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ニュースNo168(2002年9月1日発行)

●ニュースNo168(2002年9月1日発行)

◎6・29富山再審集会報告その3
田中泰治弁護士
集会の感想

「広島の会」定例会の報告

大井町ビラまき報告

 

集会報告

 今、弁護団がやらなきゃいけないことは、証拠開示なんです。これが本当に筋です。検察庁に証拠が眠っている。

検察官だって税金を使って仕事をしているわけだから、それは国民みんなのために使わなくちゃいけないと思うんです。検察官だけじゃなくて、被告側や弁護士だってそれを使う権利がある。

田中泰治弁護士 (2002/6・29富山再審集会)

集会報告6・29富山再審集会報告その3

富山再審弁護団からの報告 ・・・・田中泰治弁護士

 6月29日に行われた富山さんの再審の開始・無罪判決を求める集会で、田中泰治弁護士が弁護団の活動報告をして下さいました。

弁護団の田中です。
阿藤さんのお話、ズシーッと感動して聞きました。私の心の中に杭がズシーッと打ち込まれて、身の引き締まる思い、ちゃんとやらないかんなぁというふうに思っております。どうもありがとうございました。
それから、富山さんの話、初めて聞いたのですが、富山さんを見直してしまいました。なにしろ、あの富山さんがこういう説得力のある話をされるのかと思って、彼は弁護士になったらいいんじゃないのと、こういうふうに思いましたね。
当事者の話の中で、弁護人としての取り組みの問題点がすべて網羅されていて、僕はもう報告するまでもないと思っています。
富山さんの紹介に、私が1990年から弁護団に加わったとありましたが、その時に、私、弁護士になったんですが、かなり遅咲きの弁護士なんです。遅咲きというか、奥手なんですね。
その時はすでに富山さんは大阪の刑務所に入っている時で、私も何度か接見に行きました。その頃の富山さんはかなり精悍な顔つきをして、なかなか鋭い発言をなさっておられたのを覚えています。
先ほどの富山さんの話の中で、東京高裁への申入書が読みあげられましたが、その中に1995年に出獄したと書いてありました。エーッ、つい最近出てきた ばっかりじゃないかなぁ、あれから数えてもう6年半が経っているのかと驚きました。いったい私は何をやっているのだろうと、ぼやぼやしてられないなぁとい う自戒を込めて思ったわけです。
そして再審請求をしたのがその前の年、1994年だったと、それからもう8年も経ってしまったと、本当に驚きます。そうすると、僕が弁護士になって10 年以上経ってしまったと、これも驚きですけれども、弁護士になってずっと富山さんの事件をやっているんですね。そういうことで富山さんと共に成長している んですが、富山さんも世の中に出てきてから成長するのは顔と腹ばっかりかと思っていたら、今の話を聞きますとまろやかに熟成していてなかなかすごいなと思 いました。
東京高裁への申入書は、実は、事前に富山さんからファックスをいただいておりました。その時の感想は、富山さんについて見直す前でした。最近の富山さん の書かれる文章、すごくこなれているんですよね。すごく読みやすくなっている。先ほどのビデオの中に、昔、富山さんの書いた手紙が出てきましたが、印象が 全然違っているんです。ゴツゴツしているというか、今の書いている文章とはかなり印象が違いましてね、怒り心頭というか、そんな感じがしました。最近はす ごくこなれていて、ずいぶん変わったんだなと思っていましたが、しかし、今日の話を聞きまして、やっぱり文章だけではわからない所があるんだなと思いまし た。生の富山さんの言葉を聞いて、やっぱり富山さんは全然変わってないなぁと思いました。安心しましたよ。
さて、報告をということなんですが、実は富山さんの話の中に弁護団の報告は全部入ってました。それで私は簡単にやりたいと思います。
今、弁護団がやらなきゃいけないことは、証拠開示なんです。これが本当に筋です。検察庁に証拠が眠っている。とりわけ重要と考えている
