ニュースNo.192(2004年9月15日発行)

 

タイトル 無実の富山さんの再審無罪をかちとる会ニュース ●ニュースNo.192(2004年9月15日発行)◎被害者の犯人識別供述が信用できないとして無罪判決―4月19日付大阪地裁判決
「華氏911」私はこう観る

大井町ビラまき報告

せっせとまいています。ご協力をよろしくお願いいたします。

被害者の犯人識別供述が信用できないとして無罪判決 ・・・4月19日付大阪地裁判決 この事件は、被害者の単独面通しによる犯人識別供述の信用性を否定し、被告人を無罪とした事例である。
判決内容から、事件の概略、犯人識別供述についての裁判所の判断を紹介する。
事件は傷害被告事件で、犯人(女性)が、被害者(男性)に、電気ポットやスタンド式金属灰皿で顔面や頭部を多数回殴打するなどの暴行を加え、傷害を負わせたというものである。目撃条件

(1)被害者は明るい場所で約二~三時間にわたり犯人と一緒にいた。
(2)犯人と被害者はまったくの初対面。
(3)被害者の視力は、裸眼視力が両目とも単眼で〇・三、両眼で〇・五の近眼だったが、事件当時はメガネをかけていなかった。
(4)被害者は「ほろ酔い状態を少し越えたぐらい」の状態だった。

犯人識別供述

被害者は、事件当日の被害届では、「犯人の女は、身長一六〇センチ位、髪は肩位の長さで黒色でした。女は、自称D年齢二九歳、体格中肉でした」というも ので、「街中どこででも見かけるような極めて抽象的な犯人像しか述べていなかった」(判決文)。
事件から四ヵ月も経過した後、警察で一回目の単独面通しを行っている。
一回目の面通しを行う際、被害者は、警察から「犯人を捕まえたので顔を確認して欲しい」との連絡を受けて警察に赴いている。
一回目の面通し後に作成された警察官調書で、被害者は「角顔で目が細く、あごのとがった感じの女」などと犯人の容貌についての具体的特徴を供述、その後 の検察官調書、二回目、三回目の単独面通し後作成された警察官調書、公判廷での証言と、回を負うごと、また、時期が後になるほど、より具体的で詳細な犯人 の特徴を語るようになっている。

裁判所の判断

この犯人識別供述について、判決は、「複数回にわたる単独面通しとこれに先立って行われた警察官の強烈な暗示・誘導による決定的な影響なくしてはおよそ考えられないものである」と断じている。
そして、「犯人識別供述の危険性は、他の供述証拠と異なり、その供述自体に内在しているのであって、その意味では、その信用性のいかんは供述者の中立 性・誠実性、供述の一貫性、供述態度の誠実さなどとは関わりが乏しいといわざるを得ないし、また、供述者の犯人識別の確信度とその識別の正確性との間には 有意的な関連性を認めないのが、近時の認知心理学上の知見でもある」とし、「(被害者の犯人識別供述は)もともと観察の正確性自体に問題を内包していたこ とに加え、長期間経過後に行われものであり、しかも、複数回にわたる、いきなりの単独面通しとこれに先立つ警察官の強烈な誘導的言辞によって決定的かつ回 復困難な不当な暗示・誘導を受けた状態の下で行われたものであって、到底信用することができず、このように重大な欠陥を内包する同供述を事実認定の柱とし て供することは許されないというべきである」として無罪判決を言い渡している。
さらに、判決は、最後の所で「結論―併せて、当裁判所の所感」として、次のように述べている。
「犯人識別供述は、実務上、有罪立証のための極めて重要な証拠であるとともに、前述のとおり固有の問題性を内在させていることから、その採取の方法や信 用性の判断を誤ると、冤罪の温床ともなりかねない危険性を孕んでいる証拠である。そのため、犯人識別供述の信用性を巡っては、これまでも多数の裁判例や裁 判実務家の論考が蓄積されてきたし、また、近時は、ロフタス等を嚆矢とする認知心理学上の研究成果にも目覚ましいものが認められる。
そして、このような裁判例や諸研究の成果によって、今日ほぼ一致した理解が得られているのは、第一に、犯人識別過程においては、捜査官側において、極力 目撃者に暗示を与えないように勤めなければならないこと、第二に、その意味からして、強い暗示を与えやすい単独面通しはできる限り避けるべきこと、第三 に、犯人識別に関しては、目撃者の初期供述が極めて重要であり、その意味からも、初期供述の保全に可能な限り努めなければならないこと、第四に、その反 面、犯人識別に関する供述者の主観的確信は、あまり当てにならないこと、以上の四点であった」
そして、この事件の捜査過程では以上の四点が無視されていると批判、特に単独面通しについては、「(最高裁判例で)単独面通しの方法は暗示性が強いため できるだけ避けるべきである旨警告を発しているにもかかわらず、本件のみならず、他の事件においても、警察がこの警告を無視して、依然単独面通しの方法を 多用していることは、誠に憂慮に堪えないところである」と警察の捜査のあり方を痛烈に批判し、最後に「今後、大阪府警が、先に述べた最高裁判例を初めとす る近時の裁判例の動向や認知科学上の研究成果に学び、一刻も早く本件のような旧態依然たる捜査方法を改められることを切に要望する次第である」と結んでい る。

判決の意義と富山再審

この判決の注目すべき点は、「単独面通しはできるかぎり避けるべきである」という形ではあるが単独面通しを批判している点、初期供述が極めて重要である ことを指摘している点、供述者の犯人識別の確信度とその識別の正確性との間には有意的な関連性を認めないのが、「近時の認知心理学上の知見である」ことを 明示している点、犯人識別のための旧態依然たる捜査方法を強く批判している点である。
特に、「近時の認知心理学上の知見」を明示して、犯人識別供述の信用性を判断している点は、これまでの判例では見られなかったものである。判決は「近時 の認知心理学上の知見」の例として、『目撃証言の研究』(渡部保夫監修)他の文献を引用しており、この裁判官が、目撃証言についての研究に基づいた一定レ ベルの認識を持っていて、そのうえに立って判決を書いたことを窺わせる。
富山再審との関連で言えば、この事件の判決が問題視している単独面通しが、富山事件でも行われている。
また、富山事件では、富山さんとは似ても似つかない「犯人像」だった目撃者の初期供述が、警察や検察の取調べを重ねるごとに富山さんの特徴に似た「犯人 像」に変遷していくが、この事件の判決が「警察官の強烈な暗示・誘導による決定的影響なくしてはおよそ考えられないもの」と批判している点と重なる。
目撃者の目撃条件について、この事件は、「被害者は明るい場所で約二~三時間にわたり犯人と一緒にいた」のだが、「被害者の視力は、裸眼視力が両目とも 単眼で〇・三、両眼で〇・五の近眼だったが、事件当時はメガネをかけていなかった」ということで、判決は「必ずしも明瞭に物事を観察し得る状況にはなかっ た」としている。富山事件では、確定判決が「本件目撃証人中最も良質の証人」とする岩永の目撃条件は、右眼〇・二~〇・四、左眼〇・一~〇・二の視力で、 一六・四五メートル先の人物を目撃したというものである。しかも目撃時間は一瞬に近いものであり、この事件より格段に劣る目撃条件である。
また、確信度の問題は、目撃者が確信的な供述していたからといって、それが正確性には結びつかないことは、富山再審でも鑑定書他で明らかにしてきている。
富山再審を考えるうえで、いろいろな点で参考になる判決であり、富山再審の今後にも影響する可能性がある。こうした判決を書く裁判官が出てきたことの意 味は大きい。「法と心理学会」はじめ、目撃証言についての実績を積み重ねてきた心理学者、法学者、裁判実務家、等々の人々の努力が実を結びつつあるのを感 じる。
「法と心理学会」では、現在、「目撃供述ガイドライン」の作成が進められている。
こうした状況を踏まえた時、富山再審も勝利の展望が見えてくる。必ずや新たな地平を切り開き、再審開始・再審無罪をかちとりたいと思う。 (山村)

「華氏911」私は、こう観る (うり美)かちとる会のニュースで見てください。(頒価100円 お申し込みはここへご連絡ください)
◎無実の富山保信さんの再審無罪をかちとる会
東京都港区新橋 2-8-16 石田ビル4階 救援連絡センター気付 (TEL 03-3591-1301)◎無実の富山保信さんの再審無罪をかちとる広島の会
広島市西区福島町 1-24-1
Eメール: Eメールtomiyama@io.ocn.ne.jp

 

大井町ビラまき報告

 亀・・・  10
うり美・・・1
山村・・・ 2
富山・・・ 0

今日は夕方4時半から開始。しかし、雨である。台風接近中。
それでもビラの受け取りはそんなに悪くない。さっきからじっとこちらに注目していた店員の女性がわざわざ受け取りに出てきて、店内で読み始めた。これは さい先がよい。時間帯が違うので、通行人もいつもとはちょっと違うようだ。初めて目にするという感じで通り過ぎているなと思われる人がけっこういる。反応 も悪くないぞ。
始めてまもなく、年輩の男性が近づいてくる。ゼッケンに目をやっているのがわかる。いけそうな雰囲気だ。案の定すんなりビラを受け取り、いまにも立ち止 まらんばかりの歩き方で読み始めた。ほとんど立ち止まっている。もう30秒待って、声を掛けたら署名OK間違いなし。

オッ!なんということだ。山村と目を合わせてその前に立つではないか。あーっ、あ、コバンザメにさらわれてしまった。

本家コバンザメにも一人署名。始めてからもう30分たっている。残り30分でなんとか逆転だ。
オッ、いかにも組合活動家然とした中年の女性が足早に歩いてくる。チャンス。胸に「事務局」の名札をつけているではないか。これで署名をとれなかったら とれる人はいない。「再審を求めています」の呼びかけに「(ビラを)もう1枚ください」の返事。これは大丈夫。ところが「駅前で待ち合わせなので、帰り に」。仕方ない、でも署名1名は確保。と思ったら、合流した「仲間」らしき男性たちと時間の確認をしながらそのまま手近なところにいる山村の前に立つでは ないか。それはない!しかも帰りに「(ビラを)もう5、6枚ください。私もえん罪事件を何件も知っています。がんばってください」と私を激励するくらいな ら、私のところで署名してほしかった。うーん、ありがたいことではあるが、署名レースの渦中とあっては複雑な心境だ。

とうとう時間が来てしまった。結局、持ってきたビラはほとんど私がまいたものの署名はゼロ。

コバンザメのためにせっせと労力奉仕したようなものだ。それでもビラをうけとった人の署名をもらえたのでよしとしよう。

本物のハルウララは引退確定。このまま敗退しつづけるとこちらが本物のハルウララになってしまうぞ、という開始前の話題が脳裏によみがえり、次回の署名レースへの奮起を促す。勝たねばならぬ。 (とみやま)

コバンザメさて、コバンザメですが、ご存知の方も多いように、そのまぎらわしい名前にもかかわらず、サメの仲間ではなく、アジやサバと同じ、スズキ目に入ります。
頭の後ろにあるコバン型の吸盤で、サメやエイなどの大型魚にくっついているのですが、この吸盤は何と、第1背びれの変形したものだそうです。
そして、コバンザメ科には、何と8種類もの魚がいるのだとか。
(調査&ホームページ版アレンジ=tyo)

jump page top

More

ニュースNo.191(2004年8月15日発行)

 

タイトル 無実の富山さんの再審無罪をかちとる会ニュース ●ニュースNo.191(2004年8月15日発行)◎広島に行ってきました

大井町ビラまき報告

【河童橋から見る穂高(長野県上高地)】

東京高裁第4刑事部はすみやかに再審開始決定を

署名にご協力をよろしくお願いいたします

■広島に行ってきました

富山、山村の凸凹コンビ 今年も8月6日に広島に行ってきました。当初は、私一人の予定でしたが、恒例のヒロシマ行を欠席するのは後ろめたいらしく、予定を積極的に変更ということで、富山、山村の凸凹コンビで参加。
暑い、やはり8・6ヒロシマは暑い。私の知る限りでも、雨が降ったのは一度くらいで、たとえ曇っても気温だけは悲鳴を上げたくなるほどというのが8・6です。
さっそくビラをまき始めましたが、いつものように、受け取りは良好。できるだけ若い人たちに渡そうと心がけたらじつに反応が良くて、感激。手渡すのが追いつかなくてあたふたするほど。お昼前には全部まき終わってしまいました。

ビラまき

昼飯はお好み焼き さて、仕事がすんだら昼食。広島での昼食はお好み焼きに決まり。「お腹がすいた」と騒ぎ立てる山村をなだめるために「昼飯はお好み焼き」を実行。
「被爆59周年/今こそ、ありったけの力を集めて戦争を止めよう/8・6ヒロシマ大行動」は、2800人が参加して行われました。開会あいさつに立った 集会呼びかけ人の栗原君子さん(元参議院議員)は「今年の8・6ヒロシマは戦時下の大行動となった」とイラク派兵・有事立法と対決する重要性を強調し、当 日早朝に広島県教職員労働組合の施設が銃撃されたことを弾劾して、「様々な圧力をはねのけて、教育基本法の改悪を阻止し、子ども達の未来を確かなものにす るために、今日の集会を成功させよう」と訴えました。地元広島の教育労働者、青年労働者を先頭に全国から昨年を上回る参加、そして韓国、中国、イラクから の参加で、熱気溢れる集会になりました。

8・6ヒロシマ大行動 集会場

デモ「イラク攻撃反対」の横断幕

会場で、大槻泰生さんと会いました。思ったより元気そうでしたが、娘さんや息子さんから「少しは私たちの言うことを聞くようにお説教してください」とのことなので一言、「全部聞けというのは無理でしょうから、せめて三割くらいはまじめに聞いてください。必ず守ること」。
 デモは長蛇の列で、外国人の親子や若者たちがつぎつぎに加わってくる「こんなに楽しく、解放感あふれるデモは初めて」(初参加の教育労働者の感想)というものでした。
印象に残ったのは大挙参加した小学生たち。終始、元気にシュプレヒコールしていました。素晴らしい。こういう子たちがいるかぎり未来は大丈夫、と意を強くしました。
わが友健さんも元気にデモ行進。
「かちとる会広島」の会員は集会の成功のために奮闘中ということで、恒例の広島での集まりは中止・延期。

広島2004夏の灯籠流し

 翌日の仕事のために灯籠流しも見ないで帰京した山村は、二三日熱中症状態が続いたとか。私もおとなしく翌日に備えました。熱いヒロシマでした。(富山)

 

大井町ビラまき報告

 七月の結果は、
亀さん・・・・・・・3名
うり美さん・・・・・1名
富山さん・・・・・・0
山村・・・・・・・・0

前回、「次回をご覧あれ」と書いたが、今回も砕け散った。しかも、負けた者同士のジャンケンでも負けたということで、またも私がこの欄を書く羽目になった。

第三刑事部(中川武隆裁判長)の棄却攻撃は、弁護団の怒りに火をつけた。昨年十月の裁判所の「求意見」に対し、十二月二六日、説得力 に満ちた膨大な「意見書」および「事実の取調請求書」を提出、年明けには、検察官の意見書を木っ端みじんにする反論の意見書を提出、さらに事実調べや証拠 開示を求めて折衝を繰り返した。三月三十日の棄却決定に対しては、「理由を付して」「三日以内に」とされる異議申立期間に全精力を集中して異議申立書を書 き上げてくださった。その勢いで、異議審においても、補充書や新たな鑑定、意見書、証拠開示、等々、全力で取り組んでくださっている。
当然、弁護団の動きに比例して、弁護団事務局も忙しくなる。やらなければならないことが山積みで気ばかりが急く。富山再審で動くのはどんなに忙しくとも決して苦にならないのだが、思うように時間が取れないと、どうしようもない苛立ちに襲われる。
そうした中、何人もの方からの棄却決定に対する批判、御助言や激励に勇気づけられている。
先日も、「再審というのは大変ですね」という私のため息まじりの言葉に、ある大学の先生は「確かに大変ですね。しかし、時代背景というのがある。今、 『法と心理学会』などをはじめとして、目撃証言についてひとつの状況ができつつある。富山再審もこうした中で考えるべきで、悲観することはないと思います よ。私も、目撃証言の危険性について、講義などいろいろな場を使って話していこうと思っている。そうした意識を持った人を一人でも多く育てたいと思ってい ます」。ほわっと心が温まるような気がした。
四月九日には大阪地裁で、傷害事件について、被害者の犯人識別供述が信用できないとして無罪が言い渡されている。判決で、裁判官は目撃証言の危険性について強く指摘している。

