●ニュースNo172(2003年1月1日発行)

新しい年を迎えました。(阿藤)
いまやらないでいつやるのだ (富山)
悲惨な時代を繰り返さないために(坂本)
大きな声で証拠開示を訴えよう (大槻)
新年のひと言 (ウリ美)

シンポジウム 「冤罪・誤判はどうしたらなくせるか・・・司法改革と証拠開示のルール化を考える」に参加して(山村)

□大井町ビラまき報告 休載


 

今年こそ再審開始を!

東京高裁第三刑事部は検察官に証拠開示を命令せよ

大署名運動をやりぬこう

新しい年を迎えました。

 みなさんにはお元気で新年をお迎えになられたことと存じます。私も今年はめずらしく元気で新年を迎えることができました。富山再審の勝利を勝ち取るたたかいも新しい年を迎え、「今年こそは」と心を新たにするのですが、どうしたことか東京高裁は九年間も放置したままです。私たち「かちとる会」のみなさん、そして支援してくださる多くのみなさんよりも、無実の富山さんの心中を想うと何ともやりきれない怒りを感じます。この怒りこそ無実の罪を冤せられたもののみが知る怒りなのです。

 富山事件の再審勝利への道しるべは明白に示されています。私もみなさんとともにがんばりますので、更なるご支援を心からお願いいたします。

いまやらないでいつやるのだ

 このままでは日本も世界もやっていけない―もはや誰の目にも歴然としています。問題はどうするかです。私利私欲の集大成ともいうべき小泉政権は、破局・戦争に向かって舵を切りました。戦争は究極の人権蹂躙・人権否定であり、すでにまやかし「司法改革」というかたちで、再審請求どころか裁判すらうけられなくなる憲法否定・破壊・改悪のさきどりが行われようとしています。
 いまほど一人ひとりの生き方、在り方が問われているときはありません。
 「証拠を隠すな」「公平、公正な裁判をやれ」このきわめてシンプルな要求、証拠開示という具体的な問題提起をもって人間解放という普遍に連なる選択を訴えていくたたかいの前進が再審無罪をかちとり、ひいては戦争を阻止する力を形成します。本気で、必死になって、あらゆるところに訴えてまわるつもりです。よろしくお願いいたします。  (富山保信)

悲惨な時代を繰り返さないために

 今日、定例会に来る途中、小学校の校庭で子供達が元気に走りまわっていた。
 敗戦の時、僕は小学校六年生だった。僕らの子供の頃は、走りまわったり、あばれたりすると、腹の減るようなことをするなと親に怒られたもんだ。浜松町の駅に小便小僧が立っているけど、戦後、親に連れられてそこを通った時、「浮浪児」を初めて見た。親も、帰る家も、食べる物もない。小学校五〜六年生の子だったと思う。食べるものがなくなるというのは本当にきつい。人間、ひもじいというのがどれほど辛いことか、経験した者でないとわからないだろうな。
 空襲で壊れた家があっちこっちにあって、当時は燃料なんて他にないから、毎日、そこに薪を取りに行った。崩れた家には不発弾があったりして、知らないで触れると時に爆発することがあった。ある時、後ろでバーンと音がしたので振り返ると、一緒に薪を取りに来ていた子が火ダルマになっていた。油脂焼夷弾と言って、破裂すると火がついた油脂が飛び散ってそれが密着する。体についたのを慌てて手で払おうとすると今度はその手も燃え出す。熱いよー、熱いよーと転げまわるが、火はどんどん広がっていってどうにもならなかった。
 今日、校庭で走りまわっていた子供達を育てている親も戦争を知らない世代になっている。
 戦争というのは、子供達が自由に遊べなくなる社会だ。戦争、戦争と小泉が勝手に力んでいるが、戦争がどういうものか、わかっているのかね。小泉が自分で戦場に行くわけでもあるまいに。あの頃に戻しちゃいけないよ。それは戦争を知っている僕らがやらなくちゃいけないことだ。戦争を知っている世代が戦争の悲惨さを次の世代に引き継いでいかなきゃならない。
 富山再審のたたかいも、あの悲惨な時代に二度と戻さないためのたたかいだと思っている。
 (坂本さん談)