目撃者の供述の中に新聞記者の話があります。それと、有罪判決の柱となっている目撃者Iの証言がありますが、この人の同僚も現場で事件を目撃していて、私 が10年前に弁護士になった時に、実はその方に聞きにいっているんですよ。そうしたらIさんの言っていることとは内容がずいぶん違うんですよね。ただし、 10年前と言っても、事件が起きたのは今から27年前ですから、その時でも10数年前の記憶です。Iさんが言っていることとは相当違うのですが、記憶がぼ やけてるところもある。だから肝心なのは、事件当時、事件があって直後にその人も警察官に呼ばれて聞かれているわけですから、その時に何を言ったかという ことが一番重要なんです。
34人の目撃者の調書があって、その中の7名分しか出ていない。他の証拠は眠っている。それを全部出さなければ不公平じゃないか。検察官だって税金を 使って仕事をしているわけだから、それは国民みんなのために使わなくちゃいけないと思うんです。検察官だけじゃなくて、被告側や弁護士だってそれを使う権 利がある。検察官が集めた証拠を全部見て、その中から検察官も選ぶ、弁護士も選んで、そして対等にやるべきです。われわれが調べに行っても強制力はないわ けですから、たかが知れているんですよね。だから、検察官が集めた証拠というのは、検察官だけじゃなくて、弁護側、被告人側も使わなければ真実は明らかに ならないと思います。そのためにも証拠開示をしなくちゃいけない。
ところが、裁判官も、要するに基本的には官僚なんですよね。彼らだって裁判所の中だけで生きているわけじゃなくて、私生活もあるわけで、私生活になれば 普通のいいおっちゃん、おじちゃんであることは事実なんです。僕は修習生の時に一緒に酒なんか飲んだりして、いいおっちゃんだな、けっこうリベラルな人だ なという人がいっぱいいました。しかし、いざ裁判、法廷の場になるとやっぱり違うんですよね。官僚なんですよ。法服を着ると裁判官というのは官僚になる。 しかも出世を考えるということはやっぱりあるんですよ。人間誰しも小心者だし、出世したいし、そういうことがあるから、やっぱりこの事件を先送りにしたい んですよね。もう、ありありですよね。本当に情けないほどありありしています。
去年の4月に裁判官が代わりまして、その方がまたいっそうそういう人なんですよね。だから、単純に審理を急げ急げというのもためらってしまいます。急い で結論を出して下さいと言って、今、担当している裁判官に結論を出されたら、これはやばいなと、そういう感じがあるんですよ。
現在、弁護団のやっている活動の一番主なところは証拠開示ですが、もう一つの柱は心理学鑑定です。先ほどのビデオにも浜田先生が出ておられましたが、心 理学者の先生に、再審の申し立てをするにあたって、この事件の目撃者の供述調書について心理学の立場から比較検討してもらい鑑定書を作成していただきまし た。その他にも、心理学者の先生に協力していただいて、有力な証人と言われているI証人について、その人が目撃した時、視力が0・4で、16・45メート ル離れての目撃で、しかもほんの数10秒あるかないか程度の目撃時間で、果してきちんと見えているのかどうかについて、心理学的に実験をして鑑定していた だきました。
それから、先ほどのビデオに殴打場面、殴っている場面がありましたが、これは法政大学の場所を借りて、劇団の人に演技してもらって、それをビデオに撮っ たものです。そのビデオをかなりの人数の人に見てもらい、犯人を選んでもらうという実験もやっていただいています。そして、この事件の目撃証言は信用性が ないということを鑑定書に書いていただきました。そういう鑑定書をすでに出してあります。
「法と心理学会」という学会を、一昨年、弁護士や学者の先生たちが集まって立ち上げました。その学会で、富山再審の鑑定人の先生の発表がすごくわかりやすいものだったので、それをビデオにしまして裁判所に観てもらおうということも考えています。
その他に、去年、大阪高裁で警察犬の臭気選別に関する判決が出ていまして、臭気選別というのは信用できないということで無罪になった事件ですが、その大阪高裁で行われた検証調書と無罪判決を出そうじゃないかというようなことを今やっております。
弁護士の活動というのは限られていると言えば限られているわけで、実際に鑑定とかは大学の先生にお願いして、われわれとしてはそれを裁判所に伝えてどうこじ開けていくか、微力でありますけれども一生懸命やっていかなくちゃいけないなと思っています。
最後に皆さん、熱心に聞いていただきありがとうございました。これからもよろしくお願い致します。