次回、またこの欄を書くことになったら、この判決について書こうと思う。 (山村)

大井町のYさんから

休載

jump page top

More

ニュースNo.190(2004年7月15日発行)

 

タイトル 無実の富山さんの再審無罪をかちとる会ニュース ●ニュースNo.190(2004年7月15日発行)◎たゆまざる努力を/依田敬一郎

大井町ビラまき報告

 □たゆまざる努力を

依田敬一郎

 富山保信様

前略、請求が棄却されたことは真に残念なことです。しかし、私の記憶では、再審決定は何度も請求棄却を経た後何回かのたゆまざる請求の結果認められる、というのが通常だと思っていますので、今後も引き続きご努力されることを願っています。

さて、棄却の決定書とこれに対する異議申立書写をいただき、早速読ませていただきました。決定のこじつけ理論には激しい憤りを感じます。また、異議申立 書は、まだ、第一の浜田鑑定書のところだけしか読んでいませんが、弁護人の先生達のご努力には敬意を表するものです。決定書について、私のような老人の弁 護士が意見を述べるべきではないと思いますので、感じたことだけを二、三述べさせていただきます。

その一は、検察官の控訴趣意として、「この種事件における捜査初期の員面は、警察官の尋問技術ないし調書技術の巧拙に左右されやすいこと」とあるところ です(11頁)。それならば、警察官の尋問技術ないし調書作成の巧みな技術による誘導によって、いくらでも被疑者に不利益な員面調書ができるわけです。私 は、この検察官の控訴趣意は、本件の員面調書が警察官の誘導によるものであるという浜田先生の意見を認めたような感じがします。

その二は、浜田鑑定は、「仮にその新規性を認めるとしても、既に述べたところ、例えば、鑑定経過に多分に推測の要素が入っていることなどに照らし、確定 判決が採用した証拠の信用性判断を揺るがす明白性があるとまではいえない。」とある「推測」という言葉です(12頁)。この点は、異議申立書(8頁)にも 「「推測」(実際には推論だが)」とありますが、私は「推測」でよいと思っています。広辞苑(岩波書店)では、「すいそく【推測】(ある事柄に基づいて) おしはかること。」とあり、広辞林(三省堂)では、「すいそく【推測】①おしはかること。推量。「心中を―する」②推理」とあり、また、推理については、 「すいり【推理】①わかっている事をもとにして、まだわからない事柄をおしはかって考えること②〔哲〕」(以下略)」とあります。即ち、「推測」という言 葉は推量という意味と推理という意味があるのです。推理ということを推測といってもよいのです。私は、浜田先生の鑑定書そのものは拝見していませんが、以 前に頂いた弁護人の意見書によれば、浜田先生が推測を推理(演繹的推理と帰納的推理を兼ねた推理)の意味で使われたことが明らかだと思います。

その三は、弁護人の「所論は、Kの供述は詳細で、合理性、迫真性、一貫性があること・・・などから・・・供述は極めて信用性に富むと主張する。」とある ところです(21頁)。私は、弁護人の請求書を拝見していませんが、その意見書は「合理性、迫真性、一貫性」となっていて、「詳細で」ということがありま せん。私は、供述書が「具体的」、「詳細」であることは、それの不存在が真実の信用性が無いことの理由とはなっても、それの存在が真実の信用性の理由には ならないと思っています。もし、具体的、詳細であればそれが真実だというなら、小説家の小説は総て真実ということになってしまうからです。このことは、宇 和島事件で、「自白について、検察官は、真犯人出現以前の当初の論告で『その内容は犯人でしかなしえない供述を含んでいるとともに、具体的、かつ詳細で客 観的証拠に符号していることなどに照らし、高度の信用性を有するものと認めるのが相当である。』と述べている。」(浜田寿美男著『自白の心理学』43頁) とあるところです。決定は、具体的、詳細で迫真性があれば真実という事実認定の通弊を表したものだと思っています。

私も、老人となり、何もお役に立てないで申し訳ありませんが、できることはさせて頂きたいと思っています。ご健闘を。

4月22日
(よだけいいちろう・弁護士)

依田さんは、私の同窓の大先輩です。日弁連の研究会で面識を得、青年法律家協会の発足メンバーであることも知りました。かちとる会主催の集会に参加していただくととも に、いろいろ教えていただいています。再審請求棄却情勢にあたっても、東京高裁第三刑事部への「慎重な審理を」という要請の呼びかけ人になっていただきま した。

今回も、さっそく激励の手紙をいただいたので、依田さんの許可を得てニュースで紹介します。依田先生、これからもよろしくお願いいたします。 (富山)

 

大井町ビラまき報告

 6月の結果は、
亀さん・・・・・・・3名
富山さん・・・・・・2名
うり美さん・・・・・1名
山村・・・・・・・・0

「ハルウララハルウララは決まったね」「やっぱり実力だよね」「また原稿を書かなくちゃね」「勝負の世界は厳しいのよね」等々、今日もまた一段とかしましい三人の声を振り切って、定例会の会場に向かうと、坂本さんが来ていた。
坂本さんは待ちきれないように、六月三〇日の「全逓4・28不当処分取り消し裁判」(東京高裁)での逆転勝訴のことを話し始めた。数年前まで全逓組合員だった坂本さんは本当にうれしそうだ。
一九七九年四月二八日、反マル生闘争を闘った全逓東京地本の組合員五十五名に懲戒免職の処分が出された。これに対して二十五年にわたって闘い続けてきた 人々がいる。全逓本部は、途中で、自らが指令した闘いの裁判を取り下げ、それに反対する被免職者の組合員資格を剥奪した。こうした、当局からの弾圧のみな らず、組合本部の裏切りにも屈せず闘い続けてきた七人に対して、東京高裁は、二年前の地裁の不当判決を覆し、「原告七名全員の処分撤回と職場復帰」を言い 渡したのである。
当時、支部長だった坂本さんの話では、「闘争を指令した本部は誰も処分されないで、末端の組合員だけが処分された」「組合員八人の支部で、五人が処分さ れた。二人が免職、二人が停職一年、支部長の俺は停職一ヵ月だった。支部長で停職になったのは俺だけだった」そうである。いかに選別的な処分だったかがわ かる。
懲戒免職になった組合員の一人が、坂本さんが富山再審集会で、いろいろな闘いの例を出す時に、必ず例に挙げて何度も「神矢君が」「神矢君が」と言っていたその神矢さんである。
坂本さんは、「反マル生闘争の時、本部が旗を降ろすと言った後も、うちの支部だけは十日間位旗を掲げていた。もうやむなく旗を降ろすことになった時、俺 は支部員に言ったんだ。確かにこの闘いで何かを取れたわけではない。しかし、俺は負けたとは思っていない。苦しい闘いだった。でも、みんなが、こういうこ とをもう一度やられるのはいやだ、こんな苦しい闘いはもういやだと思うのなら、この闘いは負けたと思う。しかし、みんながまた同じことをやられたら、また やってやるぞという気持ちでいるなら、この闘いは勝ったと思っている。そう言ったんだ。何度でもやってやるという連中が神矢君たちだった」と誇らしげに 語っていた。
何があっても闘いの意志を堅持し続けることの大きさを、神矢さんたちの闘いは示している。諦めたら負けだ。
そして坂本さんは、当時を振り返って、「楽しかったよな。一日でも職場に行きたくないと思うような日はなかったもんな。毎朝起きると、今日は何してやろうかとわくわくしていた」と言う。
この精神が重要ですね。最近、大井町に立つたびに暗い気持ちになりかかっていた私は、坂本さんに学び、もう一度巻き返しをはかりたいと思うのである。次をご覧あれ。(山村)

大井町のYさんから

休載

jump page top

More

ニュースNo.189(2004年6月15日発行)

 

タイトル 無実の富山さんの再審無罪をかちとる会ニュース ●ニュースNo.189(2004年6月15日発行)◎■裁判員制度は裁判の死だ(富山保信)
富山裁判は人間らしく生きるためのたたかい  大槻泰生

 

大井町ビラまき報告

■裁判員制度は裁判の死だ

5月21日「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(裁判員法)が成立しました。「5月28日の公布から5年以内に実施される」となっています。
最高裁や法務省、日弁連執行部が「裁判が変わる」と鳴り物入りで囃したててきた裁判員制度ですが、問題はどう変わるのか、良くなるのか悪くなるのかで す。ロースクールと並んで「司法改革」の目玉とされる裁判員制度は、はたして日本の刑事裁判の現状の改善・救済となるでしょうか。
結論から言えば、裁判員制度なるものの内実が明らかになるにつれて現行の刑事裁判を少しも改善するものではない、それどころか裁判の死、まともな裁判の消滅をもたらすものであることがはっきりしてきました。正体が露呈してきたということです。
再審請求している当事者にとって死活のかかる大問題なので少し論じます。

 まやかし「司法改革」は裁判の否定

 ―まともな裁判は姿を消す

まず前提として確認できるのは、日本の刑事裁判の実態を知るものにとって《司法改革》は急務であり切望でもあるということです。 1980年代に相次いだ4人もの死刑囚の再審無罪は、有罪率99・9パーセントの背後に膨大なえん罪が存在するという日本の刑事裁判の現実の姿を衝撃を もって知らしめました。日々処刑の恐怖とたたかいながら、それをのりこえて再審無罪をかちとった無実の死刑囚の苦闘は、じつは例外ではなく刑事裁判の原則 とか鉄則といわれるものがほとんどないがしろにされ、かえりみられない日本の刑事裁判において血の涙を流し続けてきた被告たちの典型的姿にほかならなかっ たのです。だから、心ある法曹はこの現実を少しでも改革・改善しようと努力しつづけてきたのです。従来、追求されつづけてきた《司法改革》とは、そういう ものでした。
では、現在急ピッチで進められている「司法改革」は、えん罪の根絶と人権の確立・強化をめざす努力を支え、促進するものでしょうか。ふつうに考えれば、 「司法改革」と称するのだから当然そうだと思ってしまいます。しかし、残念ながら、現実に推進されている「司法改革」なるものはまったく逆の方向をめざす ものといわざるをえません。
そもそも現在推進されている「司法改革」なるものは、その登場の経緯がものがたっているように、帝国主義列強の弱肉強食の争闘にのぞむ財界の強力な要請 を奇貨とするものでした。戦争と大失業の時代における人民の抵抗と反乱への恐怖と危機感をつのらせる支配階級、4名の死刑囚の再審無罪に示される日本の刑 事裁判の実態の露呈に危機感を抱く国家権力、御用学者が結託して「司法改革」の名をもってあたかも司法の現状が変えられることによって少しでも改善・改革 されるかのような幻想をふりまきながら、あわよくば「良心派」もとりこんで一気に戦時司法への転換を成し遂げてしまおうと狙ったのが「司法改革」にほかな らないのです。その証拠に、司法制度改革審議会(司法審)意見書ではえん罪の根絶と基本的人権の確立・強化にむけた反省も決意もかけらすら目にすることが できません。眼目は「(国民は)統治客体から統治主体へ意識の転換をせよ」、つまり「実体として社会の主人公になるのではなく意識だけ統治者と一体にな れ」ということであり、個の主体性は捨て去り下僕根性・奴隷根性の塊となって「お上に仕えろ」とあからさまに要求しています。いみじくも「政治改革、行政 改革、経済構造改革等の諸改革につづく『最後のかなめ』」と言っているとおり、「戦争と大失業」に反対し、抵抗する人民のたたかいを弾圧して戦争を遂行す る国家とその担い手をつくりあげるのにふさわしい司法制度すなわち戦時司法体制を構築しようということなのです。戦時下のお上の裁判に盾突くなんてとんで もないというのだから、再審はもとより原審においてさえ裁判は「迅速に」なんの抵抗も混乱もなく処理されていかねばならないということになります。まとも な裁判は行われなくなる、姿を消すということなのです。
この司法審意見書にもとづき司法制度改革推進本部検討会で検討が行われ、どしどし司法制度改革関連法が成立させられています。裁判員法は、その核心ともいうべきものです。

 裁判員制度はペテンの集大成

「司法改革」は本来求められていたものとは正反対をめざすものであるがゆえに、嘘とペテンによって人民を騙し、扇動し、動員することによってしか成り立ち得ません。したがって、成立させるために始めから終わりまでペテンの集大成ともいうべき手段が採られました。
最高裁は「国民のみなさんが刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものになり、司法に対する国民のみなさんの信頼の向上につながる」とキャンペーンを張っていますが、これこそ真っ赤な嘘というものです。
「国民の参加」とあたかも陪審制度もどきの制度であるかのような言い方をしていますが、陪審制度とは違って「参加」は刺身のツマでしかありません。決定 的に異なるのは陪審制度では有罪か無罪かの判定は全員一致ですが、裁判員制度は多数決で決められるということです。そのうえ量刑の決定にまで関与させられ ます。裁判員裁判は「死刑または無期の懲役・禁固に当たる罪に係る事件」つまり「重大事件」(なぜ重大事件なのか納得いく説明はありません)に適用される のだから、たとえ「無罪だ」と判定し、主張しても多数決で決定されたら「死刑」判決にも参加を強要されます。だから、もともとわかりにくいということも あってはじめから不人気だったのですが、実態がわかるにつれて不人気度は増して、どんな調査でも「参加したくない」が70パーセントとか80パーセントと いう具合に圧倒的多数を占めている有様です。「裁判員は国民の義務」とは、なんたる言いぐさでしょう。結局、あらかじめ決められたシナリオ(この点は後 述)にもとづき進行される、裁判官3名、裁判員6名で構成されたセレモニーの立会人にされるだけなのです。さらに「守秘義務」を口実にマスコミの取材や学 問的研究からもシャットアウトされるのだから、自分が参加した裁判ははたして正しかったのだろうかと検証することすらできません。これでは「裁判はますま す分かりにくいものになり」「信頼から程遠いものになる」のは必至です。
なお、それでも評議に職業裁判官以外に裁判員が加わることによって「国民の健全な常識が反映される(はずだということでしかない。正確には、そうあって 欲しいという正当ではあるが実現されない期待でしかないのでは?)」のだから少しはましになるのではないかという善意の意見があります。しかし、よく考え てみてください。国民の健全な常識の反映を期待するのなら、なぜ構成比を裁判官3名に対して裁判員は6名という具合に押さえたのでしょう。裁判員数をでき るだけおさえ、しかも全員一致ではなく多数決にしたところに「国民の健全な常識など反映させない」という魂胆が見え透いているのではないでしょうか。この 構成比だったら、裁判のプロである職業裁判官が「素人」の裁判員をいくらでも「説得」して多数決で勝てると踏んでいるのではないでしょうか。
さらに、大嘘はまだあります。
「迅速な裁判」これが曲者です。ある意味では、これがキーワードになっています。あたかも現行裁判において被告・弁護側の不当な引き延ばしや審理妨害に よる長期裁判が横行しており、これが裁判員制度によって是正されるかのようなキャンペーンが張られました。事実はまったく逆です。最高裁の資料が裏づける とおり、むしろほとんどの裁判がわずか数回の公判で決着しており、例外的に長期裁判になるのは警察・検察当局のでっち上げや証拠隠匿に起因することが証明 されています。それを事実をねじ曲げたキャンペーンを張り、「裁判員の人権保障」「迅速な裁判の実現」という口実を設けて集中審理を強行しようするのだか ら、被告の公正な裁判を受ける権利を蹂躙・剥奪するのみか、こんな不正・不当な裁判ならざる「裁判」に執行者として裁判員の参加を強制するという、二重、 三重に卑劣な手口といわねばなりません。
最高裁の「国民のみなさんの積極的な協力なくしては成り立ち得ない制度」とは、恫喝にも等しい言い方です。あらかじめ「不適格者」を排除したうえで、事 件報道で処罰感情を煽り立て、予断と偏見を植え付けたうえで遂行される「裁判」が、事実を争い、真実を究明する場と呼べるでしょうか。積極的に協力するに 値しない制度なのです。
つぎにシナリオの作成とその内容についてみてみましょう。「迅速な裁判の実現」のために裁判官、検察官、弁護人による事前準備が行われ、争点整理にもと づき裁判進行のシナリオが決められます。このシナリオ作成段階で被告・弁護側の反証計画の提出、すなわち手の内を明かすことが求められるのですが、これが どういう結果をもたらすかは賢明なみなさんにはおわかりの筈です。これまで無実を証明する証拠を隠したり、証人の証言を妨害したりと様々な違法・不当な妨 害行為を働いてきた捜査当局に、これまでにもましてフリーハンドで反証活動の妨害をゆるすことになります。かといって、争点整理の段階で提出されなかった 反証計画を法廷で実行することは裁判長の訴訟指揮によって阻止されるのだから事前に計画を明かさざるを得ないというジレンマに苛まれることになります。い ずれにせよ反証活動は阻害されるわけです。
さらに、これまで常にあらそわれてきた証拠開示はどうなるのかという問題があります。日弁連執行部は「司法改革」をうけいれる代償に「取調の可視化」が 実現されるかのような幻想を振りまいてきました。しかし、そんなものはなにひとつ担保されてもいなければ、保障されてもいません。むしろ事態は逆で、事前 準備、争点整理の段階で提出された証拠以外は永遠に陽の目を見ないことになります。証拠の目的外使用の禁止という枠がはめられますから、法廷に提出された 証拠の学術研究のための使用さえ場合によっては禁止・処罰されることさえありうるのです。そして、提出されなかった証拠は捜査・検察当局の手によって門外 不出とされるか、破棄されることになってしまいます。いや、そもそも事前準備で明らかにされた証拠以外にどんなものがあるのかということさえ知ることもで きなければ、それを法廷における追及で聞き出すということもできなくなるのです。
これまでも検察側は証拠リストさえ提出しないというやり方で闇の中に閉じこめてきましたが、それでも法廷での尋問・追及によって風穴をこじあけるという ことがまったく不可能というわけではありませんでした。ところが、これからは争点整理による制限、「証人保護」の名による制限(場合によっては証人の氏名 さえ秘匿されることさえある)をもって弁護人の尋問・訴訟活動に対する処罰も含む制限、妨害を加えたり、もっと徹底的に国家権力の御用弁護士ともいうべき 公的弁護士(弁護士会ではなく法務省の監督下に置かれる。弁護士自治の破壊と御用弁護士化は「司法改革」の重要な狙い)の採用というかたちで第二の検察官 を訴訟に立ち会わせるという方法を採って、被告の無実を証明する証拠は存在しないという虚構を成り立たせることが可能になるのです。

