□富山さんと「かちとる会」が東京高裁に申入れ

7月6日、富山保信さんと「かちとる会」は、東京高裁に対し、再審開始を求めて申入れを行った。
申入れには、再審請求人である富山さんの他、関東学院大学の足立昌勝先生、国賠ネットワークの土屋さん、さやま市民の会の井田さん、「かちとる会」から亀 さん、うり美さん、山村が参加した。東京高裁からは、猪浦訟廷管理官と総務課の長岡氏、他1名が応対した。
申入れでは、まず、富山さんが用意した「申入書」を読み上げた(別掲)。
そのうえで、富山さんは、以下のように訴えた。
「異議申立の審理において、再審棄却決定を取り消し、一日も早く再審開始の決定をするよう申入れに来ました。
『申入書』に付け加えたいのは、これは一審で明らかになったことだが、検察官は証拠隠しを行ったということです。一審で証言したタクシーの運転手O氏 は、事件を目撃した時、新聞記者のK氏をお客として乗せていたと証言した。裁判で、そのお客は誰かということが問題になり、弁護人が検察官に聞いたとこ ろ、検察官は『不明だ』と答えた。しかし、後に証拠開示が行われ、O証人の員面調書が開示されると、その供述調書に乗客の名前も書いてあった。その人は警 察の取調べにも呼ばれたようだ。検察官はそのことを員面調書が開示されるまで『知らない』と言い続けた。明らかに検察官は証拠を隠している。そのK氏に弁 護団が会って聞いたところ、犯人は私とは全く違うということだった。このことでもわかるように、検察官は私の無実だという証拠を隠しています。検察官の手 持ち証拠の中に、私の無実の証拠が存在することは明らかです。検察官に対し、裁判所が勧告を発して証拠開示をさせてほしい。このことを裁判官に伝えてくだ さい。
この間、再審無罪が出たり、えん罪であることが明らかになった事件が報道されているが、取調べ側への不信感が広がり、裁判所への信頼も揺らいでいるのが実情です。そうした状況を変えるためにも、ぜひ、証拠開示を裁判所に認めてもらいたい。
何度も、はっきり言わせてもらいますが、私は無実です。再審棄却決定を正して、再審を開始してほしい。このことを裁判官にきちんと伝えてください。」
足立昌勝先生は、まず、「最近、明らかになったことだが、鹿児島県の県議会議員選挙をめぐってのえん罪事件で、鹿児島県警が無罪の証拠を持っていたことを認めましたよね。このことは知っていますか」と切り出した。
猪浦訟廷管理官、「新聞報道で知っています」。
足立先生は、
「鹿児島の事件でも明らかなように、警察は、自分たちの有罪という主張を維持するためには、無罪の証拠は出さないという姿勢です。これを調べて正すのが裁判所の責務ではないでしょうか。
富山君の事件で、目撃者に対する警察の誘導はなかったのか。調書を見ると誘導があったことは明らかです。再審を開始すべき根拠はここにある。裁判所はすべ ての証拠を見るべきだと考えます。目撃者は、当初、富山君とは全く違う犯人像を述べていた。中肉中背、丸顔の犯人像を述べていたのが、数日後になると、身 長が高くなり、角顔と変ってきています。その変遷の過程に警察官の誘導があったことは間違いない。
この事件では一人の人間が死んでいる。このことは厳粛に受け止めなければならないが、真犯人を捕まえるのは警察の任務です。無実の人間を『犯人』にしておいていいということではない。
ぜひ、再審を早急に開くよう申入れます」と訴えてくださった。
次に、国賠ネットワークの土屋さんが、
「国家賠償裁判に取り組んでいます。再審制度は、私たちが国家賠償を求めていることに値すると思っており、富山さんの再審の申入れに来ました。再審は制 度として認められています。ぜひ再審本来の機能を果してもらいたい。富山さんの再審の開始をお願いしたい」と発言してくださった。
さやま市民の会の井田さんは、狭山事件の再審を闘っている。