■「かちとる会」に来た年賀状から(その1)
木下信男さんから
大井町のOさんから

大きな声で証拠開示を訴えよう

大槻泰生

 戦争が終結して五十数年の日時が流れました。原爆投下後帰らざる肉親の安否を気遣いながら、放射能によって射抜かれ灼かれた後遺症障害による入退院を繰り返してきましたが、現在右耳の皮膚腫瘍(ガン)で手術をうけて入院しており、仲間の皆様方にたいへんご心配をおかけいたしております。
 アメリカは、地球の資源を特に中東の石油資源を独占しようと、強大な軍事力を背景に国連に恫喝と懐柔をもってのりこみ、国々を屈服させ、反米政権イラクを「テロ支援ならず者国家」ときめつけて、民族皆殺しをねらった核兵器の使用を機あらばやろうと画策しています。
 日本もそれに同調し、そのおこぼれをと公明・自民・保守の三党は、自分の失政をわれわれ労働者階級におしつけ、小選挙区制によって骨抜きにされた野党勢力とともに、教育基本法・労働法等々の人権法を改悪し、憲法を無視・否定して、戦争の出来る国を夢見てわれわれ人民への弾圧体制の強化にのりだしてきました。
 富山さんの再審請求は、再審を請求してから相当の日時がたっています。しかし、裁判所は結論をだしていません。それは富山さんがやっていないからです。
 私たちは、一審の無罪判決を当然のこととして考え、そのために油断をしました。権力はその隙を狙って、新聞・雑誌・ラジオ・テレビ等のマスコミを使って、過激派ならやりかねない、いややるだろうと世論操作を行い、世間も「上見て暮らすな、下見て暮らせ」という人間の持つ優越感を権力の罠に操られ、でたらめな証人・証言をうのみにして真実を見失い、二審判決をゆるしてしまいました。
 私は開示された証人の調書・証言は間違いであると確信しています。もしそうでない、正しいというのなら、警察・検察庁は開示していない調書の開示をすぐやるべきです。それができないということは、富山さんが無実だということの証明にほかなりません。
 みなさん、声を出して証拠開示を訴えましょう。

(おおつきやすお・反戦被爆者の会会長・「無実の富山さんの再審無罪をかちとる広島の会」会員)

新年のひと言

 あけましておめでとうございます。

 毎年、この新年のひと言を書くにあたって、昨年はどんな一年であったのかいやでも振り返らされる。そしてまた、今年はどんな一年になるのかといやでも考えてしまう。三六五日の中で一日の数分間、そんなことに思いをはせる時間があってもいいかもしれない。
 しかし、私なんぞは過去を振り返れば後悔だらけでため息がでてしまう。精神面のもろさから、がんばりきれなかった事が多々ある。それを一つ一つ挙げたらきりがない。では、どうすれば良いのかなどと人に聞いてみたところで、答など見あたらない。なぜなら答は自分自身の中にしかないからだ。
 そんな状態だから、昨年もいろんな人に支えられて今日の私があるのである。そのことには深く感謝したい。
 さて、新年は年末の大掃除で力つき、年越しそばも食べずに寝てしまい、気がついたらもう年が明けていた。年賀状を眺めながら「元旦に年賀状が届くということは昨年の25日までにポストに入れている人なのよねえ。偉いなあ」などと感心しながら、あり余った時間をもてあましていた。不思議なもので忙しいときはあれもしたい、これもしたいと思っているのに、いざ時間がたくさんあると何をしていいのか悩んでしまう。元旦だからいいか。
 そんな正月の二日目、実家からこっそり逃げ帰って10時間ドラマ『忠臣蔵』をつい観てしまった。浅野内匠頭が最期の言葉として、ただ一人、大石内蔵助だけに託した言葉「かねてより知らせておくべきところなれど、そのいとまなく、今日の成り行き、さだめし不審に思うであろう。ただ無念である」
 この言葉を受け取った大石内蔵助が吉良上野介の仇討ちにいたるまでの経緯は実に興味深かった。最初は真意を悟られないように味方をあざむき、仇討ちの意志などみじんも感じさせない振る舞いに敵はすっかり安心してしまう。実は虎視眈々と賢明かつ慎重にその日がくるのを待っているのだった。仇討ちの日、大石内蔵助が叩く陣太鼓が吉良邸に響き渡った時は、見事あっぱれという気持ちにさせられるから不思議である。何度観てもおもしろいのはなぜなのか。
 つい私が大石内蔵助だったらと考えてしまった。あそこまで賢明にできないにしても託された思いを感じ取るなら同じ生き方を選んでしまうかもしれない。だからお願いです。私には誰も何も託さないでね。
 本年もどうぞよろしくお願いします。  (うり美)