 再審もできなくなる裁判員制度

これは、けっして牽強付会ではありません。私の原々審・一審に即してみてみましょう。当初、法廷に提出された目撃者の検察官面前 調書(検面調書。検察官が取り調べて作った調書)はよくできており、それを読んだだけだとまるで私が真犯人であることに疑いを入れる余地などあり得ないと 当の無実の私が思ってしまうくらいでした。ところが、いざ法廷で目撃証人を尋問したら証言は変転し、なによりも司法警察員面前調書(員面調書。警官が取り 調べて作った調書)が何通もあるという証言が出てきたのです。この事実は隠されていました。検察官は員面調書の提出を頑強に拒否・抵抗しましたが、とうと う提出させ、それが一審無罪に結びつきました。裁判員制度のもとでは、これはできなくなります。私の無実を確信し、弁護士としての倫理と信念にもとづく訴 訟活動を展開して無罪判決をかちとった弁護団は、これからはその弁護活動ゆえに次々と処罰され、私は信頼する弁護団を奪われて、弁護活動らしい弁護活動を 保障されることなく、目撃証言の変遷をものがたる員面調書の存在自体を知ることができないままに公判は進行し、待っているのはシナリオどおり「有罪」の判 決です。おまけに、目撃調書が何通存在するのかもわからないのだから、再審請求する手がかりさえないという状態に陥ります。
事態はもっと悲惨かもしれません。なんとか再審請求する手がかりだけでも掴みたいと裁判員、証人に訴えたり、マスコミに取材を要請したり、学者に調査・ 研究を依頼したら、「守秘義務」や証拠の目的外使用禁止の侵害で処罰されることは十分予測され、再審請求さえできなくて途方に暮れるほかなくなるのです。
紅葉の秋です。さあ出かけましょう  危惧すべきことは、まだあります。司法制度改革関連法が次々と成立させられるとともに、刑法改悪・重罰化をはじめ治安弾圧法の強化が目論まれていますが、 共謀罪という団結権を否定・破壊する悪法を軽視するわけにはいきません。これをゆるせば、再審活動や支援運動さえ処罰・禁止の対象にされてしまいます。な にしろ労働組合の団体交渉を行おうという会話でさえ犯罪に問おうというのだから、裁判所への申し入れさえ犯罪視され、「かちとる会」の集まりですら弾圧さ れかねません。まやかし「司法改革」とともに阻止・粉砕あるのみです。
未来は絶望かといえば、けっしてそうではありません。裁判員法の施行は5年後、「国民のみなさんの積極的な協力なくしては成り立ち得ない制度」にしめさ れるように、「司法改革」、戦時司法体制構築の攻撃は円滑に進んでいるどころか、確固たる展望を持ち得ていないのです。以前も紹介しましたが、日弁連はま だ「司法改革」絶対反対派が三分の一の勢力で健在であり、実態が明らかになるにつれてジリジリと力を伸ばしています。これは私たちの再審運動もまったく同 様です。確信を持って、倦まず弛まずにがんばれば必ず目的は達成できます。がんばりましょう。

(富山保信)

富山裁判は人間らしく生きるためのたたかい

 大槻泰生

 東京高裁第三刑事部による富山保信さんの再審請求棄却決定に、私はどうしようもない怒りと涙をおさえることができませんでした。

1974年10月3日の事件発生以来、国家権力は、権力に反抗するものはこういうことになるのだという、みせしめ施策をとりつづけて今日まできました。 だから、富山裁判は無理な証拠・証人認定を行いました。大勢の目撃証人のなかから権力にとって都合のよい証人のみ申請しました。そして、それを最高裁まで が追認しています。

私は慎重かつ公正であり後世の批判にたえうる決定をと考えています。そのためには「警察・検察は隠し持っているすべての証拠の開示をすべき」であり、裁判所はその命令を発すべきであります。

しかし、今回の決定は、富山さんが犯人であるという検察側主張を否定する人の証言をとりあげず、予断と偏見にもとづく誤った判決を維持しています。証拠 開示をしないのは、国家権力による犯罪の全体像が白日のもとに暴かれるからです。裁判所が隠された証拠の開示を命令し、事実審理を開始せざるをえないよう な創意的な行動を起こそうではありませんか。

小泉自民党政権は、アメリカの自国の石油資源確保のためのイラク侵略に憲法を無視・否定して参加しました。恫喝と開き直りで、多国籍軍への参加も強行し ています。公明党の賛成と協力で、賃下げ・首切りの強行、労働法の改悪による労働者の弾圧など団結権の侵害、医療・介護・国民年金等々福祉の切り捨て、教 育基本法の改悪による国家への忠義・忠誠心の強要など戦争国家への道をひた走っています。私たち人民を犠牲にして、生き延びようと画策しています。

花より団子の秋? それを阻む道は唯一、当たり前のことを当たり前のこととして認めない、当たり前でないことを当たり前のこととして認めるといった、今の政治状況をかえていこうではありませんか。富山裁判は、そうしたたたかいの重要なひとつです。

富山さんは無実・無罪なのです。再審開始を行え、と声を出して要求しようではありませんか。戦争はいやだ、8・6ヒロシマの再現はいやだ、と行動を起こ そうではありませんか。富山裁判を通して、人間らしく生きるためにたたかいぬこうではありませんか。

(おおつきやすお・反戦被爆者の会会長・広島「かちとる会」会員)

 

大井町ビラまき報告

□大井町ビラまき報告(5/30)

今回は、
亀さん・・・・・・12名
富山さん・・・・・5名
山村・・・・・・・1名
でした。

入梅前の最後の晴れ間。真夏を思わせる強い日差しに、始める前から気分は萎えていた。
そんな私を尻目に、亀さんは相変わらずのハイペースで署名を取っている。しかも、富山さんの前にも署名する人が並んでいるではないか。「かちとる会」のハルウララは富山さん以外ではないと侮っていたが、これはちょっとまずい展開である。
三十分が経過するが、まだ一名の署名も取れない。焦りはじめた頃、富山再審集会に何度も来てくださっている大井町在住の方が通りかかった。
「暑い中、大変ですね」
「ええ。(そんなことより)署名お願いします」
「もう、署名しましたよ」
「再審が棄却になり、異議審になりました。今度は東京高裁第四刑事部宛の署名です(貴重な一名、ここで逃してなるものか)」
結局、この日は一名だけ。
「ハッハッハッ。ハルウララだ」
という亀さんの高笑いにがっくり肩を落とす。亀さん、余裕である。
翌日、新聞を見ると、この日のダービーで優勝したのもカメハメハだった。(山村)

大井町のYさんから

休載

jump page top

More

ニュースNo.188(2004年5月15日発行)

 

タイトル 無実の富山さんの再審無罪をかちとる会ニュース ●ニュースNo.188(2004年5月15日発行)◎真実はひとつ、私は無実です。

大井町ビラまき報告

真実はひとつ、私は無実です。
大山(だいせん)と梨の花
大山(だいせん)と梨の花

真実はひとつ、私は無実です。
勝つまでがんばります。

ご存知の通り、3月30日、東京高裁第三刑事部(裁判長・中川武隆)は私の再審請求を棄却しました。それに対して弁護団と事務局 は不眠不休の奮闘で4月5日の異議申立書提出期限までに異議申立書を書き上げ、提出し、現在、審理は東京高裁第四刑事部(仙波厚裁判長、嶋原文雄、秋山敬 裁判官)に係属しています。

2004年 藤の花房
(2004年 藤の花房)

○まったく不当な再審請求棄却決定

再審請求棄却決定は、まったく不当なものです。ゆるせません。怒り心頭に発しています。

①真実に反する棄却決定

私は無実です。事件には、まったく関与していません。真実はひとつ、私は無実です。
品川区大井町で事件が発生した1974年10月3日午後1時すぎ、私は豊島区千早町にある前進社にいました。指揮するなど不可能です。
確定判決は誤判であり、訂正されなければなりません。再審請求棄却決定は間違っています。正しい決定は再審開始でなければならないのです。

②責務を放棄した棄却決定

棄却決定は、再審請求に対してまともに応えていません。裁判所としての職責を放棄する不当なものです。
周知のとおり、私の裁判では一審無罪・二審有罪であるにもかかわらず、最高裁は「(上告理由は)単なる事実誤認の主張」と称して具体的判断を回避しまし た。無辜(むこ)が事実誤認を主張する、これほどの上告理由が他にあるでしょうか。最高裁の上告棄却理由は職責放棄であり、自ら「裁判の死」を宣告したも 同然です。
だから私たちは確定判決の誤判である所以を具体的、科学的に指摘して再審請求を行いました。そして、多くの学者、弁護士の方々が「慎重かつ公正な審理の うえで、後生の批判に耐えうるような決定を出されるよう望みます」という要請を東京高裁第三刑事部に対して行われたのです。
東京高裁第三刑事部は、再審請求書、鑑定書や新証言をはじめとする新証拠および意見書、そして学者、弁護士の方々の要請書に正面から応えるべきでした。 それが職責というものです。そして、それこそが「無辜の救済」という再審の本来の目的を実現することになるはずです。
しかし、棄却決定はまともに見据えることもしなければ、論じてもいません。論点をはぐらかし、誤魔化しているだけです。事実認定に科学的知見を導入する という世界の刑事裁判の趨勢に背を向け、目撃証言の信用性を論じるにあたっても鑑定・鑑定書の内容を歪曲して論難しています。卑劣なやり方です。証拠開示 問題にも答えていません。これが「慎重かつ公正な審理」の結論といえるでしょうか。「後生の批判に耐えうるような決定」でしょうか。今後の日本の刑事裁判 の行方を左右しかねない審理を担当している歴史的責務に背き、職責を放棄するものと言わざるをえません。恥を知るべきです。
卑劣漢ぶりを示す証左を指摘しておきます。ひとつは、私は犯人ではないとする新聞記者・K氏の証言の信用性を、事実調べも行わないで否定したことです。 ふたつめは、決定を行った3月30日という日付です。いずれも悪辣な魂胆が透けて見えます。本当にゆるせません。

③再審請求を9年9ヶ月も放置

再審請求を行ったのは1994年6月20日です。それから9年9ヶ月もたっています。9年9ヶ月も放置したあげく、やっと行ったのがこの決定です。
こんな決定のために9年9ヶ月が空費されました。
9年9ヶ月という短くない歳月は、後でも触れますが、重大な意味を持っています。えん罪によって10年間投獄しただけでは飽き足りないで、さらに9年 9ヶ月もの貴重な歳月を私の人生から奪ったのです。確定判決に劣らぬ悪辣なものと断罪せざるをえません。「法匪」とは、こういう所業をいうのではないで しょうか。

○意気軒昂と異議審に臨む

私、弁護団、「かちとる会」をはじめとする人たちは、再審請求棄却決定にもかかわらず、意気軒昂としています。ますますなんとしても再審開始決定をかちとろうと闘志を燃え立たせています。
たしかに棄却決定は残念なことでした。しかし、それによって闘志はそがれていません。

①攻勢的に攻撃を迎え撃った

私たちは、昨年(2003年)10月8日の「求意見書」が再審請求棄却策動だと見抜きました。すでに再審請求から9年4ヶ月近くたち、追いつめられていたのは裁判所だったのです。
私の無実はあまりにも明らかでした。そして、確定判決・有罪判決にはあまりにも無理があり、説得力を持ちませんでした。したがって、時がたてばたつほ ど、同種の事例が増せばますほど確定判決の誤判であることが浮き彫りになってきました。なによりも再審請求人である私が確信を持って訴え続けることによっ て「富山は無実。少なくとも、確定判決には無理があり、確定判決維持は不当」が斯界の常識として定着し始めたのです。裁判所は一刻も早く棄却決定を出して 再審闘争を叩きつぶす必要に駆られましたが、私たちの着実なたたかいの前進によって阻まれてきました。あえて言えば、この9年余は、裁判所にとって棄却決 定を出したくても出せない9年余だったのです。私たちにとっては着実に裁判所に迫ってきた9年余でもありました。主導権を私たちが確立しつつあるという事 態に、ついに耐えきれなくなって蛮勇を奮う役割を担うことになったのが中川裁判長だったのです。
私たちは、この対決構造をしっかり把握しました。だから、一瞬も油断しないで身構え続け、攻勢的に暴挙を迎え撃ったのです。
学者、弁護士の方たちに広く富山再審の現状と高裁第三刑事部の再審請求棄却策動を訴え、「慎重かつ公正な審理のうえで、後世の批判に耐えうるような決定 を出されるよう」要請をしていただきました。私たちの真実に基づく真剣な訴えに多くの方が耳を傾け、お願いに応じてくださり(91名の方に賛同いただきま した)、いまも賛同の通知が届いているほどです。
3月30日の決定に対しても、ただちに翌日、翌々日と再審請求棄却決定弾劾のビラをまき、同時に異議申し立てのたたかいをやり抜きました。

②弁護団、鑑定人、「かちとる会」とともに

再審請求棄却攻撃とのたたかいの過程は、弁護団、鑑定人、「かちとる会」の真価を遺憾なく発揮しました。
不眠不休で異議申立書作成に取り組み、素晴らしい異議申立書を書き上げた弁護団と事務局は、異議審勝利に向けて活性化しています。鑑定人の方にも科学者 の良心にかけて協力を約束していただいています。「かちとる会」のみなさんのご支援には感謝あるのみです。今後ともいっそうのご支援、ご協力を、心からお 願いいたします。

③真実ほど強いものはない

私たちは、究極の勝利を確信しています。なぜなら私たちの訴えは真実にもとづくものだからです。この訴えは必ず人々の心をと らえます。東京高裁第三刑事部への要請のお願いに多くの学者、弁護士の方が応じてくださったことが、それを証明しています。倦まず、弛まず、粘り強く、 もっと多くの人に、富山再審、私の無実を訴え、知ってもらえれば、確実に再審無罪に至ります。阿藤周平さん(八海事件元被告)が言われるとおり「真実ほど 強いものはない」のです。