集会報告■集会の感想

今回の富山集会は、発言して頂いた一人一人の中に富山事件は確固としてあって、そして一人一人の発言の中にこの事件にかける想いが感じられた集会であったと思う。この人達と多くの人達に支えられながら、集会は成功することができるのだとも思う。
毎回集会をやるたびに、なぜこんなに大変なのかと不思議に思ってしまうが、終わってみて、集まってくれたみなさんの話や笑顔を見ながらお酒を飲んでいると、やってよかったんだなーと思う。
特に今回は、富山さんが自らの言葉で「人間としての本当に当たり前の不正に対する怒り、不正を憎む心、不正を許さないたたかいを共有して」ほしいと切に 訴え、その怒りを語った。逮捕時、怒りにうち震えた体験から、この裁判の経過、そして下獄、再審に至るまでを自らの言葉で表現した。思えば富山集会で富山 さんがこれだけ発言したのは初めてだった。富山さんは、「けっして私は悲観していませんし、絶対に勝てると確信していますし、どこまでもたたかいぬくつも りです」と決意を新たにした。この発言を聞いて改めて富山さんが無実の人で、この事件はえん罪事件なのだと強く思った。
再審の状況は、やはり厳しいと思う。長い年月がこの再審にはかかるとも思う。しかし、諦めず、投げ出さずに闘っていくことが必要なのだと思う。
私も集会のかちとる会活動報告で、「枯れるまで闘う」ことを誓った。
もう枯れそうなのだが・・・・(うり美)

集会報告

「無実の富山保信さんの再審無罪をかちとる広島の会」定例会の報告

 8月6日、「被爆57周年―再び戦争をくり返すな! 8・6ヒロシマ大行動」が開催され、「かちとる会」も参加しました。
翌7日、今年も「無実の富山保信さんの再審無罪をかちとる広島の会」の皆さんが会合を開いてくださいました。今回は大阪から阿藤周平さんも参加してくだ さり、広島からは大槻泰生さんをはじめ8名の方々、東京から富山保信さん、坂本さん、亀さん、山村が参加しました。
最初に、東京の事務局から、「富山再審の現状と展望」として、現在の裁判所との攻防、証拠開示の重要性、目撃証言をめぐって切り開いている地平、弁護団のたたかい、東京の「かちとる会」の活動等を山村が報告しました。
続いて阿藤周平さん、富山さん、広島の「かちとる会」の方々が発言してくださいました。以下、山村のメモを元にそれぞれの発言を掲載します。