「猪浦さんとは、前回、狭山の申入れでお会いしましたね。今回は、富山さんの再審について訴えたいと思います。
富山事件では、証拠を開示しないということが裁判のネックになっていると思います。警察官、検察官にとって都合のいい証拠だけを出している。そして、警 察、検察の予断、偏見を裁判所が引き継いでいる。裁判に政治を持ち込むような姿勢が裁判所にはある。本来の裁判所のあるべき姿勢を思い出してほしい。科学 的な判断に基づいた正しい裁判をしてほしい。そのためにも証拠の開示が絶対に必要です。証拠を開示すれば真実は明らかになります。そして、ぜひ再審を開始 してください。」
「かちとる会」から亀さんが、
「富山さんの再審を支援して来ました。この事件では、物的証拠はありません。あるのは目撃証言だけと言っていい。しかもアリバイははっきりしています。 人の目撃者の調書があると言われているのに、7人の調書しか明らかになっていない。7人以外の調書が未だかつて出されていないのはどう考えてもおかし い。
この事件で重要なのは、一審が無罪だったということです。一審の裁判所の判断は正しい。二審の有罪判決には無理がある。ぜひ、再審を開始し、二審判決を正してほしい。このことを心から訴えます」と述べた。
うり美さんは、
「安倍首相は日本を『美しい国』と言っていますが、過去の過ちを正さない、責任も取ろうとしないこの国のどこが美しいのかと私は思ってしまいます。無実 を訴えている人の声に耳を傾けようともしない司法の質、このどこが美しい国なのでしょうか。最近の状況を見ると、司法も時代に逆行しているとしか思えませ ん。無辜の人を罰してはならないというのが裁判の原則のはずです。それに立ち返ってほしい。そうすれば必然的にこの事件は無罪以外にないと確信していま す。ぜひ、再審を開始してください」と訴えた。
山村は、以下のように述べた。
「私は一審の時からずっと裁判を傍聴し続けてきました。先ほど富山さんが述べた検察官の証拠隠しについては、よく覚えています。一審で、目撃者のタク シー運転手O氏の証言はクルクルと変転して、一体何を目撃したのかわからないという状況でした。そこで、O氏のタクシーに乗っていて、同じ状況で事件を見 ていた人物は何と言っていたのかということになり、タクシーの乗客は誰だったのかということが問題となりました。弁護団が検察官にその乗客の名前を明らか にするよう求めたところ、検察官は『誰であるかわからない。私達も知りたいくらいだ』とはっきり言いました。ところがその後、O証人の員面調書が開示され 明らかになったのは、その員面調書には、記者の名前、新聞社名、その新聞社が出しているタクシーのチケット番号まで記されていたわけです。検察官が言った 『私達も知りたいくらいだ』という言葉は何だったのかと思います。検察官は明確に嘘をついたわけです。公判の場で嘘をついたのです。自分達の立証に有利な 証拠は出すが、被告人の無実を証明する証拠は出さない、嘘をついてでも隠そうとする、こんなことが裁判で公然と行われたのです。
再審で、弁護団の証拠開示要求に対して、検察官は開示を拒否しています。検察官は『再審事由に値する証拠はない』と言っているようですが、検察側は一審 で嘘をついてまで富山さんが犯人でないとする目撃者の存在を隠しているわけです。そんな検察官の言うことを信じることはできません。今も検察官は無実を明 らかにする証拠を隠していることは間違いない。
例えば、再審で弁護団は、本件における富山さんの逮捕写真の開示も求めています。しかし、検察官はそれさえ開示しようとしません。逮捕写真は、通常、そ の事件の裁判で検察官の側から出されるものです。それが本件では出されていない。再審で、検察官は逮捕写真の存在を認め、自身も見たと言っている。にもか かわらず、開示しようとはしません。逮捕写真を開示して何が問題なのでしょうか。