大山と水田
(大山と水田)

○勝つまでがんばります

再審闘争は異議審、原審にたとえれば控訴審の段階にうつりました。事件発生から29年7ヶ月、不当逮捕から29年4ヶ月、一 審無罪判決から23年2ヶ月、二審逆転有罪から18年11ヶ月、再審請求から9年11ヶ月、あらためて原点・出発点にたちかえりながら獲得目標を確認した いと思います。
いうまでもなく獲得目標は再審無罪です。これ以外にありません。そのうえで、たたかいの前進とともに獲得目標の内容がいっそう豊かになっていることが明確になってきました。

①誤った裁判を放置できない

私は無実です。それにも関わらず、私を有罪とするような間違った裁判など承伏できません。嫌なものは嫌、我慢できないことは我慢できないのです。無実の者はあくまでも無罪でなければなりません。
無実の者が無罪を要求する、これは当然のことです。ましてや無実の者が雪冤に必死になるのは、あまりにも当然のことではないでしょうか。
1980年代に相次いだ死刑確定囚の再審無罪は氷山の一角であり、その陰には多くのえん罪者の血の涙が流れています。帝銀事件の平沢さんや波崎事件の冨 山さんのように獄死を強いられた人も少なくありません。これまで多くのえん罪者が雪冤のために苦闘を重ねてきました。困難に挫けないでたたかいぬいてきた 人たちが今日のえん罪とのたたかいの地平を築いてきたのです。
こうしたたたかいに連なり、先人のたたかいの教訓と成果を学び、受け継いで、たたかいの前進と勝利をなんとしてもかちとらねばなりません。嫌なものは嫌 だけで終わらせるのではなく、嫌なもの、間違ったものはきちんと改めさせる、すなわち再審無罪として結実・定着させてこそ人間社会の進歩にとって意味があ るのです。
再審闘争は単に誤判を改めさせるだけに終わることはなく、えん罪とのたたかいをとおしてえん罪を根絶するために刑事裁判の発展とあり方、社会のあり方を 根底から問いかけずにはおきません。たたかいは人を鍛え、成長させます。請求人をはじめたたかいにかかわるすべての人々を豊かに成長させずにはおきませ ん。人間が個々に分断・対立させられて、共同性が破壊されつつあるなかで、再審闘争は再審という具体的獲得目標の達成をめざす苦闘をとおして「万人は一人 のために、一人は万人のために」という連帯と団結を学ぶ契機となり、人間性を回復し、培っていく揺籃となるのです。
じっさい、私たちは、再審請求から9年9ヶ月も放置されたあげく再審請求も棄却されたにもかかわらず、意気軒昂と異議審闘争に立ち向かおうとしているではありませんか。

②富山再審は日本の刑事裁判のバロメーター

富山再審に具体的に即して論じましょう。
富山再審の最大の争点は目撃証言の信用性です。さらに、いまひとつ重要な問題として証拠開示問題があります。
まず、目撃証言の信用性をめぐって。
私たちは、事実認定にあたって科学的知見を導入するよう主張してきました。そして、確定判決の有罪の根拠をなす目撃証言の信用性を科学的手法・分析を駆 使した鑑定によって粉砕しました。例えば、写真面割りに使用された写真が不適切であることを実証的に証明する鑑定書、確定判決が「本件目撃証人中最も良質 の証人」とするI証人の視力では16・45メートル離れた目撃地点から犯人の人相を識別することはできないことを実証的に証明する鑑定書、目撃証言の科学 的分析によって暗示・誘導の存在を証明する鑑定書という具合にです。
ところが、決定はこれらの鑑定の内容を正確に論じることなく鑑定結果を否定しました。私がその誤り、不当性を論じるよりも弁護団が異議申立書のなかで鋭く指摘していますので、紹介します。
「これら(鑑定書)は、いずれも認知心理学の専門家が、その専門領域で、専門的知見に基づき、実験を経て、特定の結論を提示したものである。
このような証拠について、裁判所は、どのような姿勢で臨むべきか。
認知心理学の専門家は何年もかけて内外の文献を検討し、実験を繰り返し、論文を発表し、学会で意見を開陳し、専門家の批判を受け、さらに研究を進め、専門領域を究めている。
かりに、このような専門家の提示する結論や推論過程に素人が幾ばくかの疑問を感じたとしても、そのような疑問は、認知心理学の初学者がその未熟さゆえに 覚えた疑問でしかない可能性が高い。法律学の世界でもそうであろう。経験ある学者の結論に対する初学者の疑問は、ごく稀に多少あたっていることもないとは 言えないが、多くは専門家の間では議論済みのことで、大体が勉強不足に起因する疑問である。勉学の過程なら、それでよい。初学者は勉強不足に基づく疑問を 専門家に提示し、これに答えてもらうことで、自分の足りないところを思い知り、納得する。これが勉強するということである。
しかるに、そもそも、認知心理学の専門家でないものが、専門家に質問を発することもなく、したがってその答えを得ることもなく、たまたま頭に浮かんだ疑 問をもとに、経験ある専門家の出した結論を信用できないとか、間違いであるなどとして否定することは、大胆かつ愚かな誤りというしかない。身のほどを知ら ない行いであり、一言でいって、まことに恥ずかしい行為なのである」という指摘・弾劾に裁判所は答えることばをもっているのでしょうか。一事が万事この調 子なのです。
証拠開示問題にいたっては、触れてさえいません。
これが日本の刑事裁判の現状なのです。この現状に風穴をあけ、この現状を変えていかねばなりません。そのたたかいを推進するにあたって重要な確認点は、 富山再審はきわめてわかりやすい裁判、つまりきちんとやればたたかえる裁判だということです。したがって、ここで勝たなかったら、勝てなかったら、他のた たかいはもっと困難ということであり、なんとしても勝って現状に風穴をあけなければならないということを意味します。富山再審はそういう位置を与えられて いるのです。そして、実際にそうした責務に着実に応えつつあると自負してよいのではないでしょうか。多くの学者、弁護士の方々に賛同していただけたのは認 知されつつあるあらわれではないでしょうか。
最後にもう一度確認します。私たちは勝利に向かって確実に前進しています。たしかに局面、局面ではたいへんな困難の連続です。けっして平坦な道を進んで いるわけではありません。しかし、私たちは、勝利への道を堂々と進んでいるのです。営々とたたかいつづけている人々との大合流のときが近づいています。究 極的勝利のときを展望しつつ、足下の一歩一歩を踏み固めながら、不屈にがんばりましょう。これからもよろしくお願いいたします。

(富山保信)

 

大井町ビラまき報告

うり美・・・・・1
山村・・・・・・0
富山・・・・・・0

ビラまき報告にもの申す

 かちとる会ニュースの読者は、最後のこのビラまき報告から読むという人が圧倒的に多いようだ。ところが、このビラまき報告が存続の危機に陥っている。それは、なぜか。
誰が決めたか定かではないが、ビラまき報告は署名が一番取れた人の「勝者の弁」が圧倒的となっている。しかし、一生懸命頑張って署名を一番とったあげ く、ビラまき報告を書くというのはやる気が削がれはしないだろうか。実際、なんで勝った人が書くんだという意見が勃発。勝った人が書くのではビラまき、署 名取りに力がはいらないではないか。かえって逆効果になっている気がしてならない。
そこで私が「今度からは負けた人が書くようにしましょうよ。負けた人が勝った人からコメントを聞いて書くというのは?」と提案。すると「それをビラまき 報告で書いてください」と富山さん。わたしは返り討ちにあった気分である。ちなみに今回は、私が勝っているのに、である。
さて、次回は誰が書くことになるのでしょうか。私の意見が通るとしたら、かちとる会の署名取りハルウララ(負け続ける競走馬)は、一体誰に?次号、好御期待。(うり美)

ハルウララ 本家「ハルウララ号」です。

大井町のYさんから

休載

jump page top

More

ニュースNo.187(2004年4月15日発行)

 

東京高裁第三刑事部による

富山保信さんに対する再審棄却決定を弾劾する

東京高裁第三刑事部の再審請求棄却決定を弾劾する 東京高裁第三刑事部(中川武隆裁判長)は、3月30日付で、無実の富山保信さんの再審請求を棄却する決定を行いました。絶対にゆるせません。

再審開始が正しい決定

何度でも繰り返しますが、富山さんは無実です。正しい決定は《再審開始》でなければなりません。無実は無罪でなければならないのです。

棄却決定は不見識の極み

この間強調してきたように、昨年(2003年)10月8日の「求意見書」が再審請求棄却策動であると見抜いた私たちは、これにたいするたたかいを展開してきました。
そのひとつに学者、弁護士の方たちに富山再審の現状と東京高裁第三刑事部の再審請求棄却策動を訴える行動があります。私たちの訴えに多くの方が耳を傾け られ、高裁第三刑事部に「慎重かつ公正な審理のうえで、後世の批判に耐えうるような決定を出されるよう」要請をしていただきました(「かちとる会ニュー ス」前号と今号6~8ページ参照。要請は3月15日から4次にわたって行われた)。
高裁第三刑事部はそれに応えることもなく、事実調べもしないまま棄却決定を行ったのです。
そもそも「求意見書」自体が意見を聴くのではなく、棄却決定をするために形式を整えるものでしかありませんでした。だから、事実認定に科学的知見を導入 することに背を向け、目撃証言の信用性を論じるにあたっても鑑定・鑑定書の内容を歪曲して論難するだけであり、証拠開示問題にもまったく答えていません。 再審請求書にも意見書にも正面から答えない決定とは、いったい何なのでしょうか。
しかも、事実調べをしないで、富山さんは犯人ではないとする新聞記者・K氏の証言の信用性を否定するなどゆるされるものではありません。
さらに、決定を行った3月30日という日付に卑劣かつ悪辣な魂胆が示されています。明らかに異議申し立てに困難を強いようと図ったのです。
これが「慎重かつ公正な審理」の結論と言えるでしょうか。

4月5日に異議申立書を提出

一瞬も油断しないで身構え続けていた私たちは、不当決定を知るとただちに3月31日、4月1日と再審請求棄却決定弾劾のビラをまくとともに(4~5ページ参照)、 異議申し立てのたたかいに入りました。4月5日の異議申立書提出期限まで弁護団と事務局は徹夜を重ね、文字通り不眠不休で、この作業に取り組みました。 「勝つまでやる」と闘志満々だった弁護団は、「最強の弁護団」の名にふさわしい奮闘をもって素晴らしい異議申立書を書き上げました。この弁護団あるかぎり 必ず勝ちます。また、鑑定人も科学者の良心にかけてこんな不当な決定はゆるせないという意見書を提出しました。

弁護団、鑑定人、「かちとる会」の奮闘に感謝

   富山さんから 弁護団、鑑定人、「かちとる会」、 弁護団事務局のみなさんには心  からの感謝と敬意あるのみです。 ありがとうございました。

再審請求人である富山さん、弁護団、事務局、鑑定人、そして私たち「かちとる会」一同、等しくこの不当決定に怒り心頭に発してい ます。こんな決定を行うために10年という貴重な時間が空費されてきたのです。こんな決定は断じて容認できません。正しい決定である《再審開始》に訂正さ せるために、異議審を全力でたたかいましょう。

全力で異議審闘争をやりぬきましょう

異議審は高裁第四刑事部(仙波厚裁判長、嶋原文雄、秋山敬裁判官)に係属しました。
今度こそ私たちが主張し続け、多くの学者、弁護士の方たちが賛同、要請された「慎重かつ公正な審理」にもとづけば当然いたるであろう結論に到達するよう 期待してやみません。すみやかに棄却決定を訂正し、《再審開始》という正しい決定に改めてもらいましょう。
そのためには、一人でも多くの人たちに富山再審、富山さんの無実、棄却決定の不当性を訴え、知ってもらうことが必要です。そして、この訴えは真実にもと づくものだから必ず人々の心をとらえます。現に、短期間にもかかわらず、多くの学者、弁護士の方が私たちの訴えに耳を傾けてくださったではありませんか。 いまも賛同の通知が届いているほどです。
私たちは、棄却決定にもかかわらず、意気軒昂としています。それは、敵の策動を見抜き、緊張感を持続して、攻勢的に暴挙を迎え撃ったからです。究極の勝利を確信しています。「真実ほど強いものはない」のです。
この訴えを、もっと広く、もっと強力に、もっと粘り強くやりぬいて、裁判所を包囲する世論を形成しましょう。棄却決定という暴挙が、敵の思惑とは逆に、たたかいの炎に油を注ぐ結果をもたらしたことを事実をもってつきつけてやりましょう。
みなさん、今後ともよろしくお願いいたします。

東京高裁前でまいたビラ  東京高裁第三刑事部は3月30日付で私の再審請求を棄却する決定を行いました。これは、事実に反する間違った決定です。断じて承伏できません。

無実を訴え続けて30年

私は無実です。決定は《再審開始》でなければなりません。再審開始こそが事実に即した、正しい決定なのです。
事件は1974年10月3日に発生しました。そして、翌年75年1月13日の不当逮捕以来、無実を訴え続けて、すでに30年になろうとしています。

日本の刑事裁判の水準が問われている

私の裁判は目撃証言の信用性を最大の争点とするものであり、日本の刑事裁判史において当時も今も重要な位置を占めていると言って も過言ではありません。目撃証言の信用性、証拠開示問題、そして事実認定のあり方と、刑事裁判の原則、鉄則ともいうべき領域にかかわる判定が問われていま す。日本の刑事裁判の水準を示す試金石なのです。

一審無罪・二審逆転有罪

一審は幸いなことに真実が認められて無罪になりました。しかし、二審はまったく不当にも真実をねじ曲げて「有罪・懲役10年」を宣告し、最高裁が事実審理を拒否したために、無実の私は10年間も刑務所生活を余儀なくされました。
確定判決(二審判決)は誤判です。近代刑事裁判の原則を踏みにじっています。速やかに改められてこそ裁判は裁判の名に値し、私の名誉と人権は回復されるのです。この30年間、私はそれを求め、訴え続けてきました。
1994年6月20日、獄中から再審請求しましたが、95年12月19日以降も請求は放置されたままで、その間に裁判長は次々と交代して現在の中川武隆 裁判長は5人目です。その中川裁判長が、突如昨年(2003年)10月8日付で「求意見書」を送りつけてきました。私と弁護団が再審請求以来要請し、折衝 を重ねてきた「検察官が隠し持っている私の無実を明らかにする証拠の開示命令を出して欲しい」になにひとつ応えないままにです。なんという不誠実極まりな い対応でしょうか。
この事態に、裏面に紹介するように、心ある学者、弁護士の方々85氏(3月30日時点。現在91氏)が東京高裁第三刑事部に対して「慎重かつ公正な審理」をもって「後世の批判に耐えうるような決定を」という要請を行いました。

「慎重かつ公正な審理」の対極にある中川決定

それにもかかわらず、第三刑事部・中川裁判長は今回の「再審請求棄却決定」を行ったのです。「慎重かつ公正な審理」の対極を行く ものであり、一例を挙げれば、「新規性」を否定できない〈私が犯人だという検察側主張を否定する新聞記者K氏〉に対する事実調べをしないままに決定を下し て、今後のK氏に対する事実調べの途を断ち切ろうとするやり方に、卑劣で姑息な魂胆が見え透いています。いったいどこに《無辜の救済》という再審の使命を 真摯に考察し、人権に配慮し、これを守ろうという姿勢がうかがえるでしょうか。不見識極まりないと言わざるを得ません。

再審開始こそが正しい決定

今回の決定は、明白な誤判である確定判決、それを容認した最高裁決定に次いで恥の上塗りを行うものです。誤った決定であり、ただちに訂正されなければなりません。
私と弁護団は《再審開始》という正しい決定を求めて、異議申し立てを行います。みなさんのご支援、ご協力、注目をよろしくお願いいたします。

【4月1日、東京高裁前で棄却決定弾劾のビラをまく富山さん】(写真上下)

 

