●ニュースNo.194(2004年11月15日発行)◎法と心理学会・目撃証言ガイドライン 紹介『取調室の心理学』 |
大山(鳥取県) |
□「法と心理学会・目撃証言ガイドライン」一〇月一六日から一七日にかけて、東京・日本大学において、「法と心理学会第五回大会」が開催された。 この企画で、「目撃供述・識別手続に関するガイドライン(案)」が提起された。 「ガイドライン(案)」は、目撃供述・識別手続について、詳細かつ厳格に定義している。 1 目撃供述・識別手続全般にかかわる基本姿勢 目撃供述は、目撃者が「私は事件の現場(あるいはその周辺場面)で、○○の人が△△しているところを見た」というかたちで提示される。これはもちろん事 件捜査(あるいは後の事実認定)においてきわめて重要な意味をもつ証拠となる。しかし一見どれほど明確で、疑いの余地ない目撃供述であるように見えても、 それが提示するのは事実そのものではなく、あくまで事実についての一つの仮説であることを忘れてはならない。そこには種々の誤謬の可能性がひそむ。目撃供 述が指し示す仮説を事実として認定するについては、考えうるその他のあらゆる仮説が明確に排除されるのでなくてはならない。つまり目撃供述についてあくま で仮説検証的な姿勢をとることを基本原則とするべきである。この仮説検証的な姿勢を堅持するために、次の諸点を守らなければならない。 1―1〈全手続過程の厳正化〉 目撃供述が聴取される過程、また被疑者との同一性識別の手続過程はすべて、誘導・暗示の効果を排除すべく、できるかぎり厳正化されなければならない。供 述という人的証拠は、物的証拠と違って、聴取者の質問の仕方、取り調べや手続の状況によって左右されやすい微妙な証拠である。とりわけ容疑者を絞り込んで 後に、その容疑を固めるべく証拠集め(有罪を示唆する証拠を選択的に収集する)するというような発想はきわめて危険であることを心得ていなければならな い。供述の聴取や識別手続という証拠収集の過程そのものが仮説検証であることを銘記するべきである。 1―2〈全手続過程の可視化〉 目撃供述が聴取される過程、また被疑者との同一性識別の手続過程のすべてが、後に仮説検証的検討を受けるように可視化されなければならない。供述聴取や 識別手続に入り込む誘導・暗示の効果は、微妙なものであるだけに、目に見えるかたちでの客観的記録が必須である。 1―3〈全手続過程の記録開示〉 裁判において目撃にかかわる事実認定に争いが生じたときは、目撃供述が聴取された過程、また被疑者との同一性識別の手続過程にかかわる証拠がすべて開示され、検討の資料として当事者に提供されなければならない。 この後、「ガイドライン(案)」は、以下の項目について詳細に規定している。 2 供述聴取手続 3 識別手続=他の証拠によって被 疑者が特定されている場合 4 写真面割手続=被疑者が特定さ れていない場合 5 供述聴取・識別手続の特則 6 目撃者の心理特性を考慮しなけ ればならない場合 この「ガイドライン(案)」にも、「ここで私たちが提起するガイドラインのなかには、現在の捜査実務からは大きくかけ離れている ものも少なくないが、いずれも科学的に根拠をもっており、諸外国ではその実務規範として現実化しているものである。その意味でわが国でもこのガイドライン が、文字どおりに今後の捜査の『指針』となることを望みたい」とあるように、「現在の捜査実務から大きくかけ離れている」点について、「このように厳格な ガイドラインが果して日本の捜査において使われるかどうか」という議論は前からあった。富山再審弁護団でも、「現在の捜査とかけ離れている」「現実的でな い。捜査側は使わないだろう。実際の捜査で使われなければ意味がない」という意見もあった。ガイドラインを作成する過程でも常に問題になったようである。 欧米、特にイギリスでは、犯人識別供述の取り扱いに関するルールは厳格に決められ、実際に捜査でも使われている。この点、日本は 大きく遅れている。「司法改革」の議論の中で、捜査の可視化と証拠開示については、検察庁が強硬に反対している現実がある。捜査の可視化と証拠開示がなさ れれば、今あるえん罪の多くがなくなると言われているにも関わらずである。「法と心理学会」という学会の名前で公式に「ガイドライン」が提起されることは 重要である。 |
□紹介『取調室の心理学』(浜田寿美男著・平凡社新書・700円) 富山再審事件で、発達心理学・法心理学の立場から目撃者の供述変遷につき鑑定書を提出している浜田寿美男先生が、このほど『取調室の心理学』(平凡社新書)という本を刊行した。以下、感想を交えながら紹介したいと思う。 「なぜ被疑者・被告人はやってもいないことを『やった』と言ってしまうのだろうか。なぜ私たちはその『嘘』を見抜けないのだろうか」 (まえがきより)。この率直な疑問に、本書は無罪をかちとった免田事件、現在も再審請求を続けている帝銀事件等を中心に、いかに被疑者・被告人が自白に追 い込まれていくかを分析している。 |
cat on the zabuton |
亀・・・・3 今日は、亀さんとの一騎打ちである。うり坊も山村も、いろいろあって、巌流島にたどりつけなかった。 やせた武蔵と太った小次郎の対決が幕を切って落とした。下馬評は論じるまでもない。だが、勝負はやってみなければわからない。 線路をまたぐ橋を挟み、時々、ちらちらと様子をうかがいながらビラを渡す。あいかわらず、ビラのはけ具合だけは圧倒的に私が優る。亀さんもまだ署名はとれていない。 (ホームページ版調査) ●写真は、”宮本武蔵生誕の地大原町”のホームーページ内「2001武蔵まつり– ”観光寸劇 決闘巌流島”の公演」 より ●「関門海峡に浮かぶ巌流島」に関する詳しいホームページです。大観光地になっているようです。 うり坊:いのししの子のことをそう言います。 (調査&ホームページ版アレンジ=tyo) 休載 |