阿藤周平さんから

昨日大阪から来ました。これまでも何回か広島の集会に来ましたが、私が「8・6」に来たのは初めてです。
しかし、私は「8月6日」を広島拘置所で12回ほど迎えています。昨日も、どうしても拘置所で迎えた「8月6日」がよみがえって来ました。広島は私に とって第二の故郷とも言える所で、常に心の奥底に広島がありますが、しかし、私をあそこまで追い込んだのも広島だったのです。昨日、初めて原爆の日に参加 して涙が出るような思いがしました。
私は富山再審をずっと支援して来ましたが、いつまで経っても再審を開始しようとしない裁判所の態度に不可解なものを感じます。
6月に東京高裁への申入れに行って来ましたが、東京高裁の態度も警備も硬直的なものでした。最近よく開かれた裁判所をアピールしていますが、逆に裁判所 は国民から遠ざかっているように感じました。私が八海事件で経験した裁判所とずいぶん違っていました。東京ではオウムの事件とかで警戒が厳しいと聞きます が、それは間違っていると思います。どんな凶悪な事件を審理しようと、国民から遠ざかるような裁判所ではおかしいと思います。裁判所に行ったとたん、身体 検査をするんですよ。私は生まれて初めて身体検査をされました。広島ではカメラなどの持ち込みはだめでしたが、その他は何でも持って入れました。裁判所は 同じなのに、こんなにも対応が違うのにびっくりしました。
東京高裁に富山さんの再審開始を申入れに行って感じたことが二つあります。ひとつは、なぜ第三刑事部の書記官が会わないのかということです。今回、会っ たのは関係のない総務課の職員です。僕らの時は書記官を通じて、申入書や要望書、署名やハガキは裁判官に渡っていました。裁判官にストレートに入ってい た。ところが、今は書記官すら出て来ない。私たちの肉声が届かないのです。少なくとも、再審開始をという申入れに書記官が出てくるように、申入書や要望書 や署名をそのつど受け取るようにするべきだと思います。
ふたつめは、再審請求を行ってから8年になるということです。なぜ、裁判所は富山さんの再審を放置しているのか。私は故意に遅らせているのだと思いま す。裁判官は決定を出せないのだと思います。この事件をきちんと審理したら再審開始決定しか出せない。だから裁判官はそのまま放置しているんです。そうこ うしているうちに裁判長が次から次へと交代していく。この裁判所の卑劣な態度をやめさせるために、裁判所に申入れをしているわけです。
8年前と言ったら、今、小学生の孫が生まれた年です。それから8年も経っている。8年間、富山さんは宙ぶらりんな状態に置かれています。私は富山さんが 獄中で奪われた10年間は絶対に取り戻さなければならないと思っています。この事件が起きた年に生まれた人が弁護士になって富山さんの再審の弁護人になっ ている。それほどの月日が経っているのです。
私は八海事件で無実を晴らすまで18年かかりました。無罪にはなりましたが、常に心の片隅に傷あとが残っています。私の18年間の不当な裁判の傷を癒す ことがあるとすれば、それはえん罪事件がなくなった時だと思います。しかし、無罪判決から30年が経ちましたが、えん罪はなくなるどころか、もっと多く なっています。死刑事件で無実を訴えて苦しんでいる人が何人もいます。これを正すためには国民の裁判所への抗議が必要なんです。それは八海事件の経験を踏 まえてはっきり言えます。富山さんの再審を開始させるためには皆さんの力が必要です。それは裁判所を不正に動かすわけではありません。正しいことを正しく 判断してほしいという要求なんです。
八海事件では、裁判は裁判所にまかせろと、『真昼の暗黒』の上映に対して、最高裁の事務局から、現在継続中の裁判の映画を上映してはならんという横やり が入りました。当初は東映が上映するはずだったのですが、東映は押し切ればよかったのにようやらん。それで独立プロの山田典吾さんが労組の支援を受け、俳 優の手弁当で作られた。いかに裁判官が国民の声、世論を恐れているか。八海事件でも国民の支援がなければ私はいまだに刑を執行されずに獄中にいたかもしれ ません。それを思うと身の毛がよだつ思いがします。
最初は少なくてもいいんです。僕の事件でも、松川事件でも、一人でもいい、小さいところから出発しています。私はここに集まられた広島の方々に感謝して います。人数がどうとかではないんです。東京の「かちとる会」の集会も最初は一人か二人だったんです。それがだんだん定着してきて富山事件がえん罪だとい うことが広がって来たんです。
私は富山さんの再審に関わって10数年になります。正しいことは正しい、えん罪は必ず晴らすという気持ちで富山再審に取り組んで来ました。僕の感触で は、決定が出るのは近いのではないかと思います。どこから見ても再審開始の決定しかありえないんです。
弁護団が証拠開示を要求しましたが、検察官はそれを出さない。弁護団は裁判所に提出命令を出すように求めています。検察官の隠している手持ち証拠をすべて出させて白黒をはっきりさせればいいんです。
私の場合は、真犯人の吉岡の上申書を広島刑務所が握りつぶしていた。それは刑務所だけの判断ではありません。法務省と検察官の指示でそうしていたんで す。それが発覚して、国民に追及されて、法務省があることを認めても、それでも検察官は出さなかった。最高裁が提出命令を出して、それでようやく出たわけ です。
富山さんの場合、検察官から目撃者の供述調書があるという確認を取っているのだから、裁判所が提出命令を出せばいいんです。それを裁判所に要望に行った りして訴えていく必要があります。そのためにも皆さんの力強い、粘り強い誠意が必要だと思います。
富山さんの再審請求はどこを突いても再審開始の決定を出すしかない。裁判官は決断が必要なんです。だから裁判官は決定を出さずに先延ばしにしている。
僕がこの再審にタッチしたのが60歳代の時です。今、74歳になります。僕としても焦ります。八海事件の被告はすでに二人亡くなっています。一人は10 数年前に、つい最近、稲田が74歳で亡くなりました。八海の主任弁護人も二人亡くなっています。原田香留夫弁護士も歩行困難な状況に陥っています。それを 考えると、私は富山さんの再審を裁判所が何年も放置していることが許せない。富山さんはいまだに被告の身と同じなんです。二審有罪判決は今も生きているん です。無罪判決を取らないと潔白の身にならない。そのためにも、一生懸命頑張っていきたいと思います。
私は広島には、3~4回来ています。最初の時は『真昼の暗黒』も上映して頂きました。みなさんのご尽力に感謝しています。富山再審を軸に多くのえん罪事 件をなくすためにたたかっていきたいと思います。再審を求め続ければ、必ずみんなの声が裁判官に届くと思います。これからもよろしくお願いします。