要請書

1994年6月20日に再審請求がなされ、現在、貴裁判所において審理されている「平成6年(お)第1号」請求人富山保信にかかる再審請求事件について、慎重かつ公正な審理を行われるよう求めます。
本件は、目撃証言の信用性が最大の争点となっており、その種の事例として、一審判決(無罪)、確定判決(有罪)ともに、さまざまな機会に引用されること の多い事件です。一審=無罪判決、二審=有罪判決と判断のわかれた本件において、確定判決における目撃証言、写真選別結果についての判断には大きな疑問が 残ると言わざるを得ません。
また、本件は証拠開示についても、関心を寄せざるを得ない大きな問題があります。検察官が開示を拒否している目撃者の供述調書、事情聴取書等には、確定 判決の成否を左右しかねない重大な証拠が存在する可能性があり、真実を追求すべき裁判所として、このような証拠を未開示のまま、再審請求について判断する ようなことがあってはならないと考えます。
目撃証言を証拠とする場合についての科学的なルールを定めているイギリスにおいては、目撃証言の問題を考える時には、まず証拠開示が問題になると言われ ています。それは、同定したという証拠がある場合、それに対して同定しなかったという証拠がある可能性が高いからです。
本件再審請求の審理がどのようになされるかは、日本の刑事裁判における目撃証言についての認識のレベルがどのような水準にあるかを世界に示すものとなるとともに、今後の日本の刑事裁判の行方を左右します。
貴裁判所が、慎重かつ公正な審理のうえで、後世の批判に耐えうるような決定を出されるよう望みます。

《要請書賛同人》

相磯まつ江(第二東京弁護士会)
秋山賢三(東京弁護士会)
浅野史生(第二東京弁護士会)
足立昌勝(関東学院大学法学部教授)
阿藤周平(八海事件元被告)
阿部泰雄(仙台弁護士会)
荒木和男(東京弁護士会)
荒木伸怡(立教大学法学部教授)
有賀信勇(東京弁護士会)
五十嵐二葉(東京弁護士会)
石松竹雄(大阪弁護士会)
一瀬敬一郎(第二東京弁護士会)
厳島行雄(日本大学教授・心理学)
指宿 信(立命館大学法学部教授)
内田剛弘(第二東京弁護士会)
及川信夫(東京弁護士会)
大石一二(大阪弁護士会)
大口昭彦(第二東京弁護士会)
太田真美(大阪弁護士会)
小川 修(埼玉弁護士会)
小川秀世(静岡県弁護士会)
角山 正(仙台弁護士会)
萱野一樹(第二東京弁護士会)
川村 理(東京弁護士会)
北野弘久(東京弁護士会、日本大学名誉教授)
北本修二(大阪弁護士会)
木村晋介(東京弁護士会)
小泉征一郎(第二東京弁護士会)
古賀正義(第二東京弁護士会)
小長井良浩(静岡県弁護士会)
斎藤利幸(福島県弁護士会)
佐藤昭夫(第二東京弁護士会、早稲田大学名誉教授)
佐藤典子(千葉県弁護士会)
佐藤雅美(第二東京弁護士会)
嶋田久夫(群馬県弁護士会)
清水寛之(神戸学院大学教授・人間文化学)
荘司 昊(秋田弁護士会)
白取祐司(北海道大学法学部教授)
新谷一幸(広島修道大学法学部助教授)
鈴木達夫(第二東京弁護士会)
高山俊吉(東京弁護士会)
高山 昇(群馬弁護士会)
武内更一(東京弁護士会)
塚本誠一(京都弁護士会)
出牛徹郎(群馬弁護士会)
富﨑正人(大阪弁護士会)
豊崎七絵(龍谷大学法学部助教授)
内藤 隆(東京弁護士会)
中川孝博(龍谷大学法学部助教授)
中川瑞代(第二東京弁護士会)
永嶋靖久(大阪弁護士会)
中田政義(京都弁護士会)
中西義徳(東京弁護士会)
中本源太郎(東京弁護士会)
中山博之(札幌弁護士会)
七尾良治(大阪弁護士会)
西村正治(第二東京弁護士会)
庭山英雄(東京弁護士会、専修大学名誉教授)
萩尾健太(第二東京弁護士会)
馬場 亨(仙台弁護士会)
浜田寿美男(奈良女子大学教授・心理学)
林 和男(第二東京弁護士会)
林 宰俊(第二東京弁護士会)
原 聰(駿河台大学教授・心理学)
秀嶋ゆかり(札幌弁護士会)
福島 至(龍谷大学法学部教授)
藤沢抱一(東京弁護士会)
藤田正人(東京弁護士会)
星 正秀(東京弁護士会)
本田兆司(広島弁護士会)
本田敏幸(横浜弁護士会)
前田知克(第二東京弁護士会)
松澤陽明(仙台弁護士会)
松本健男(大阪弁護士会)
水上 学(東京弁護士会)
水野英樹(第二東京弁護士会)
宮本恵伸(京都弁護士会)
村井敏邦(龍谷大学法学部教授)
森川文人(第二東京弁護士会)
矢澤曻治(第二東京弁護士会)
保持 清(東京弁護士会)
八尋八郎(福岡県弁護士会)
八尋光秀(福岡県弁護士会)
山際永三(映画監督、人権と報道・連絡会)
山崎俊彦(札幌弁護士会)
山崎吉男(福岡県弁護士会)
山脇晢子(東京弁護士会)
依田敬一郎(第一東京弁護士会)
和久田 修(東京弁護士会)
渡部邦昭(広島弁護士会)
渡部保夫(札幌弁護士会)
(敬称略)

3・20国際反戦行動デー

日比谷公園に六万人が結集

米英軍等によるイラク侵略戦争開始から1年の3月20日、国際反戦行動デーの一環として日本においても首都圏は日比谷公園に6万人が 決起してイラク反戦の意思を表明しました。気温2・5度という真冬並みの寒さと雨にも負けず、ひっきりなしに会場に詰めかける人波で野外大音楽堂、小音楽 堂、噴水前は埋め尽くされ、芝公園から合流する労働者も加わって延べ6万人に達する人々が世界の人民と連帯してイラク反戦を誓い合いました。あまりの寒さ に体調を考慮して中途退場・帰宅した人々が少なくありませんでしたが、天候に恵まれれば10万人という所期の目標は達成される勢いでした。イラク反戦と戦 争への流れを変えようと希求する人民はこぞって日比谷公園に結集したのです。事務局も参加して、最後までデモをやりぬきました。

この人々と連帯して戦争への道を阻みましょう。この人々と結合すれば再審への道は大きく開かれます。戦争への道に立ちふさがるたたかいと人権の確立・擁護のたたかいは固くひとつです。再審実現をめざしてがんばりましょう。

大井町ビラまき報告

休載

大井町のYさんから

「明日の為の第四十五歩目、
春が来ました。桜も雨とともに満開です」

というお便りとともに二千円いただきました。ありがとうございます。
本当に春になってしまいましたね。事務局一同、異議申し立ての渦中で東奔西走している間に、桜は咲いて散ってしまいました。
たたかいは異議審に移り、いま一奮闘もとめられていますが、ちょっぴりでも心にゆとり(油断ではなく)だけは持ちたいものです。

jump page top

More

ニュースNo.186(2004年3月21日発行)

 

タイトル 無実の富山さんの再審無罪をかちとる会ニュース ●ニュースNo.186(2004年3月21日発行)◎東京高裁第三刑事部に提出した要請書
呼びかけ文
要請書

大井町ビラまき報告

 慎重で公正な審理を

 学者、弁護士など81氏が東京高裁第三刑事部に要請

 既報のとおり、昨年(2003年)10月8日付けで「求意見書」が高裁第三刑事部から届き、12月26日に富山さん、弁護団が意見書を提出し、本年2月19日に弁護団が検察官の意見書に対する反論を提出しました。しかし、依然として裁判所は富山さん、弁護団の「検察官に証拠開示を命令して欲しい」という要請に真摯に応えようとしていません。こんな不誠実な態度で正しい決定が下せるでしょうか。とても期待できるとは思えません。

私たちは、富山再審はひとり富山さんだけではなくすべての人の、つまり私たち一人一人の基本的人権のかかった裁判であり、その帰趨は私たちの人権と日本 の裁判の未来にかかわるものと考えています。したがって、富山再審の成否にかかわる裁判所の動向を軽視、看過することはできません。現在の再審の局面は容 易ならざる状態に直面しており、このまま手をこまぬいているわけにはいかないと思います。

そこで私たちは、人権の擁護、確立に関心を寄せ、努力されていらっしゃる学者、弁護士などの方々に相談、お願いして東京高裁第三刑事部に「慎重で公正な 審理」を要請していただくことにしました。さいわいなことに少なからぬ方々が快諾してくださり、まず3月15日、つづいて16日、17日と要請書を提出し ました。

3月15日には記者会見を行い、富山再審の意義と現状を訴え、要請内容を説明したところ全国紙5紙が深い関心を寄せました。

まだ賛同いただける方々の最終集約にはいたっていませんが、今号のニュースに3月23日提出予定の要請書を掲載します。私たちのお願いに応えてくださっ た方々に心から感謝するとともに、高裁第三刑事部がこの要請に応え、「慎重で公正な審理」によって正しい決定を下すよう願ってやみません。

東京高裁第三刑事部に提出された要請書東京高等裁判所第三刑事部御中
下記の趣旨にもとづき要請いたします。

 記

1994年6月20日に再審請求がなされ、現在、東京高裁第三刑事部において審理されている「平成6年(お)第1号」請求人富山保信にかかる再審請求事件について、裁判所が慎重かつ公正な審理を行うことを求めるものである。

 事件の概要

本件は、1974年10月3日午後1時過ぎ、東京都品川区の路上で起きた殺人事件で、翌1975年1月13日に富山保信(とみやまやすのぶ)が逮捕された。富山は逮捕当初から弁護人に「自分はやっていない」と訴え、以降一貫して無実を主張している。
一審は東京地裁で争われ、1981年3月5日、被告人・富山保信に無罪判決を下した。
しかし、二審・東京高裁は1985年6月26日、富山保信を有罪とし「懲役10年」を言い渡した。1987年11月10日、最高裁は事実審理を行うこと なく「(被告、弁護側の上告理由は)単なる法令違反及び事実誤認の主張であり、いずれも適法な上告理由に当たらない」として上告を棄却した。
富山保信と弁護団は、1994年6月20日、再審を申し立て、東京高裁第三刑事部に係属することとなった。

 目撃証言の信用性をどう判断するか

本件は目撃証言の信用性が最大の争点となった事件である。
事件の概要は、「4名が集合し」、「通りかかり身の危険を感じて逃げ出した被害者を追いかけ」、「(犯人の)4名のうち3名が道路車道上において、被害 者に対し鉄棒で殴りかかり、同人の転倒後も殴り続けた。そして、その殴打中、道路のガードレール内で、周囲を警戒していた別の1名が機をみて、3名に逃げ るよう指示し、これを合図に4名全員が駆け去った」というものであり、これについては、公訴事実、一審判決、二審判決の間でほぼ一致している。
富山保信は、この事件の「道路のガードレール内で周囲を警戒していた別の1名」で「機をみて、3名に逃げるよう指示した」、いわゆる「指揮者」として逮 捕・起訴された(なお、本件捜査において、4名の犯人のうち逮捕・起訴されたのは「指揮者」だけであった)。
白昼の出来事であり、警察が把握した目撃者は約40名いたと言われている。指紋等の物証はなく、目撃証言を中心にして捜査は進められた。そして、この目 撃証言の信用性をめぐって、一審・東京地裁と二審・東京高裁の判断がまっこうから対立するものとなった。

富山保信は、事件当時26歳、身長は180センチ、ガッチリした体格、四角張ったエラの張った顔、広い額が特徴だった。
法廷で明らかになった目撃証人が事件直後に供述した「指揮者」の特徴は、顔つきについては「丸顔」「面長」「細面」など、体格については「やせ型」「中 肉」「細長い」という供述がみられ、年齢については、目撃者によって「20歳位」から「30~35歳」までの差があった。身長については、富山の身長であ る「180センチ」と言っていた目撃者は一人もおらず、「165センチ」と言っていた目撃証人もいた。それが捜査官の取調べを重ねるに連れて、富山の特徴 に似た犯人像を供述するようになっている(末尾に添付の表参照)。
例えば、身長について、事件当日(10月3日)には「165センチ」と言っていたA証人の供述は、「165センチ」から「170~172センチ」(10 月6日)、さらに「175センチ~180センチ」(10月31日)と変わっていき、最後の検面調書(翌年1月18日)では「180センチ位あったかもしれ ない」となっている。
犯人像についての供述が変わるとともに、目撃証人たちは富山の写真を「犯人に似ている」として選ぶようになる。

これらの目撃証言について、一審・東京地裁は、「目撃者らが最初に指摘した特徴によって、被告人が犯人の一人であると特定できるよう には容易に考えることはできない」「目撃者らの供述の経過には捜査段階における暗示の影響が看取されないでもない」「これらの供述の信用性にはかなりの疑 問が残り、これをそのまま採証の用に供することはできないと言わざるを得ない」として、富山保信に無罪判決を言い渡した。

これに対し、二審・東京高裁は、捜査官による暗示・誘導はなかったとして富山に「懲役10年」の有罪判決を言い渡した(確定判決)。二審判決は、目撃者が富山の写真を選んだということを拠り所とし、目撃証言の信用性を肯定した。

確かに法廷で明らかになった7人の目撃者たちは富山の写真を選んでいる。しかし、この写真選別には大きな問題があった。
これについて、再審請求時、弁護団が再審請求書とともに提出した花園大学教授(当時)浜田寿美男作成の鑑定書「富山事件目撃供述についての心理学視点からの供述分析」は以下のように述べている。
「7人がその当の人物の行動として最初に供述したところによると、

A・・・車道上の指揮者
B・・・殴打犯行の中心人物
C・・・殴打犯行に加わり、逃げ出し、最後に路地に逃げ込んだ人物
D・・・歩道上の指揮者
E・・・歩道上の指揮者
F・・・殴打犯人の一人
G・・・殴打犯人の一人

ということになる。これが同一人物であるだろうか。それはありえない。そもそも殴打に加わらなかった指揮者と、殴打を直接行った人物とが同じはずがない。 にもかかわらずこの7人が写真面割で同一人物の写真を選んだのである。これを決定的矛盾と言わずして何と言おう。」
7人の目撃者たちは、同じ時刻に、違う位置(車道上、歩道上)にいて、違う行動(殴打犯人、指揮者)をしていた人物をそれぞれ目撃したとして、同じ富山の写真を選んでいるのである。
その後、事件から3ヶ月余り後に作成された検面調書では、7人中の5人が「殴打犯人」を見て富山の写真を選んだという供述を変更した。一人は車道上の指 揮者から歩道上の指揮者に供述を変え、もう一人は犯人たちが待ち伏せしていた場面に変え、残りの3人は犯人たちが逃げていく場面に変えたのである。これで 「矛盾」は解消した。しかし、目撃証人の側にこのように供述を変える理由はない。これについて、前記浜田鑑定は、
「もとより自分の目撃経験記憶のうちにとどまっているかぎり、供述者本人には矛盾は矛盾として見えない。7人の供述が全体として矛盾解消に向けて変遷し たという事実は、これを矛盾と見ることのできた尋問者の矛盾解消への働きかけがそこに介在したということを明確にさし示すものであったと言ってさしつかえ ない。」
と捜査官による誘導の可能性を指摘している。

さらに、弁護団は、確定判決が「本件目撃証人中最も良質の証人」としたE証人の目撃条件について、K大学のK教授作成による鑑定書を提出している。
この鑑定書は、約80名の被験者を使った実験結果に基づいて、E証人の目撃条件(左0・1~0・2、右0・3~0・4の視力で、16・45メートル先の 初対面の「指揮者」を目撃)では、初めて見る人物の同一性識別は不可能であるとしている。鑑定書によれば、視力0・4で同一性識別が可能な距離は、「平均 値6・29メートル」「信頼限界の範囲4・52~8・06メートル」である。
このように、この事件の目撃証言、写真選別には大きな疑問が残ると言わざるを得ない。