こうした検察官の態度からも、検察官が開示しないのは、自分達の主張にとってまずい証拠、富山さんの無実を裏付ける証拠があるからなのは明らかです。そうでなければ開示しても何ら問題はないはずです。
真実を明らかにするためには、検察官が隠し持っている証拠の開示が必要です。ぜひ、裁判所は検察官に証拠開示を勧告してほしい。検察官は弁護団に、裁判所 からの指示があれば開示も考えるという趣旨のことを言っています。裁判所は、すべての証拠を見て、それで判断すべきです。ぜひ、検察官に対して証拠開示を 命ずるよう裁判官にお願いします。
一審からこの裁判をずっと傍聴し続けてきて、私は富山さんが無実であることを確信しています。富山さんは絶対にやっていません。これは何があっても揺らぐことはありません。ぜひ、再審を開始し、再審無罪を言い渡して頂きたい。」
最後に、再び、富山さんが、「私は、一審では無罪になりました。無実なのですから当然と言えば当然ですが、しかし、一審が始まる時、検察官が出してきた 記録を見て、大変な裁判になると思いました。ところが、裁判が始まったら、目撃証人の証言は変遷を繰り返すという状況でした。結局、裁判所が検察官に員面 調書の開示を命じ、そのことによって目撃証言が信用できないものであることが明らかになり、一審は無罪判決となったわけです。
二審判決で有罪となりましたが、それは警察官の証言だけに拠るものです。
その二審で証言した捜査責任者は、約人の目撃者がいて、そのうち人の調書があると言っている。一審、二審の公判で明らかにされたのは7人の目撃者の 供述調書だけです。残りの人の目撃者の供述調書は隠されたままです。これまでも検察官は、私に有利な証拠は隠そう、隠そうとしてきた。それは一審の過程 でも明らかです。すべてを明らかにしてこそ、デュープロセスを踏んだということになるのではないでしょうか。このままでは納得のしようがないというのはあ なた方にもわかると思います。しかも、人もの無実を明らかにする証拠が隠されたままで有罪というのは絶対に納得がいきません。開示して、すべてを明らか にして判断するのが極めて常識的な考えではないでしょうか。裁判所が検察官に対し証拠を開示するよう命令することを強く求めます。
志布志の事件や、富山(とやま)の事件と、捜査のあり方を問うような事件が続いています。こうした捜査のあり方に断を下す意味でも、すべての証拠を開示することを求めます。
今日、私や他の皆さんが申入れたことを必ず裁判官に伝えてください。
最後に再度、言います。私は無実です。」と訴えた。
猪浦訟廷管理官は、「裁判官に必ずお伝えします」と約し、申入れを終った。
申入れで、総務課の長岡氏他1名は、レポート用紙とペンを用意しメモを取る構えでいたが、私が見るに全然ペンが進んでいなかった。メモを録る能力がないのか、それともその気がないのか、なんとも頼りない状況だった。
申入れに対し訟廷管理官が応対するというこのやり方になってから何年も経つが、これでは申入れを行っても、私たちの声は裁判官には伝わっていないのでは ないかと危惧する。再審請求人本人が来ているのだから、裁判官は会って、本人の言い分を聞くのは当然ではないか。せめて、前のように担当部で、担当書記官 が申入れを受けるべきだと思う。こうした閉ざされた裁判所のあり方が、多くのえん罪を容認することになっているのではないか。証拠開示についても同じこと が言えると思う。すべてを開示し、すべての証拠を精査して正否を判断するのに何をためらうことがあるのだろうか。裁判所が真実を究明する本来の立場に立つ ことを願ってやまない。
富山さんは無実である。一日も早く再審が開始され、再審無罪が言い渡されることを求めたい。 (山村)