富山保信さんから

率直に言って再審は大変です。甘くはない。原審の場合、有罪立証は検察官の責任でした。再審になると違います。自分の無実を晴らしたいと思っている人間 が無罪を立証しなければならない。大変ですが、これに負けてはならない。この困難性に負けないでたたかいぬく強さが必要です。人間はどうしても楽をしたが るものです。私の場合、もう獄外に出ている。これが死刑事件だったら何があっても頑張らざるを得ない。現実にそういう人たちが頑張って再審のたたかいを リードして、切り開いてきています。私もその義務があると思っています。自分の無実の訴えに応えてくれる人々がいる。それへの責任にかけて頑張りたいと思 います。
「法と心理学会」が新しく設立されましたが、私の再審で鑑定書を書いてくれた浜田寿美男さんが理事長になっています。全体として若い世代、今後の日本の 法学会、心理学会、法曹界を担っていく人々が中心です。これからの刑事裁判の実務を担っていく人々が「法と心理学会」を立ち上げました。その中心に目撃証言の問題性に取り組んできた人たちがいます。目撃証言を考える時、富山再審を抜きに考えることはできません。そういう意味で富山再審は大きな位置を占めてきていると思います。
8年間も放置されているということは許せないことですが、この8年間には大きな意味がある。8年間、棄却決定を出せなかったということでもあります。棄 却決定を出すのはある意味で簡単です。それを、弁護団や阿藤さんをはじめとする「かちとる会」の人々の粘り強いたたかいによって簡単に棄却できないところ まで追い込んでいる。裁判官は火中の栗を拾いたくないわけです。これまで5人の裁判長が交代しましたが、退官した人以外はその後高裁長官とかになっていま す。第三刑事部はエリートコースなんです。裁判官は開始決定を出してそれを棒に振りたくない。かといって、棄却決定を出せるかと言えば、それなりに納得で きる内容を出さなければいろいろなところから反撃される。ある意味で拮抗関係にある。たたかいによってそういうところまで持ってきたということです。
先ほど、阿藤さんが開始決定を出さざるを得ないと言っておられましたが、そのとおりだと思います。あと一歩のところまで来ていると思います。その一歩は 運動の力です。特に証拠開示をという世論を作り上げる、それが再審開始のカギです。証拠開示を求める署名運動をやってください。さらに、私が無実というこ とを多くの人に知ってほしい。そのためにも学習会をやってください。そのための新しいパンフレットも作ります。今、ここにいる人々でまず学習会をやってく ださい。
東京では高裁への申入れを今まで以上に強力にやっていきたいと思っています。裁判官ほど世論を気にするものはいないと元裁判官の人が言っています。その とおりだと思います。阿藤さんも言われましたが、『真昼の暗黒』の上映に対して最高裁が横やりを入れ、八海事件や松川事件に対する国民の声に田中耕太郎と いう最高裁長官は「雑音に耳を貸すな」と言いました。正しい裁判をというのがどうして「雑音」でしょうか。
これまで世の中を変えようとして来た人々のたたかい、営為を引き継ぐものとして富山再審のたたかいをやっていきたいと思っています。私自身、もう一度原点に立ち戻ってやっていきたいと思いますのでぜひ皆さんのご協力をお願いします。