 新年のあいさつで「私には誰も何も託さないでね」とおっしゃるうり美さんにとっておきのプレゼント―富山再審を「託そう」かな・・・などと冗談を言っている時ではありません。今年こそ再審開始を切り開くべく、これまで以上に力を集中しなければなりません。私自身、先頭で全力でたたかいますので、みなさんのご協力を心よりお願い致します。

 証拠開示は、再審開始に向けた大きな足がかりです。昨年末、証拠開示の公正・公平なルール化を求める集会に参加しました。新年のひと言に代えて、以下、その報告です。  (山村)

シンポジウム

「冤罪・誤判はどうしたらなくせるか・・・司法改革と証拠開示のルール化を考える」に参加して

 昨年十二月六日、『冤罪・誤判をなくすための証拠開示の公正・公平なルール化を求める会・準備会』主催によるシンポジウム「冤罪・誤判はどうしたらなくせるか・・・司法改革と証拠開示のルール化を考える」が東京・星陵会館で開かれ、富山さんとともに山村が参加しました。
 この集会は、秋山賢三弁護士、指宿信・立命館大学教授、ルポライターの鎌田慧さん、庭山英雄弁護士、作家の灰谷健次郎さん、ジャーナリストの増田れい子さん、渡部保夫弁護士が呼びかけ人となって開催されたものでした。
 呼びかけ人の一人である庭山英雄弁護士は、開会のあいさつで、「最近の裁判はひどいのではないか。えん罪がいっぱいあるのではないか。なんとかしなければ」という危機感をもっていること、「私のように生涯を刑法と刑事訴訟法で暮らしてきた者にとっては、日本の刑事裁判における証拠開示の問題というのは、最重要の問題で、これが解決できたら刑事訴訟法の問題の八割は解決できるのではないかと、えん罪も激減するであろうと考えていますが、残念ながら証拠開示の問題は大きな国民的関心を呼んでおりません。このまま行きますととんでもない司法改革になる恐れがあるということで、みなさんに呼びかけを始めました」と、この集会を呼びかけた経緯を語っておられました。
 また、司会をされた鎌田慧さんも、「とりわけ再審事件では証拠開示がなされていないという問題がある。これはトランプのジョーカーを隠してゲームをやっているみたいな不正な方法。再審事件での証拠開示を求める運動を、市民運動レベルでの共通課題として広げていく必要があるのでは」と証拠開示の重要性について提起されていました。
 集会では、大崎事件(鹿児島)、日野町事件(滋賀)、名張事件(三重)、袴田事件(静岡)、狭山事件(埼玉)、松山事件および仙台筋弛緩剤事件(宮城)、布川事件(茨城)の各弁護人から、それぞれの再審裁判(仙台筋弛緩剤事件は一審・仙台地裁)の現段階と証拠開示の実状が報告されました。いずれの事件も日本における再審の焦点となっている事件です。これだけの事件の弁護人が一同に会したのはこれまでにないのではないかと思われます。また、会場には、狭山事件の石川一雄さん、布川事件の桜井昌司さん、松川事件の佐藤一さんも参加されており、集会参加者も一〇〇名を越えていたようで、冤罪とたたかう人々の間での、証拠開示問題への関心の高さを感じました。どの事件でも、検察官の証拠不開示がネックになっているようです。