 証拠開示の必要性

二審で、この事件の捜査責任者だった警察官が、約40名の目撃者がいてそのうち34名の供述調書がある、と証言している。しかし、裁 判の過程で明らかにされた目撃者は、7人(証人に採用され供述調書が開示されたのが6人、供述調書のみ開示されたのが1人)で、残り27名の目撃者の供述 調書は未だに開示されていない。
再審請求時に弁護団が提出した新証拠の中には、富山を「犯人ではない」と言った目撃者の証言もある。これは、D証人のタクシーの乗客で当時新聞記者だっ たKという人物の証言である。Kは、弁護人の事情聴取に対し、「(指揮者は)やせて小柄で貧弱な男」「細面で青白くキツネ顔の男」とし、富山が身長180 センチだったと聞くと「そんな大男じゃない。それだけははっきり言える」と言い、目撃証人が選んだ富山の写真を見て「こんな男じゃない」とはっきりと否定 した。このKの所在については、D証人の員面調書に記載されていたにもかかわらず、一審で、検察官は裁判所の開示勧告が出るまで、D証人の員面調書の開示 を拒否し、Kについては「そんな人物は知らない。こちらが知りたいくらいだ」とまで言っていたのである。
再審において、弁護人は、Kをはじめとする未開示の目撃者の供述調書、捜査報告書等の開示を再三にわたって検察官に求めてきた。しかし、検察官は、一部の目撃者の供述調書、捜査報告書の存在を認めながらも開示については一切拒否し続けている。
弁護団は、東京高裁第三刑事部に、検察官に対する証拠開示命令ないし勧告を求めて申入れを繰り返し行い、何度にもわたって上申書を提出してきた。しか し、申し立てから5年近くが経過するにも関わらず、裁判所は何ら具体的判断を示さず、検討がなされた様子も伺えない。
すべての証拠は真実発見のためにこそ役立てられるべきである。検察官の立証に有利な証拠は出すが、被告人に有利な証拠は開示しないというのはフェアでは ない。検察官は、すべてを明らかにして公明正大に判断を問うべきである。裁判所は、請求人の無実を裏づける可能性のある証拠が存在することが明らかなの に、それを取調べもせずに再審請求に対して決定を下すことがあってはならない。

 科学的知見に基づいた「基準」の設定を

確定判決は、「写真面割りの正確性を担保するための基準」として、①写真識別者の目撃条件が良好であること、②早期に行われた写真面 割りであること、③写真面割りの全過程が十分公正さを保持していると認められること、④なるべく多数者の多数枚による写真が使用されていること、⑤呈示さ れた写真の中に必ず犯人がいるというものではない旨の選択の自由が識別者に確保されていること、⑥識別者に対し、後に必ず面通しを実施し、犯人の全体像に 直面させたうえでの再度の同一性確認の事実があること、⑦以上の識別は可及的相互に独立した複数人によってなされていること、の7項目を挙げて、本件目撃 証言はこれらの条件について「おおむね充足している」としている。
しかし、この基準は、何をもって「目撃条件が良好」だとするのか、「早期」とはいつのことを言うのか、何ら具体的な基準となっていない。「多数者の多数 枚の写真」というが、何人の何枚の写真なのか、そもそも「多数者の多数枚」の写真の中身はどういうものであるべきなのか、何ら検討がなされていない。本件 では、写真面割りに使用された写真の内容や構成が問題とされ、使用された再審請求人の写真が強力な暗示性をもっていることが指摘されている(再審請求時に 提出されたT大学のH助教授(当時)作成の昭和61年8月21日付報告書)。
しかも、目撃者に対する捜査過程が外から窺い知ることのできない全くのブラックボックスの中にある本件において、写真面割りの全過程が「十分公正」であ るかどうか、「選択の自由」があったかどうか、目撃者たちの写真面割りによる識別が「相互に独立し」ていたか否かについて何の保証もない。むしろ、本件で は捜査官による暗示・誘導の形跡が多数見られるのである。
この「基準」については、科学的な見地からこの基準では基準たりえないとして、「法と心理学会」や日弁連の「目撃証言研究会」、法学者、心理学者、実務 家の間で問題視されている。「法と心理学会」では、この「基準」に代わる「目撃供述ガイドライン」の検討が数年にわたってなされてきており、今年中にも正 式に提起されようとしている。

 公正かつ慎重な審理を

欧米では目撃証言は危険な証拠とされ、証拠とするためには厳しい条件を付している。本件再審請求の審理がどのようになされるかは、日本の裁判所の目撃証言についての認識のレベルがどのような水準にあるかを世界に示すものとなる。
東京高裁第三刑事部が、慎重かつ公正な審理のうえで決定を出されるよう望むものである。

《呼びかけ人》

秋山賢三(東京弁護士会)
浅野史生(第二東京弁護士会)
足立昌勝(関東学院大学法学部教授)
阿藤周平(八海事件元被告)
阿部泰雄(仙台弁護士会)
荒木和男(東京弁護士会)
荒木伸怡(立教大学法学部教授)
有賀信勇(東京弁護士会)
五十嵐二葉(東京弁護士会)
一瀬敬一郎(第二東京弁護士会)
指宿 信(立命館大学法学部教授)
内田剛弘(第二東京弁護士会)
及川信夫(東京弁護士会)
大口昭彦(第二東京弁護士会)
太田真美(大阪弁護士会)
小川修(埼玉弁護士会)
小川秀世(静岡県弁護士会)
川村 理(東京弁護士会)
北野弘久(東京弁護士会、日本大学名誉教授)
北本修二(大阪弁護士会)
古賀正義(東京弁護士会)
斎藤利幸(福島県弁護士会)
佐藤昭夫(第二東京弁護士会、早稲田大学名誉教授)
嶋田久夫(群馬県弁護士会)
新谷一幸(広島修道大学法学部助教授)
鈴木達夫(第二東京弁護士会)
武内更一(東京弁護士会)
塚本誠一(京都弁護士会)
出牛徹郎(群馬弁護士会)
富﨑正人(大阪弁護士会)
中山博之(札幌弁護士会)
七尾良治(大阪弁護士会)
西村正治(第二東京弁護士会)
庭山英雄(東京弁護士会、専修大学名誉教授)
浜田寿美男(奈良女子大学教授・心理学)
原 聰(駿河台大学教授・心理学)
福島 至(龍谷大学法学部教授)
藤田正人(東京弁護士会)
前田知克(第二東京弁護士会)
松本健男(大阪弁護士会)
水上 学(東京弁護士会)
水野英樹(第二東京弁護士会)
村井敏邦(龍谷大学法学部教授)
矢澤曻治(第二東京弁護士会)
保持 清(東京弁護士会)
八尋八郎(福岡県弁護士会)
山際永三(映画監督、人権と報道・連絡会)
山崎吉男(福岡県弁護士会)
山脇晢子(東京弁護士会)
依田敬一郎(第一東京弁護士会)
渡部邦昭(広島弁護士会)
(2004年3月17日現在)

〈新たに加わられた方〉

藤沢抱一(東京弁護士会)

 

 要請書

1994年6月20日に再審請求がなされ、現在、貴裁判所において審理されている「平成6年(お)第1号」請求人富山保信にかかる再審請求事件について、慎重かつ公正な審理を行われるよう求めます。
本件は、目撃証言の信用性が最大の争点となっており、その種の事例として、一審判決(無罪)、確定判決(有罪)ともに、さまざまな機会に引用されること の多い事件です。 一審=無罪判決、二審=有罪判決と判断のわかれた本件において、確定判決における目撃証言、写真選別結果についての判断には大きな疑問 が残ると言わざるを得ません。
また、本件は証拠開示についても、関心を寄せざるを得ない大きな問題があります。検察官が開示を拒否している目撃者の供述調書、事情聴取書等には、確定 判決の成否を左右しかねない重大な証拠が存在する可能性があり、真実を追求すべき裁判所として、このような証拠を未開示のまま、再審請求について判断する ようなことがあってはならないと考えます。
目撃証言を証拠とする場合についての科学的なルールを定めているイギリスにおいては、目撃証言の問題を考える時には、まず証拠開示が問題になると言われ ています。それは、同定したという証拠がある場合、それに対して同定しなかったという証拠がある可能性が高いからです。
本件再審請求の審理がどのようになされるかは、日本の刑事裁判における目撃証言についての認識のレベルがどのような水準にあるかを世界に示すものとなるとともに、今後の日本の刑事裁判の行方を左右します。
貴裁判所が、慎重かつ公正な審理のうえで、後世の批判に耐えうるような決定を出されるよう望みます。

《要請書賛同人》

秋山賢三(東京弁護士会)
浅野史生(第二東京弁護士会)
足立昌勝(関東学院大学法学部教授)
阿藤周平(八海事件元被告)
阿部泰雄(仙台弁護士会)
荒木和男(東京弁護士会)
荒木伸怡(立教大学法学部教授)
有賀信勇(東京弁護士会)
五十嵐二葉(東京弁護士会)
石松竹雄(大阪弁護士会)
一瀬敬一郎(第二東京弁護士会)
指宿 信(立命館大学法学部教授)
内田剛弘(第二東京弁護士会)
及川信夫(東京弁護士会)
大石一二(大阪弁護士会)
大口昭彦(第二東京弁護士会)
太田真美(大阪弁護士会)
小川 修(埼玉弁護士会)
小川秀世(静岡県弁護士会)
角山 正(仙台弁護士会)
萱野一樹(第二東京弁護士会)
川村 理(東京弁護士会)
北野弘久(東京弁護士会、日本大学名誉教授)
北本修二(大阪弁護士会)
古賀正義(東京弁護士会)
小長井良浩(静岡県弁護士会)
斎藤利幸(福島県弁護士会)
佐藤昭夫(第二東京弁護士会、早稲田大学名誉教授)
佐藤典子(千葉県弁護士会)
佐藤雅美(第二東京弁護士会)
嶋田久夫(群馬県弁護士会)
新谷一幸(広島修道大学法学部助教授)
鈴木達夫(第二東京弁護士会)
高山俊吉(東京弁護士会)
武内更一(東京弁護士会)
塚本誠一(京都弁護士会)
出牛徹郎(群馬弁護士会)
富﨑正人(大阪弁護士会)
豊崎七絵(龍谷大学法学部助教授)
内藤 隆(東京弁護士会)
中川孝博(大阪経済法科大学法学部助教授)
中川瑞代(第二東京弁護士会)
中田政義(京都弁護士会)
中西義徳(東京弁護士会)
中本源太郎(東京弁護士会)
中山博之(札幌弁護士会)
七尾良治(大阪弁護士会)
西村正治(第二東京弁護士会)
庭山英雄(東京弁護士会、専修大学名誉教授)
馬場 亨(仙台弁護士会)
浜田寿美男(奈良女子大学教授・心理学)
原 聰(駿河台大学教授・心理学)
秀嶋ゆかり(札幌弁護士会)
福島 至(龍谷大学法学部教授)
藤田正人(東京弁護士会)
星 正秀(東京弁護士会)
本田敏幸(横浜弁護士会)
前田知克(第二東京弁護士会)
松澤陽明(仙台弁護士会)
松本健男(大阪弁護士会)
水上 学(東京弁護士会)
水野英樹(第二東京弁護士会)
宮本恵伸(京都弁護士会)
村井敏邦(龍谷大学法学部教授)
森川文人(第二東京弁護士会)
矢澤曻治(第二東京弁護士会)
保持 清(東京弁護士会)
八尋八郎(福岡県弁護士会)
山際永三(映画監督、人権と報道・連絡会)
山崎吉男(福岡県弁護士会)
山脇晢子(東京弁護士会)
依田敬一郎(第一東京弁護士会)
和久田 修(東京弁護士会)
渡部邦昭(広島弁護士会)
渡部保夫(札幌弁護士会、北海道大学名誉教授)
以上、2004年3月17日提出済み

(新たに加わられた方々)

清水寛之(神戸学院大学教授・人間文化学)
白取祐司(北海道大学法学部教授)
萩尾健太(第二東京弁護士会)
林 宰俊(第二東京弁護士会)
藤沢抱一(東京弁護士会)
八尋光秀(福岡県弁護士会)

2004年3月23日

【以上、敬称は略させて頂きました】

大井町ビラまき報告

休載

大井町のYさんから

「明日の為の第四十三歩目

まだまだ寒い2月と3月、ひなまつりの日ですが、4日には雪が降るそうです。
しかし、暑さ寒さも彼岸(春分の日)まで、きっと暖かくなります」

というお便りとともに二千円いただきました。ありがとうございます。
それにしても彼岸前はひどい寒さでしたね。風邪をひかないで元気にがんばりましょう。

jump page top

More

ニュースNo.185(2004年2月15日発行)

 

「裁判の質が問われている いまこそ再審開始を2・7富山再審集会」は、71名の参加で成功しました。みなさん、ありがとうございました。

再審請求棄却策動を弾劾する葉山岳夫弁護士

ドイツから帰国直後にもかかわらず、急遽、講演していただいた足立昌勝さん

■2・7集会報告

「裁判の質が問われている いまこそ再審開始を 2・7富山再審集会」は、71名の参加で成功しました。集会の準備と、意見書の 作成過程が重なりましたが、みなさんのご協力により熱気溢れる集会を実現することができました。再審請求棄却策動粉砕、証拠開示実現、再審開始にむけ、事 務局一同おおいに意を強くしています。本当にありがとうございました。
当日は、講演を予定していた阿藤周平さんが体調不良のため欠席ということになり、急遽、ドイツ滞在から帰国されてまもない足立昌勝さん(関東学院大学教授)に講演をお願いしました。快く講演を引き受けてくださった足立さんに感謝します。
葉山岳夫弁護士の報告、足立さんの講演は、順次ニュースに掲載します。今号では、阿藤周平さんのメッセージを紹介します。

 【阿藤周平さんのアピール】 みなさんにご挨拶申し上げます。本日はきびしい寒さの中、集会にご参加下さいまして感謝いたします。
本来ならばこの集会に出席することになっていましたが、寒さのせいでしょうか急に体調を崩し、やむなく欠席させていただくことにしました。皆様に深くお詫びいたします。
昨年の10月、東京高裁は意見を求めてきました。
再審請求をして10年、その間一体なにをしてきたのでしょうか、理解に苦しみます。高裁は意見を求める前に、こちらが強く要求している検察官手持ちの初動捜査当時における関係証書等の開示を検察側に要求すべきです。
今回の再審請求にあたり、請求人富山氏及び弁護人から富山さんがえん罪であることの明白性を示す膨大な証拠資料等が提出されています。裁判所はこれら証 拠資料を一読すれば、原審の有罪判決が誤判であり、第一審の無罪判決の正しかったことが容易に判明するはずです。

みなさん、裁判とは実に不気味な存在です。裁判官たちは一体何を考えているのか、八海事件で7回の裁判をくり返してきた私には、法衣に身をつつんだ人間の良心はどこにあるのかわかりません。
裁判は証拠による、その証拠の採否は裁判官の良心にゆだねる、この法文に大きな落とし穴があるのです。八海事件が7回の裁判をくり返したのはまさに刑訴法第317条、同第318条の裁判官の自由心証主義なのです。おそるべき条文です。

富山再審は開始されるべき事案であり、私は東京高裁第三刑事部の各裁判官の良心を信じて明日を待ちたいと思います。
真実には必ずや勝利がある、これは私の八海事件でやしなわれた信念です。
みなさんがんばりましょう。横暴な国家権力に対し、みなさんと共にたたかうことを・・・。
2月7日
阿藤 周平

 

 【集会でのアンケートから】 日本の司法は全く機能してないことを再確認しましたが、それに対して私たち一人一人は何ができるのでしょうか。「裁判官ネット」は最近どんな活動をしているのでしょうか・・・このえん罪事件に対し息の長い支援活動をつづけている人々がおられること、本当に稀有なことだと思います。ひょっとしたら、この事件は氷山の一角なのでしょうか?