申入書

私は無実です。事件には関与していません。
1975年1月13日、まったく身に覚えのない「殺人罪」によって不当逮捕されたとき、 私は27歳になったばかりでした。それから32年半の間、拘置 所において、刑務所において、そして出獄後も、無実を訴え続けてきました。しかし、裁判所が私の真実の叫びに真摯に耳を傾けてくれたのは1審・東京地裁の みです。欧米の例を見るまでもなく、真実に基づくならば1審・無罪判決で決着し、裁判手続きから解放されたはずなのに、現実には依然として「殺人犯」の汚 名を着せられたまま苦しみ続け、えん罪とのたたかいで人生  を費やそうとしています。なんということでしょうか。
私は、東京高裁第4刑事部の裁判官に声を大にして訴えます。
一人の人間の人生をかけた訴えに真摯に耳を傾け、想像力を働かせて、真剣に検討してください。近代刑事裁判の到達地平からみるとき、1審(原々審)無罪 判決と2審(原審) 有罪判決のどちらが説得力を持っているのか、さらに高裁第3刑事部の再審請求棄却決定は偏見なく事案に立ち向かい、虚心坦懐に審理を 遂げたといえるのかを、あなたの裁判官としての、そして人間としての良心と見識に照らして、判断してください。
私は、真実の訴えが踏みにじられ、嘘つきとして人格が否定され続けることに堪えられません。一刻も早く誤った確定判決と再審請求棄却決定をただして私を苦しみから解放し、 救済するとともに、えん罪と誤判の根絶にむかって展望をひらいてください。
無辜の救済は刑事裁判の使命であり、人権の擁護は私たち共通の願いです。これを言葉だけの確認ではなく、審理の場において実現してください。
私は無理難題を要求しているわけではありません。科学的知見を正しく導入することと証拠開示を実現すれば、私の無実はたちどころに判明します。科学的知 見の導入と取り調べの可視化と証拠開示は、世界の刑事裁判の趨勢であり常識です。昨年の申し入れにあたって、私は「人類の知的営みの成果を正しく導入・活 用して誤りなきを期するのは私たち共通の願いであり、冤罪の根絶という見地からも賞賛されこそすれ非難される余地はないと思います」と訴えましたが、今年 もまた同様の要請を繰り返します。
検察官に証拠開示を命令してください。謙虚に科学的知見を尊重することによって、再審請求棄却決定を訂正し、再審開始という正しい結論に到達してください。
私は無実です。正しく真実が認定されることを期待してやみません。
富山保信
2007年7月6日
東京高等裁判所第4刑事部御中

□あなたもぜひ会員になってください

「無実の富山保信さんの再審無罪をかちとる会」(「かちとる会」)では、富山さんの無実を訴え、再審無罪をかちとるため、ともに たたかってくださる方を求めています。再審に勝利するためには多くの人々の力が必要です。また、再審弁護団のたたかいを支えるための裁判費用等、多くの資 金を必要としています。
あなたもぜひ会員になって富山さんの再審を支えてください。

▼会費は月額一口千円です。
▼あなたの会費は、再審にむけた運動づくり、再審の裁判費用等に役立てられます。
▼会員には、月一回、「無実の富山さんの再審無罪をかちとる会ニュース」をお送りします。
▼「かちとる会」では月一回、定例会を開き、再審をかちとるための話し合いを行っています。また、集会や学習会、現地調査を行い、富山さんの無実と再審無罪を訴えています。これらの集まりにもぜひご参加ください。

▼会費の振込先・郵便振込口座番号 00140-1506
・銀行振込 みずほ銀行 神保町支店 普通口座 1346188

 

大井町ビラまき報告

亀・・・・2名
富山・・・0
山村・・・0

梅雨時のうっとうしい日々。あじさいの彩りが心を慰めてくれる。
今回は、うり美さんは所用のためお休み。
土曜日のせいか、人通りもいつもと違うような気がする。ビラの受け取りもよくないなぁと思いながら、ふと、亀さんの方を見ると、女の子が立ち止まって何や ら熱心に話し込んでいる。亀さんがいろいろ説明しているようだが、それに対し反論しているのか、質問しているのか、亀さんもタジタジのように見えた。結 局、20分近く経って、ようやく納得したのか、ペンを受け取り署名していた。そして、署名した後もまだ話している。
あとで、亀さんに聞くと、ジャーナリスト志望の歳の学生だったそうである。裁判のことなど、いろいろと関心を持っていたとのことであった。
そう言えば、うり美さんが最初に訪ねてきたのも、その年頃ではなかったろうか。八海事件の阿藤周平さんをお呼びした集会にビラを見て参加し、その後、富山事件を取材したいと連絡してきた。それ以来、富山再審に携わってきてくれている。
今更ながら長いたたかいである。くじけそうになる時もあった。そうした時、うり美さんや阿藤さんをはじめとする人々がいたからこそ頑張ることができた。仲間がいるのはいいことだ。  (山村)

大井町のYさんから

休載

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