 各事件の弁護人からは、検察官による開示拒否=証拠隠しの実態が怒りを込めて報告されました。
 「検察官は証拠開示に反対する理由として『関係者の名誉・プライバシーへの配慮』を言う。しかし、警察が、捜査に必要だが『関係者の名誉やプライバシーに配慮する』として証拠の収集を断念したことがあるか? 検察官が、有罪の立証に必要な証拠だが『関係者の名誉やプライバシーに配慮して』裁判に提出しなかったことがあるか? 検察官の『名誉・プライバシー』の論理は欺瞞にすぎない」「再審では、権力による不当な身体の拘束、不当な生命の剥奪が問題になっている。『名誉やプライバシー』のために、それらが犠牲にされるべきではない」(袴田事件)
 「検察官は『弁護人は証拠あさりをしてはならない』と言った。弁護人が被告人の無罪を明らかにするために『証拠あさり』をして何が悪い。被告人に有利な証拠を隠す検察官のやり方こそ犯罪ではないか。証拠開示は刑訴法の問題ではなく、正義が問われる問題と考える」(布川事件)
 「再審事件の問題とは証拠開示の問題であり、証拠開示問題とは検察官の証拠隠しの問題」(庭山弁護士)
 また、指宿信・立命館大学教授は、「学者として客観的な報告をと求められたが、これまでの報告を聞いて、証拠開示がほとんどと言っていいほどなされていない状況に、報告者や会場の方々と同じく激しい憤りを感じる。国連の査察チームが行くべきなのはイラクや北朝鮮ではなく、日本の検察庁ではないか」と発言者への共感を示し、カナダやイギリスでは、誤判事件を教訓にして証拠開示がルール化されていること、どのようにしてルール化されるに到ったかを報告されました。
 それぞれの報告者の検察官の証拠隠しへの怒りに満ちた発言は他人事ではありませんでした。富山再審でも、検察官は富山さんの無実を示す証拠、富山さんは「犯人ではない」とする目撃証言を隠し続けています。富山再審でも証拠開示は再審開始を切り開く重要なポイントです。証拠開示を突破口に、再審開始・再審無罪をなんとしてもかちとりたいと思います。
 『冤罪・誤判をなくすための証拠開示の公正・公平なルール化を求める会』結成趣旨にも、「冤罪を防止し、速やかに誤判救済をはかるために、検察官手持ち証拠の開示が十分におこなわれなければなりませんが、現実には多くの再審事件が検察官の証拠不開示によって、困難を強いられています。こうした不公平で正義に反する状態を改善し、わが国においても、通常審、再審請求手続きともに、証拠開示に関するルール整備は急務といえます」「冤罪防止・誤判救済、弁護側の権利として証拠開示の視点をもった証拠開示の公正・公平なルール化をめざす幅広い運動をおこしていきたいと思います」とありましたが、個別事件で検察官の開示拒否の壁を打ち破り、証拠開示をかちとっていくたたかいとともに、証拠開示のルール化を求める広い運動が必要な時と痛感しました。
 みなさんのご協力をお願い致します。  (山村)

■「かちとる会」に来た年賀状から(その2)
桜井善作さん(月刊『野火』発行人)
神戸救援会議から
森研一さんから

■「かちとる会」に来た年賀状から(その3)

江戸川の櫻井さんから
大井町のTさんから

休載

休載