□4・2学習会での質疑応答
4月2日の学習会での質疑応答を掲載します。
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◎質問
目撃証人に対する供述変遷についての弁護側尋問と公判証言はどうだったのでしょうか。それと員面調書、検面調書の開示の関係は?
【葉山先生】
一審では目撃証人に対して、相当緻密な反対尋問を行いました。当初は、検察官面前調書、検面調書もまともに出て来ないという状況があって、目撃証人に対 する主尋問をすべて検察官にやらして、そのうえで、一括して検面調書を出させるという形でようやく検面調書が出て来るという状況でありました。
反対尋問の中で、Kという目撃者は、警察官から富山さんの写真だけを見せられて「これじゃないか、これじゃないか」と言われたと証言しました。また、目 撃証人に対して相当詳しく反対尋問したわけですが、特に、Oという証人に対しては11回位、1年間にわたって尋問しました。そのOというタクシーの運転手 が法廷に立つたびにその証言の内容が変わるという状況の中で、これではどうにもならないから員面調書を出そうということになったわけです。当時の横田裁判 長から、当初の目撃証言を明確にしないかぎりは、目撃証言についての信用性を判断することはできない、開示するよう勧告があり、それでも検察官は渋ってい たのですが、ようやく事件直後の調書が開示されるという形でした。
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◎質問
一審、二審では「浜田鑑定書」のようなものは出されたのですか。
【葉山先生】
一審、二審では、浜田先生の鑑定書のようなものは出していません。浜田鑑定で言われていることは弁護団としても主張してきましたが、鑑定書の中で言われ ているように、目撃者が当初は事件現場で実行犯や指揮者だとして同じ富山さんの写真を選んでいる点は特に重要であり、弁護団としてももっと強調しておくべ きだったと思っています。当初の供述調書では、目撃者7人のうち4人はいずれも車道上の実行犯として富山さんの写真を選んでおり、1人は車道上にいた指揮 者に似ているということで富山さんの写真を選んでいる。2人は歩道上の指揮者として富山さんの写真を選んでいる。同じ顔をした人間が、同じ時間に、歩道上 で指揮をして、車道上で指揮をして、車道上の実行犯だったということになります。当初は、こういう考えられないような矛盾した供述だったのを、検察官が検 面調書の段階で、目撃した時間帯を変える、つまり、犯行場面ではなく、追いかけていた時に見たとか、逃げていくところを見たという形で変えて、その場面で 見た犯人が富山さんの写真に似ていたという形に変えて、矛盾を「解消」したという点、この点は、一審、二審でも、もっと強調しておくべきだったと思ってい ます。
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◎質問
弁護団が新証拠として提出したというKという目撃者はどう言っていたのか、その人に富山さんの写真は見せたのか。
【原田先生】
その方は、顔は細く、身長もそんなに高くなくやせ型の男だったということでした。富山さんの写真を見せたところ、こんなのではない、全然違うということでした。
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◎質問
これまでの裁判所の判決で、心理学の鑑定書を採用した判決がありましたか。再審事件で心理学鑑定書を活用した例としてはどういうものがありますか。
【事務局】
富山さんの再審では、供述鑑定として浜田先生の鑑定書を出すとともに、実験に基づいた鑑定としてH先生の鑑定書、K先生の鑑定書を提出しています。アメ リカでは、ロフタス教授などが、法廷で、目撃証言の信用性について心理学者の立場から証言し、それが採用され、判決に影響を与えたりしています。しかし、 日本の裁判所は今のところ、こうした供述鑑定を採用することについて否定的です。浜田先生も、甲山事件や自民党本部放火事件等で証言したり、鑑定書を提出 したりしていますが、裁判官は判決文の中で、それらを引用しようとはしていません。
富山再審では、供述鑑定とともに、実験に基づいた鑑定を出しています。0・4の視力で、16・45m先の初めて見る人物について識別できるかどうかとい う実験は、100人近くの被験者を使って行われており、科学的知見に基づいた鑑定書です。こうした鑑定書を裁判所が認めなかったことは許せないことだと思 います。
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◎質問
証拠開示されたら、明らかに富山さんが無実であるということがわかる証拠というのはどういうものでしょうか?
【原田先生】
先程、お話したKさんとか、Kyさんの捜査報告書、調書が出てくれば、富山さんが犯人ではないという目撃証言であることは間違いないので、重要な再審開 始事由になると思います。富山さんが犯人ではないという目撃者がいることは確かなので、そうした目撃者の供述調書が出てきて、それを検討して、すでに出て いる7人の目撃証言と比べて、否定している人たちの証言の方が信用性が高いということが言えれば、再審を開始する事由になると思います。
また、アリバイ関係で、当時富山さんがいた前進社の出入りに関する記録を警察が取っており、そういう記録があるということは、一審の検察官が認めています。それが出てくれば、富山さんに有利な証拠もあるかもしれません。
【葉山先生】
O証人のタクシーに乗っていて、O証人と同じ所から目撃したKさん、Kyさんの証言は、O証人の証言の信用性を検証するうえで重要ですし、Iという目撃 証人と現場でばったり会ったという同僚のYoという人がどう言っていたかは、I証人の供述の信用性を検証するうえで重要です。確定判決が一番信用性が高い と言っているI証人の信用性が、Yoさんの供述内容によっては崩れる可能性もあります。Yoさんについては、検察官も調書があることを認めています。にも かかわらず開示しないのは不当極まりないことです。
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◎質問
今後の弁護団の活動および支援者は何をしたらよいでしょうか。
【原田先生】
私はこうした形で集会で講演するのは3回位になるのですが、ふだんなかなか「かちとる会」の方々にお会いする機会はないのですが、支援する方々がいると いうことで、しっかりやらなければならないなという気持ちになりますので、私としてはそれが大きな力になっていると思います。長い闘いになると思います が、今後も支援して頂いて、弁護団も頑張りたいと思っています。
【葉山先生】
証拠開示がやはり焦点になると思います。検察官が隠している証拠を出させるということが必要だと思っています。弁護団が検察官、裁判所に対して証拠開示 を求めて頑張るとともに、開示しなければならないような状況、世論をいかにつくっていくかだと思います。そのためにもみなさんの支援をお願いします。
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◎質問
横浜事件の再審は開始されたが、狭山事件は棄却されるなど、裁判所は政治的な判断しているように思われますが、如何でしょうか。
【葉山先生】
最高裁の判事をしていた人が、ある左翼の事件で判決を出そうとしていた時、同僚の裁判官にそういう事件に肩入れするのはよしたほうがいいと強く言われた ということを言っていました。そういう状況をどう突破していくかという点では、なかなか大変な闘いだと思います。ただ事実を明らかにすればおのずから解っ てくれるという状況ではないということは確かです。それをどう解らせるかということが問われていると思っています。運動的に盛り上げて、そうした状況を変 えることが必要だと思っています。
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◎質問
証拠開示の対象になっている文書は、公文書に該当しないのですか。
【原田先生】
この質問は情報公開法でいう公文書に該らないのかということだと思いますが、情報公開法というのができたのですけれども、残念ながら、その中に例外事項 がいくつかありまして、刑事訴訟に関する資料というのは一括して例外ですと、情報公開の対象にはなりませんとなっています。情報公開法ができた時に、弁護 団としても使えないかということで検討したのですけれども、無理だということになりました。情報公開法の趣旨からすれば開示すべきだということは主張した のですけれども、この法律でもって開示させるというのはちょっと無理なようです。 |