。なぜか。それは無実だから。その、裁判所を信用する心を裏切らないようにお願いします」と「すみやかに正しい裁判をしてほしい。正しい裁判をすれば、この事件がえん罪だとわかります」という要望書を提出し、参加者一同「公正な裁判のためには、(裁判所は)すべての証拠を見る必要がある」「一人の人間の無実がかかっている。本気になってほしい」と訴えました。

 再審請求からすでに8年3ヶ月、もはやこれ以上の放置はゆるされません。
 「(証拠の)すべてを見て磐石の審理のもとで判決を出してほしい」「確定判決の是非を問う再審なのだから、すべての証拠を開示して判断すべきです」(富山さん)という切実かつ当然の訴えに、いまこそ高裁第三刑事部は応えるべきです。 私たちの申し入れに誠実に応えてください。

 検察官に証拠開示を命令してください。

戦争は究極の人権否定

世界の人民とともにイラク反戦のたたかいを

イラクのこどもたちを殺すなポスター 12.1有事法制廃案へ集会ポスター

 

12.7労働者のつどいポスター12.8日比谷野音集会ポスター

大井町ビラまき報告

今月の大井町での署名集めは
   亀・・・・・3名
   うり美・・・2名
   山村・・・・1名
   富山・・・・0名
でした。

 11月27日に開かれた「国労団結祭り」では、富山再審の証拠開示を求める署名とともに、木下信男先生からの要請で横浜事件の再審開始を求める署名もお願いしてまわり、183人の方々から署名していただきました。

大井町のYさんから

花の絵 大井町のYさんから

「明日のための第三十一歩。暑さと寒さと雨の差の変化が大きい今年の秋、傷病手当支給中の中、応援します」

というお便りとともに2000円頂きました。ありがとうございます。一日も早くお元気になられますように。