□「立川反戦ビラ弾圧」裁判 二審「逆転有罪」判決を弾劾する
12月9日、東京高裁第3刑事部は「立川反戦ビラ弾圧」裁判の一審無罪判決を取り消し、逆転有罪を言い渡した。言うまでもなく、裁判長は私の再審請求を 棄却した中川武隆である。治安判事の正体を示してあまりある判決といえよう。こんな三百代言的言辞を弄する人物が裁判官としてまかり通り、ロー・スクール への「天下り」を狙っているというのだから、「司法改革」のまやかし性も明らかというものだ。
「立川反戦ビラ弾圧」は、自衛隊のイラク派兵に対して「派兵反対」のビラを自衛隊の官舎に配布したことをもって「住居侵入」で逮捕・起訴・75日間拘禁 した不当弾圧である。国外への侵略が強行されるとき、国内で治安弾圧が横行するの見本であり、権力の意に反する意見はそもそも表明することすらゆるさない という国家意志・国家暴力の発動にほかならない。じっさい、杉並の公園のトイレの「反戦落書き」への「器物損壊」逮捕・起訴・有罪、葛飾区での共産党のパ ンフレット配布への逮捕・起訴、町田・世田谷・江戸川でのビラ配布への逮捕、米軍厚木基地・嘉手納基地監視行動への逮捕等々、枚挙に暇がないほど不当弾圧 が連続している。
一審無罪判決(2004年12月17日)は、こうした暴虐に対する広範な怒りに包囲されるなかでかちとられた当然の権利の追認であるが、貴重な成果であった。
だから、
「判例からすると有罪の可能性が濃厚だったが、表現の自由の趣旨に照らし、無罪とした判決は画期的で高く評価できる。政治的議論を封鎖することにつなが る事件の背景を性格に見抜き、違法性を形式的に解釈せず、実質的にとらえたもので、国民感情にそった血の通った判決だ。」(村岡啓一・一橋大教授、「毎 日」2004/12/17)
というまっとうなコメントが、素直に受け入れられたのだ。
そして、
「無罪の結論は支持できる。憲法の表現の自由の保障に照らし違法性がないというもので、適切だ。ただ、事件の基本的問題点が正しく司法判断を受けたかと いうと疑問もある。そもそも「基本的に無党派の立場」(判決文)で活動する市民グループの運動に、刑事罰と過剰な強制捜査で対応したこと自体、批判の対象 となるべきだ。起訴価値が大きいとは考えにくい。「住居侵入」で起訴した検察側には首をかしげざるをえない。一連の捜査の過程で失われたものは大きいはず で、この種の捜査・起訴を繰り返してはならない。」(白取祐司・北大教授、「朝日」2004/12/17)
という指摘は当然である。商業紙の、検察の拘留延期の請求を認めた裁判所の責任を指摘する主張も広範な世論の存在を背景として生み出されたのだ。
「日本ではあまりにも政治的自由が主張され過ぎて私的領域の個人の自由への配慮が不足しており、改める必要があると思う。ミスを犯した判決だと思う」 (渥美東洋・中大教授)「宿舎の管理者が立ち入りを拒否しているのは明白で、立入禁止に(強い弱いの)程度はない。裁判所は立ち入り拒否の程度やプライバ シー侵害の程度が低いと判断したが、住居侵入の違法性がゼロでない限り、居住者は保護されるべきであり、量刑で判断すべきだ」(土本武司・帝京大教授)と いう反動的愚論と、先述のまっとうな刑事法学者のまっとうな判断のどちらが説得力をもつかは明白だ。金と権力にあかせて「政治的自由を主張し過ぎている」 小泉政権の下僕である司法権力のさらに下僕の渥美は、この腐りきった現実をまともに批判したことがあるのか。野放図に投げ入れられる宅配ピザのちらしはと もかく、「自衛隊員募集」のちらしが意図的に野放しであることに土本は触れようとしない。税金で食っている自衛隊員(建前は「公務員」のはずだ。実態は 「私務員」とはいえ)がイラクに派兵されようとするとき、官舎に「殺しに行くな、殺されに行くな」「殺しに行かせるな、殺されに行かせるな」というビラを 配布するのは「国民としての義務」というべきではないのか。自衛隊のイラク派兵があきらかに「交戦権の行使」であることは、形式論者にも否定できない事実 ではないか。これでは御用学者としても水準が低すぎて御用済みになるのを心配した方がよいのではないか、と余計なおせっかいを焼きたくなる。
二審・「逆転有罪」判決は、国家権力・裁判所がよってたつはずの憲法すらあからさまに踏みにじり、治安弾圧にフリーハンドを与えるものだ。公務員・教職 員・外国人のいっさいの意思表明の権利を奪い、封殺して、クーデターに等しいやり方で一気に憲法改悪をやりとげようという「国民投票法」の制定への道を掃 き清める役割を果たそうとしている。いっせいに非難と弾劾の声があがったのは当然だ。大切なのは、現実の裁判においても無罪をかちとり、治安弾圧・治安判 決を叩きつぶすことだ。
こんな反動判決がまかり通っていて、再審が実現するはずはない。あんな不当判決を下した中川が大手を振って社会生活を送ることなど絶対に許してはならな い。「立川反戦ビラ弾圧」とたたかうみなさんと連帯して、無罪獲得をめざしてともにたたかおう。
(富山) |