釈然としないこと。なぜ検察側は富山さんを有罪にすることに固執したのでしょうか?犯人の見つからない犯罪など少なくないのではないでしょうか。

「被害者論」批判のお話しをきいて少しショックでした。いくつかの軽犯罪(的なもの)の被害を受けた人間としては、少々辛いお話しでした。

現在の制度では被害は回復できないし、事実が被害者側に知らされないことに問題があるのではないでしょうか。「被害者論」=「復讐劇」という理論は乱暴では?(31歳・女性)

参加者が意外に多かった。
再審に対する認識としては、未だ甘いのでは。
足立昌勝さんの講演は判りやすかった。ただし、富山事件にもう少し即して頂きたかった。
富山氏、気迫がこもっており、感動的。(67歳・男性)

足立先生のお話し、説得力大。感銘しました。
山村さんのお話し、迫力大。同感。(80歳・男性)

弁護団の話をもう少し簡潔にして、他の再審事件をたたかっている人やえん罪事件にかかわって人の話をいくつか入れた方がいいのではないでしょうか。横への広がりとつながりとして足立さんの話はよかった。(56歳・男性)

再審の難しさを感じました。
無実である事は請求内容を見れば、明らかだと考えます。
裁判所へ力強いたたかいをもってやっていけば扉は開かれると思います。(54歳・男性)

葉山、足立両氏の講演が非常に良かった。私自身の裁判についての勉強になりました。
富山さんの立場が鮮明です。私も同じ立場で完全無罪判決を勝ち取ります。(56歳・男性)

ニュースを見ていると「この人、恥ずかしくないのかしら?」と言い たくなる事が、あまりにも多いと思います。恥を恥と感じる心や阿藤氏のメッセージ中にもあった「良心」を失ってしまった人とは親しくなれないし、関わりた くもありません。それなのに、そんな人たちに生活や人生を左右されてしまうなんて・・・。絶対に嫌です。足立先生のお話も大変興味深く聞きました。また、 かちとる会ニュースでじっくり拝見したいと思います。(30歳・女性)

葉山先生と足立先生のお話は非常によくわかりました。
司法改革の攻撃の意味するものも明快に説かれ、富山裁判闘争の意義が明らかになったと思います。
山村さんの訴えは迫力があり、まさに今こそ再審をの声を大きく上げなければいけないという思いを強くしました。
富山さんのアジテーションにしっかりこたえたいと思います。(60歳・男性)

葉山氏、足立氏の報告、講演は圧巻でした。真実と正義の力は我々の側にあります。
特に足立氏の〈人権の普遍性〉を声高にしかも毅然とした主張は素晴らしい。大きなうねりを作り再審開始―全面無罪・勝利を我が手にかちとりましょう。(55歳・女性)

再審開始と再審無罪、そのために富山さんと「かちとる会」のみなさん、弁護団のみなさんが長いたたかいを続けてこられたことを改めて確認しました。足立さんの「人権は普遍である」を原則とした提起に共感します。(57歳・男性)

葉山さん、足立さんの話がわかりやすかったです。
山村さんの呼びかけのとおり、怒らなければいけないのですね。再審開始をかちとれるよう長い間続けておられていることを感じました。(32歳・男性)

葉山先生、足立先生ともに、お話しの内容がきわめて判りやすく、誠実なお人柄の中に魅力も感じられました。
それで、長時間聴いていても退屈せず、苦痛でもありませんでした。
で、次回も参加させていただきたいと思います(他の社会活動とぶつからない限り参加します)。(64歳・男性)

富山さん、ビラまきで奮闘

今回の集会の成功のために、富山さんは東京高裁前と地下鉄霞ヶ関駅前で4日間ビラをまきつづけました(ビラを見て集会に参加された方もいらっしゃいます)。「今日で3日目ですね」と声を掛けて通り過ぎる法務省職員も現れたそうです。

ビラを受け取られた方からご家族の署名とともに激励の手紙が届きましたので、紹介します。

2004年2月3日に東京高裁前の道でチラシを受け取り、読ませていただきました。
再審裁判への傍聴の帰りでした。
今の日本の社会、真実があまりに無視、軽視されることが多すぎます。
特に裁判の場では、真実のみが、判断の唯一のモノサシでなければいけないと強く思います。
日本社会全体の成熟が、あらゆる面で求められます。
権力とのたたかいは、困難が伴いますが、どうぞ頑張り抜いて勝利されますように。
Nさん

巣鴨で「イラク派兵反対」の訴え

 2月14日、とげぬき地蔵の縁日でにぎわう巣鴨駅頭で自衛隊のイラク派兵反対の街頭演説と署名活動が行われました。呼びかけたのは 「二度と戦争は許さない!戦争体験者杉並百人の声」。巣鴨駅を出ると同時に目に入る「イラク派兵は地獄道」のプラカードに注目が集まるなかで、平均年齢が 85歳になる7人の高齢者がマイクを握りました。
最高齢の八木ケ谷妙子さん(90)は、太平洋戦争当時は小学校の教師をしており、敗戦で疎開先から東京の下町に戻ったときに子ども達と見た焼け野原の光景が今も忘れられないという体験談を語り、反戦を強く訴えました。
沖縄出身の高田普次夫さん(84)は「1940年から従軍し、抑留を経て無事で帰国したら私の故郷の沖縄では20万人を越える死者だった」と痛憤の思いを語りました。
特攻隊で出撃した兄が実は「自分は無駄死にだ」と述懐していたと切々と訴える女性の声に足を止めて聞き入り、署名する人もあらわれました。
メンバーの一人として決起された桜井善作さん(『野火』編集人)は、この日は「若者」で、演説に署名集めにと大奮闘でした。

 「元日帝台湾兵」の林歳徳さんの日本人民は敗戦時の痛切な反省を想起して自衛隊のイラク派兵に反対するよう心から呼びかける姿が印象的でした。
当日の行動は、翌日の東京新聞(上)、朝日新聞(下)でも報道されました。

 さすがに、この心うつ決起と体験に基づく説得力ある訴えに耳を傾ける人々の様子を無視できなかったようです。
小泉政権は既成事実の積み重ねと、マスコミを総動員して鳴り物入りで愛国主義と排外主義を煽り立て、諦めと無力感のなかに反戦の意思とたたかいを解体し ようとしています。しかし、人民の根強い抵抗の前にけっして円滑に進んではいません。それどころか、人民の戦争反対の思いがどれほど抜きがたいものである かを突きつけられて必死で虚勢を張っているのが実状ではないでしょうか。翼賛国会で開き直り、傲慢不遜に叫びたてていますが、自信も展望もあるわけではあ りません。
実際、連日といってもいいほどテレビに映し出される光景は出征そのものであって、「まさか自分の人生で再び出征の光景を目にしようとは。日の丸・君が代 と歓呼の声で出征兵士を送らせてなるものか」とまなじりを決して立ち上がる戦争体験者が少なくないのです。「杉並百人の声」は、あえて言えば「氷山の一 角」にすぎません。これから続々と同様の決起が生み出されるでしょう。そして、若者ももちろん決起します。そうでなければ人類の未来に希望はありません。
このままでは戦争と大失業の果ての大破局は不可避です。破局への道を突き進む小泉政権に、いまこそ待ったをかけましょう。

3・20日比谷へ

イラク侵略戦争開始から1年目の3月20日(土・休日)、世界中の人々が再び集い、反戦デモにたちあがります。日本でも午後1時から、日比谷公園で平和のための世界同時行動・反戦デモが行われます。10万人の大結集で戦争への流れを変えましょう。
不正・不正義を憎む私たちの心が戦争を阻止し、不正・不正義の横行に目をつむる心が戦争を推進します。失業と生活破壊、権利剥奪の戦争への道は嫌です。 戦争と戦争への道に反対する広範な人民とともに、再審請求棄却策動を粉砕し、証拠開示、再審開始・無罪実現にむけてがんばりましょう。 (とみやま)

大井町ビラまき報告

 圧勝した者が勝利報告を書く決まりなのですが、多忙のため休載いたします。大井町ビラまき報告から読むという人がいらっしゃるそうです。期待を裏切って、申し訳ありません。ご勘弁ください。
圧勝者が誰かは「乞うご期待」ということにします。(と)

大井町のYさんから

「明日のための第四十三歩目
季節は大寒で、最低気温は氷点下すれすれ、どうか暖をとって、ご自愛を」

というお便りと共に2000円いただきました。ありがとうございます。
寒暖の差がとんでもなく大きくて体調を崩しがちです。風邪を引かないで元気に頑張りましょう。

jump page top

More

ニュースNo.184(2004年1月1日発行)

Home Page News

年賀状 富山保信2004年は勝負の年

今年こそ勝負の年。

これまでにも増していっそうのご支援をお願いいたします。

なんとしても凱歌をあげる年にしましょう。

(富山保信)

■2・7集会の成功をかちとり、事実審理開始・再審開始へ全力でがんばりましょう

昨年(2003年)12月26日の意見書提出をもって中川裁判長の再審請求棄却策動と、事実審理開始・再審開始をめざすたたかいとの決戦局面に入りました。一瞬の油断もゆるされません。
2004年は勝負の年です。勝利の要諦は攻め続けること、攻勢のみが勝利をもたらします。守勢に回る理由も必要もありません。正義はわれらにあり!遠慮する必要はありません。ひたすら勝利をめざし、確信と執念を持ってとことん攻めまくりましょう。
2・7集会の成功をかちとり、「富山さんは無実だ。東京高裁第三刑事部は検察官に証拠開示を命令せよ。事実審理を開始せよ。再審を開始せよ」を広範な人民の声とするために全力でがんばりましょう。

裁判の質が問われている
いまこそ再審開始を
2・7富山再審集会

《発言》

富山保信さん(再審請求人)
阿藤周平さん(八海事件元被告)
葉山岳夫弁護士(再審弁護団)

2月7日(土) 午後6時半開始
きゅりあん(5階) 第2講習室(JR京浜東北線・東急大井町線/大井町駅下車)

「かちとる会」に届いた年賀状から
年賀状 うり美さん
年賀状 阿藤周平さん
うり美さん
阿藤周平さん
年賀状 土屋翼さん(国賠ネット)
年賀状 桜井善作さん(月刊小新聞「野火」編集人)
土屋翼さん(国賠ネット)
桜井善作さん(月刊小新聞「野火」編集人)
年賀状 松永優さん(国賠ネット)
年賀状 大槻泰生さん(反戦被爆者の会会長)
松永優さん(国賠ネット)
大槻泰生さん(反戦被爆者の会会長)
年賀状 救援連絡センター
救援連絡センター
年賀状 飯島豊さん
年賀状 神戸市民救援会議
飯島豊さん
神戸市民救援会議
年賀状 MSさん
年賀状 江戸川の櫻井さん
MSさん
江戸川の櫻井さん
 年賀状 MKさん

「前略 遅くなりましたが、今年分の会費を送ります。
こちら、職人労働者としての一人前化と、建設仲間の団結づくりに苦労しながら、第二の人生を生きています。
人生ですから、山あり谷ありしながら歳を重ね、そのことを楽しんでいます。老いたるは若い世代の為に、バトンタッチすべきものと自覚しながらの日々です。
頑張ってください」
MKさん

富山保信さんの意見書

昨年(2003年)12月26日、富山さんと弁護団は東京高裁第三刑事部に意見書を提出しました。いよいよこれで「待ったなし」の状態です。なんとしても事実審理開始、証拠開示をかちとり、再審開始の展望をきりひらきましょう。
富山さんの意見書を掲載します。

 私は無実です。事件には全く関与していません。やっていないものはやっていないのです。ごまかしは通用しません。事実はあくまでも事実であり、たとえ何年経とうが、どこにいようがかわらないのです。
何度でも強調します。真実はひとつ、私は無実なのです。
再審請求書をよく読んでください。そして、一審判決と二審判決(確定判決)を比較・検討してください。そうすれば確定判決が誤判であることがわかります。
私は、裁判所が真実を探求し、誤判の訂正を真摯に審理するものと思えばこそ再審請求に全力を注いできました。真剣に応えてください。

1994年6月20日の再審請求から9年半がたちました。はたして私の訴えは真摯に検討されているのでしょうか。提示されればたちどころ に私の無実=真実が誰の目にも明らかになる証拠を隠し持ったままの検察官にたいして、いまだに証拠開示の命令が出されていないのは何故ですか。確定判決の 成否を検証しようとすれば、避けて通れない問題ではありませんか。
1975年1月13日の不当逮捕から、すでに29年がたとうとしています。私は、何度も申し入れで述べたとおり、身に覚えのない「殺人犯」という汚名を すすぐにあたって「当たり前のことが当たり前のこととして実現される裁判、正しいことが正しいこととして通用する裁判であれば、私の無実は判明すると信じ て審理に臨みました。近代刑事裁判が到達した地平と成果をそのまま適用すれば可能なはずなのです」と正々堂々と裁判に臨みました。至極当然の要望ではない でしょうか。ところが、これが裏切られたのです。
29年という歳月はけっして短いものではありません。生まれたばかりの子どもが29歳となり、子どもがいてもおかしくない年齢になります。不当逮捕時に 27歳になったばかりであった私は、まもなく56歳です(1月5日)。孫がいてもおかしくない年齢であり、まもなく定年を迎えようという年齢でもありま す。
なぜこんなにも長期に渡って苦しまねばならないのでしょうか。はたして救済される機会はなかったのでしょうか。
ありました。あったのです。一審判決は刑事裁判の原則に忠実に則った事実認定=無罪宣告を行いました。これで終わっていれば、私は無駄に苦しむことはなかったのです。
二審判決(確定判決)がこれを阻みました。確定判決は、予断と偏見を押し通して「逆転有罪」を宣告するために近代刑事裁判が到達した地平と成果をあえて踏みにじったのです。
近代刑事裁判が到達した地平から見るとき、一審・無罪判決と確定判決・有罪判決のどちらが説得力を持っているかは歴然としています。
一審判決は、特別に変わったことを行ったわけではありません。刑事裁判の原則に忠実であっただけです。それが誤判を防ぎました。
確定判決は、近代刑事裁判が到達した地平に立ち、近代刑事裁判が達成した成果を踏まえたものといえるのでしょうか。無実を叫ぶ当事者という私の立場を離 れても、近代刑事裁判が到達した地平を踏み外し、近代刑事裁判が達成した成果を拒否していると断ぜざるを得ません。その結果、無実という厳然たる事実=真 実を見誤り、私の人権を踏みにじっているのです。
そして最高裁までが職責を放棄して確定判決=誤判を容認し、自ら日本の刑事裁判を刑事裁判の名に値しない存在へとおとしめてしまいました。

今日にいたるも、過ちは改められてはいません。矛盾は全て私に押しつけられたままです。無実という真実が否定されて無実を訴えている私の人格も否定されていること、そして誤判の被告として刑事裁判史に汚名をさらし続けていること、これほどの苦痛はありません。
私は、1995年12月19日に「満期釈放」で出獄しました。けれども、一日として苦しみから解放されたことはありません。一日も早く、私をこの苦しみ から解放してください。それができるのは貴裁判所だけであり、それは裁判官としての良心と職責に忠実に従えば可能なのです。
私は無理な注文をしているのでしょうか。そうではありません。ふつうの市民がふつうの感覚で当たり前の裁判と考える裁判、すなわち近代刑事裁判が到達し た地平に立って確定判決を吟味して欲しいと望んでいるのです。そうすれば、たちどころに確定判決の誤りに気づかれると確信しています。
検察官に証拠開示を命じてください。確定判決は単に誤判であるにとどまらず、内容においても日本の刑事裁判の名を辱める水準であり、論理学的にも破綻し ています。なぜそんな恥ずべき事になっているのでしょうか。それは無理矢理、白を黒と言いくるめようとしているからです。確定判決の誤判は明らかですが、 万人を納得させる審理を行うためにも、証拠開示命令を出してください。検察官が隠匿している27人分の目撃供述調書が開示されれば、私の無実はいっそう明 らかになります。そうすれば貴裁判所は、近代刑事裁判の原則・鉄則に照らして有罪を言いわたすことはできない=無罪とすべきだったという段階から一歩進ん で、歴然たる無実だから無罪であると確信をもって言いわたすことができるようになるのです。
裁判官諸氏に私の苦しみを理解する想像力を持っていただきたい、そして自ら原審に臨み、原判決を書くつもりで虚心坦懐に審理していただきたい、そうすればかならず検察官に証拠開示を命令されるに違いないと確信しています。

無辜を罰せず―これが刑事裁判の使命ではないですか。人権の擁護については、貴裁判所は断固としてこれを支持されると思います。しかし、 人権の擁護は抽象的にこれを論じるのではなく具体的に、貴裁判所の立場に即するならば審理の場において実現されるべきでしょう。それではじめて人権は守ら れ、確立され、発展させられるのではないですか。貴裁判所の責任を果たしてください。
誤判の訂正は、ひとり私のみならず同時代と次代を生きる人々の人権の擁護を意味します。それこそ裁判官の使命ではないでしょうか。誤りを率直に誤りと認 めて改める裁判所のあり方こそが日本の刑事裁判を血の通った信頼できるものにし、その前提があってはじめて、「法の安定性」はその名にふさわしいものにな ります。ぜひこの願いに応えてください。
すみやかな証拠開示命令と事実審理の開始、再審無罪を願ってやみません。