大槻泰生さんから

狭山事件もそうですが、みんなをひっぱりこむしかないというのが私の印象です。八海事件の時もビラまきをやりました。狭山事件でもビラまきや署名活動をやってきました。世論を引き寄せるたたかいが重要だと思います。

中島健さん(富山さんの高校時代の同級生)から

裁判所をここまで追い詰めてきたということは重要ですが、再審を8年も放置するということ自体が犯罪だと思います。
富山の再審は、決定的な段階に入りつつある。それを自覚した人々のたたかいが切り開くと思います。学習会などをやるようにして、富山再審を切り開いていきたい。

阿藤さんから

裁判闘争には武器が必要です。ビラも武器のひとつです。これで人を動かすんです。田中耕太郎最高裁長官は「雑音に耳を貸すな」と言いましたが、裁判に素人でもいいことか悪いことかの判断はできる。この事件はおかしいということは、その人の良心が反応するんです。
二度目の差し戻し判決で再び身柄を獄中に奪われた時、最初に立ち上がってくれたのが神戸の高校の先生たちでした。その時の武器が『真昼の暗黒』であり、正木先生の本でした。
富山事件でも訴える武器はいくらでもあります。この前の東京の集会で観ましたが、富山事件のビデオ、これはすごくよくできています。広島でもこれを武器にしていくといいと僕は思います。
それと富山再審で大きいのは一審が無罪だったことです。一審無罪判決は生きています。高裁が覆しても、再審の裁判所は一審無罪判決を無視することはでき ない。棄却はよう出せないんだと思います。出すならもう出している。裁判所がきちんと見てくれさえしたら、開始決定しかない。今こそみなさんの強力な支援 が必要です。八海事件の経験を通してもそうです。よろしくお願いします。

亀さんから

富山事件の場合、目撃証言のみが証拠とされ、物証も自白もない。この目撃証言がいかに問題あるものか、浜田寿美男先生の鑑定書に書いてあります。学習会では浜田先生の鑑定書もぜひ読んでください。
もうひとつ訴えたいのは証拠開示の重要性です。27人の目撃者の供述調書を検察官が隠していることははっきりしています。松川事件でも「諏訪メモ」が開 示されてそれで無罪が確定した。富山事件でも検察官が持っている目撃者の調書の開示が重要です。検察官は、富山さんのこの事件での逮捕写真すら出そうとし ません。事件に一番近い時点の写真が出て来ないというのはおかしなことです。
毎月、大井町で署名集めをしていますが、署名を訴える時、本人が満期で出獄してそれでも無実を訴えてたたかっていると言うとみんな耳を傾けてくれます。 本人が出てきたんだからもういいんじゃないかという考えがありますが、何年かかっても無実を晴らそうとしていると言うと本気なのかと署名してくれます。
東京でも頑張りますのでよろしくお願いします。

友野幽さん(被爆者青年同盟委員長)から

今日参加して一番感じたことは、富山さんが出獄して身柄が外に出たということで武装解除してしまうというところがあることです。無罪判決をかちとるまで、いかに人権が侵害されているのか、そこへの怒りを阿藤さんのお話に学びました。
富山さんが提起されたように学習していきたいと思います。藤井裁判の事務局をしていた時、本人が頑張ること、弁護団、弁護団事務局の頑張りとともに、裁 判所を監視していく運動がすごく大切だと思いました。今、富山再審もそういう局面に来ているなという実感を持ちました。目撃者の供述調書の証拠開示を求め ることは重要だと思います。それから、満期で出獄しても、なお真実を追求しているということの重要性、実践的な意味で勉強になりました。

富山さんの友人のMさんから

今は広島にいますが、半年ほど前まで東京で富山さんの集会にも参加したりしていました。
今日、話を聞いてこれまで以上に鮮明な内容で富山再審の攻防の構図がよくわかりました。
最後の勝利の扉を開くものは何か。やはり真実を求める署名、声をいかに多く集めるかだと思います。ニュースの大井町署名の記事を読んでいますが、けっこ う大変そうです。「0」行進が続いたりして、それでも頑張っている。署名の一筆一筆が裁判官に大きな圧力になる。毎月やっている意味は大きいと思います。 広島もそれに学んで、富山さんや阿藤さんの訴えに応えていきたいと思います。

司会の I さんから

無実をかちとった裁判を覆されたくやしさ、8年も放置されていることのくやしさをバネに何とかして打開しなければならないと思っています。
富山君の発言にもありましたが、富山再審は刑事裁判の場においても新しい流れをつくりだすたたかいになっている。
富山再審のたたかいは、阿藤さん以来、営々とかちとって来た地平を引き継ぐたたかいだと思っています。学習会も重要ですが、このことに本人の富山以上に 命をかける人物が出て来なければいかんと思っています。ここに広島から8名が参加していますが、今、富山から出された方針をひとりひとりの思いとしてやっ ていきたいと思います。
これまでも「8・6」に合わせて広島で富山再審の集まりを開いてきましたが、こういう定期的な会合を今後とも続けていきたい。それとともに来年はもっと 工夫して集会なども開きたいと思っています。広島の出発点は阿藤周平さんを迎えての100名を超える大集会でした。その原点にもどって地道なたたかいを進 めていきたいと思います。署名にも取り組んでいきたい。大井町では毎回1名とか、ゼロとか続いていますが、そういうたたかいの上に何千、何万という署名を 集めていかなければならないと思います。
今日話された内容を全体に返して、近い将来、阿藤さんをお招きした企画もやりたいと思います。ビデオやパンフ、富山はやる気満々のようです。来年の「8・6」の過程までにいろいろと企画していきたいと思います。

 それぞれ気持ちのこもった大変貴重なご意見を頂きました。準備してくださった広島の方々にお礼申し上げます。
酷暑の中、遠路参加してくださった阿藤さん、坂本さん、ありがとうございました。司会から「我が事のように執念を持って富山再審に取り組んでいらっしゃ る」と紹介された大槻泰生さん、そして広島のみなさん、心温まる集まりをもって頂き、本当にありがとうございました。広島で《元気》をもらって帰りまし た。それぞれの場所でたたかいを切り開き、また再会したいと思います。ぜひ近いうちに。 (山村)

休載

 「明日の為の第20?歩目―とうとう体をおかしくしました。皆様もくれぐれもお大事に」というお便りとともに二千円頂きました。今回で29歩目になります。ありがとうございます。お体にお気をつけて下さいますよう。お大事に。

■読者のみなさんから

▼いつも集会に参加してくださる行沢さんから、再審要求署名10筆、証拠開示要求署名5筆をお送り頂きました。ありがとうございました。

▼世田谷のUさんから一万円のカンパを頂きました。ありがとうございました。大切に使わせて頂きます。

▼前々回のニュースの6・29集会アンケートでもご紹介しましたが、おつれあいが無実にも関わらず有罪判決を受け服役を余儀なくされているIさんからお便りとともに切手をお送り頂きました。ありがとうございました。
外でも耐えがたかったこの夏の酷暑、獄中は大変だったと思います。元気で頑張りぬかれていらっしゃるとの事。お体大切に、無事お帰りになられることをお祈り申し上げます。