大井町ビラまき報告

休載

大井町のYさんから

「明けましておめでとうございます。
2004年は進歩の年になるといいですね。
明日の為の43歩目」

というお便りとともに2000円いただきました。ありがとうございます。
今年は、なんとしても勝利の年にしましょう。

jump page top

More

ニュースNo183(2003年12月15日発行)

 

 集会にご参加ください

 裁判の質が問われている いまこそ再審開始を

とき 2月7日(土)午後6時半・開始
ところ きゅりあん(5階)第2講習室(JR京浜東北線・東急大井町線/大井町駅下車)

 ■2・7集会の成功のために12月26日の意見書提出の期限が迫りました。富山さん、弁護団、事務局は、より説得力ある意見書の作成のために全力を挙げています。
意見書提出をもって、形式上はいつでも、どんな決定でも下せるということになります。刑事訴訟規則第286条の「再審の請求について決定をする場合に は、請求をした者及びその相手方の意見を聴かなければならない」は、意見を聴くという手順さえ踏めば決定を下せるということなのです。そして、東京高裁第 三刑事部・中川裁判長のこれまでのけっして誠実とは言い難い対応からすれば、あってはならない決定を狙っていると危惧せざるを得ません。一瞬の油断もなら ない緊張状態に入るということを、意見書提出は意味しているのです。
したがって、意見書提出をもって一段落するのではなく、これまでにも増して緊張状態は強まるのであって、事実審理開始―再審開始の実現のためには正しい 決定をせよという有形無形の、とりわけ有形の裁判監視の声、世論、たたかいが求められます。中川裁判長の再審請求棄却策動をゆるさず、正しい決定=再審開 始・無罪を出さざるを得ないまでに裁判所を包囲し、追いつめる世論、たたかいをつくりあげましょう。
その第一歩が、2月7日の集会の成功です。これなくして富山再審の勝利はありません。会場から溢れるくらいの参加を実現し、参加された一人一人が富山さ んの無実を確信するとともに、一人一人の人権の確立・強化と富山再審の命運は一体であることをしっかり認識して「富山さんは無実。再審請求棄却策動はゆる さない。東京高裁第三刑事部は、検察官に証拠開示を命令せよ。事実審理を行え。再審を開始せよ」を広範な人民に訴えていく新たな出発点にしましょう。
当日は、皆さん一人一人が万難を排して、必ずご参加ください。それだけではなく、周囲の人々に参加を呼びかけて、ぜひ一緒に参加してください。一人でも多くの参加をかちとり、熱気溢れる集会を実現しましょう。よろしくお願いいたします。

裁判の質が問われている
いまこそ再審開始を
2・7富山再審集会

《発言》
富山保信さん(再審請求人)
阿藤周平さん(八海事件元被告)
葉山岳夫弁護士(再審弁護団)

2月7日(土)午後6時半・開始
きゅりあん(5階)第2講習室
(JR京浜東北線・東急大井町線/大井町駅下車)

 

 ■自衛隊のイラク出兵絶対反対

 小泉政権は12月9日の臨時閣議で自衛隊のイラク派兵を決定しました。戦後史の転換です。アジア・太平洋戦争の反省としてあった「不戦の誓い」は踏みにじられようとしています。
自衛隊のイラク派兵とは、自衛隊が侵略軍としてアメリカをはじめとする帝国主義侵略軍とともに軍事占領の一端を担い、イラク人民を殺すために出兵するということです。これ以外ではありません。
小泉首相は記者会見で「国益のためだ」「テロに屈するな」「武力行使はしない。戦闘行為には参加しない」と強調しました。嘘とペテン、開き直りの極致と言うべきです。
イラクは、いまどうなっているのでしょうか。アメリカが石油・中東支配のために膨大な「大量破壊兵器」を用いてイラク人民を虐殺し、軍事占領しているも のの、当然にも人民の抵抗闘争がたたかいつづけられて、アメリカによるイラク戦争とは侵略戦争にほかならないことが日々明らかになっています。侵略戦争開 始前から世界中で反戦のたたかいが展開されましたが、その正しさと必要性はますます鮮明です。米英など侵略軍・占領軍の一員としてイラクに乗りこむという ことは、権益の確保をかけた侵略そのものであって、けっして「イラク人民の支援」などではありません。いまここで参戦しなかったら帝国主義強盗同士の弱肉 強食戦で不戦敗になる、つまり帝国主義としてやっていけなくなるということなのです。いまイラク人民に向けられようとしている銃口の先には朝鮮―中国―ア ジア人民が標的としてあります。世界戦争の火中に自衛隊・日本侵略軍は投じられようとしているのです。
小泉記者会見は、恫喝と開き直りに終始しました。私たちは、こんなものに屈していいのでしょうか。
自衛隊が他国の人民を殺し、殺されることなど断じてゆるすわけにはいきません。それは、私たち一人一人が殺し、殺されることなのです。他国の人民をどん な理由があろうと殺す自衛隊は、今度は平気で自国の人民を殺すようになるでしょう。私たちは殺されるのはいやですが、同時に、私たちの分身である自衛隊員 一人一人に殺させるのはもっといやです。そうならないために、そうさせないために、全力で自衛隊のイラク派兵を阻止しましょう。
  戦争は究極の人権蹂躙です。人民の命は「鴻毛」のようにしか扱われません。手遅れになってからでは遅いのです。日本を戦争国家にするための国家改造攻撃が 襲いかかり、自衛隊の出兵すら現実になったいま、ここで立たずしていつ立つのでしょうか。いまなら、まだ間に合うのです。
朝日新聞12月11日付朝刊の記事をご覧ください。たった一人でも、いま立つことが大切なのです。それはけっして一人の決起にとどまらないで、かならず広範な人々の共鳴を引き出し、巨大な力を生み出します。
わが富山再審闘争もそうです。この情勢だからこそ、真実に立脚したたたかいは真価を発揮します。戦争への道にたちふさがり、人間が人間らしく生きられる 社会の建設のために積み重ねてきた努力に連なって、広大な支持と共感を得るのはこれからです。楽観は許されません。油断しないで、攻勢をとり続け、がんば りましょう。 (とみやま)

スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中央書記長の山川さんが、イラク侵略戦争開始前に書かれた資料があります。今日の情勢を知るためにも参考になると思い、転載をお願いしたところ快諾していただきました。お奨めいたします。

《参考資料》

アメリカは何故、イラクにこだわるのか―石油から見たイラク侵略戦争

山川博康

イラクの『石油』がキーワード

ブッシュ政権発足以来、アメリカの単独主義に批判的であったEUでは、ドイツが早々と「軍隊を派遣しない」と表明し、フランスも「確 たるデータがあるなら示すべき」と米英を牽制している。ロシア、中国も国連決議を条件にイラク攻撃を支持したが、本音は反対である。91年の湾岸戦争以来 既に12年が経過しているが、イラク経済制裁下で米英系企業が参入を排除されている間に、フランス、ロシア、中国の企業は石油権益を獲得したり、開発の交 渉中である。イラクの隣国であるサウジアラビアも、当初、「イラク爆撃の米軍基地の使用や領空の通過を認めない」と打ち出した。
これだけ主要国が反対し、かつ莫大な戦費を必要とするイラク爆撃に何故ブッシュはこだわるのか。そこには世界第二位の埋蔵量を持つというイラクの『石油』が一番大きなキーワードとして出てくる。

イラク石油開発に遅れをとったアメリカ

イラクの埋蔵量は1152億バーレルと、サウジアラビアの2618億バーレルに次ぐ世界第二位と推定されていて、世界の確認埋蔵量の 10・9パーセントを占めている。かつて、イラクの当局者が国際的な石油会議の場で、『イラクの確認石油埋蔵量は1120億バーレルだが、さらに、 2140億バーレルの可能性がある』と話したこともある。今日、一次エネルギー消費の40パーセントが石油(天然ガスは25パーセント弱)であり、20年 後の長期需要予測においても、この割合は大きく変化せず、石油がこれからもエネルギーの主役である以上、そして、世界の1/4以上の石油消費国であるアメ リカのブッシュ政権にとって、ロシアやフランス、中国に遅れをとっているイラクの石油権益の巻き返しがイラク侵略戦争である。

経済制裁下で、イラクの石油権益を失ったアメリカ

イラク石油開発の歴史は英仏独の資本が主導したのである。第一次世界大戦後、独に代わり米企業が参入したものの他の中東湾岸産油国同 様に60~70年代における油田の国有化策で米石油企業は権益を失っていった。湾岸戦争以降、米英のイラク経済制裁により米英石油メジャーがサウジに接近 する中で、イラク・フセインは仏、伊、中国、ロシアなどの企業と油田の開発契約を進めてきたのである。イラク南部ではトタールフィナエルフ(仏)がマジュ ヌーン油田とナハル・ウマル油田の開発で交渉中であり、ロシアのルクオイルは97年に西クルナの開発権を得ている。また、ロシアとベラルーシュの合弁企業 スラブネフトはスッパ・ルハイス油田の開発権を昨年10月に調印し、中国石油天然ガス集団公司( CNPC)やイタリアのアジップなどもハルファーヤ油田の開発に向け交渉中である。

イラク侵略反対にまわったサウジ

世界最大の確認埋蔵量と有数の産油量を誇るサウジアラビアは、当初、米英軍のイラク爆撃に際して自国の米軍基地からの発着を認めてい なかった。これまでサウジはアメリカの同盟国として、最大の石油供給国としてだけでなく、湾岸戦争には米軍基地を建設し多額の戦費も負担した。しかし、 「9・11」以降、アメリカとサウジの関係が急激に悪化した。「反米自爆テロ」の多くがサウジ出身者であったことで、アメリカは全てのサウジアラビア人を テロリスト扱いした。これで多くの米留学生が帰国した。米国市場に流入しているオイルダラーも、一千億~二千億ドルをヨーロッパなどに異動させた。12年 前の湾岸戦争と違い、「保守からリベラルまでさまざまな立場の人が、アルジャジーラ(カタールの衛星テレビ)でパレスチナの惨劇を見て、反米感情を募らせ ている。米国が世界の警察官として米国のルールを押しつけるたびに、アラブの尊厳、イスラムの自由といった理念が強まって行く。大衆や宗教指導層はサウジ の基地から飛び立った米軍機がイラクを爆撃することを許さないだろう」と、英王立国際問題研究所のマイ・ヤマニ氏が言うように、サウジには米英軍によるイ ラク爆撃が王制国家体制の崩壊につながる危険性をはらんでいるのである。

湾岸王制国家の崩壊を招きかねないイラク攻撃

また、米ブッシュ政権高官の「サダム退治後、米国際石油資本が進出してイラクの原油生産を3倍に増やす」が、可能になる素地が十分に あり、現実となれば、OPEC内でのサウジの指導権は喪失、原油価格の暴落によるOPECそのものの解体、サウジをはじめ国家財政にオイルダラーの全てを 依存する王制国家の崩壊もあり得る。湾岸国家のとって最も危惧しているのが、フセイン政権打倒後のこのシナリオである。1980年から今日までの20数年 間において、原油価格が10ドル/バーレル以下に下落する、いわゆる逆石油危機が産油国を直撃したことが、86年、89年、99年と3回起きている。いず れもが経済不況による石油需要の減退による価格の下落が産油国の国家財政を直撃した。89年の逆石油危機では巨大国家であり有数の産油国であったソ連邦が 崩壊している。

イラク侵略戦争は絶対に許せない

IEA発表では02年の世界の石油需要は7663万バーレル/日、03年は7775万バーレル/日、02年比で約100万バーレル/日強 の増加を予想している。その1/4を消費し、地球温暖化防止対策としての97年京都議定書からの離脱を明らかにしている米ブッシュ政権がめざすのは、これ からもエネルギーの基軸をなす石油の支配であり、その軸が確認埋蔵量の66・5パーセント(可採年数105年)を占める中東の石油であり、イラク侵略であ る。湾岸戦争で10万人以上の人々を殺し、劣化ウラン弾による放射線障害で戦後も死者は絶えない。再び、侵略戦争をしかけてそれこそ大量破壊兵器でイラク 民衆を皆殺しにすることなど絶対に許せない。(おわり)

 『季刊・刑事弁護』  小原弁護士の論文が掲載される 再審弁護団の一員である小原健弁護士の「法と心理学の接点としての富山事件」が、『季刊・刑事弁護』36号(2003年10月発行)に掲載されました。原審から弁護を担当された小原弁護士の力作から教えられるところが多いので、紹介します。
まず「富山事件の概要」で事件と弁護活動を概括的に説明し、獲得目標を「富山事件弁護団は、富山事件の弁護を通じて、わが国の捜査手続や裁判手続が、実 証的な裏付けのないまま、捜査機関が提出する証拠に安易に依拠している実態を批判しつつ、なんとか犯人識別供述の信用性について、科学的知見に基づく適正 な評価をさせ、富山氏の無実を明らかにしようと活動してきた」と要約したうえで、そのために「弁護団は、心理学者に依頼し、心理学的見地から実験を実施し てもらい、報告書や鑑定書が作成され、裁判所に提出された」ことの意義を提起。
つぎに、「心理学者への協力依頼の契機」として「そのうち私は、富山事件で犯人識別のために用いられた面割写真の束を持ち歩き、富山氏を見たことがない 人たちに見てもらうようになった。すると、ほとんどすべての者が、事件の状況を説明されただけで、同氏の写真を事件の犯人にもっともふさわしい者として選 び出すことに気づいた。そして、このことから、捜査段階で犯人のいわゆる面割りに用いられた富山氏の写真自体に、実は犯人である(と捜査当局がみなしてい る)ことを暗示させる情報が組み込まれているのではないかと思うようになった」ので「伝をたどって心理学者」を紹介してもらったそうです。
そして、「心理学鑑定による鑑定書や報告書の提出」で提出された報告書や鑑定書が紹介され、各々の証明力が展開されています。あえてひとつだけとりあげ れば、「最良の証人(確定判決)」といわれる「視力が0・4の人物」には「16・45メートル離れたところにいる初対面の人物の顔の同定識別はできない」 「見えない」という実験結果が出ています。この実験は、実際にどう見えるか(見えないか)がビデオ映像化されているのだから、裁判所は自分の目で確かめて みればいいのに、そうはしていません。
核心の「富山事件における心理学鑑定の課題」で「再審の段階で心理学鑑定の資料を提出しているが、いまだ具体的な成果を生むに至っていない理由」を 「1,事実審での提出ではない」「2,目撃証言に関する知識とこれに裏づけられた見通しが不足していた」「3,目撃証言評価の科学的側面につき裁判官を十 分に説得しきれていない」の三点に総括したうえで、「教訓と今後の展望」が提起されています。
結語は簡潔に要約されていてわかりやすいので、そのまま紹介します。
「富山事件においてもそうなのであるが、目撃証言は、一般に衝撃的、決定的印象を与える。目撃証言の危険性は明らかである。呪縛を解くのは、科学の力しかないであろう。
実際、明白な結論を示す目撃証言をあえて否定するためには、科学的根拠に対する信念と独善を戒める謙虚な人権感覚が必要である。さらに、自己の経験則自 体を対象化し、動かしがたい事実に照らしてその経験則自体を疑い、論理操作で思いこみを絶対化する独善性や硬直した態度を乗り越える内省的作業も必要であ る。考えてみれば、このようなことは、虚心に証拠に向き合い、あくまでも真実を探求するという、あるべき事実認定の姿勢そのものである。目撃証人論は、単 なる目撃証言という、ある特定の証拠の評価にとどまらず、裁判に対する姿勢そのものを問うことにつながる」。
実務家の見地からコンパクトにまとめられており、読みやすいうえにわかりやすい論文です。いま富山再審はどうなっているのかを知るとともに、説明するにももってこいの資料といえます。お奨めします。
【『季刊・刑事弁護』36号・現代人文社刊・2500円】
(と)

大井町ビラまき報告

休載

大井町のYさんから

 「明日のための第四十二歩目、
季節は冬です。とても寒い、コートが欲しい」

というお便りとともに二千円いただきました。ありがとうございます。
異常に暑くなったり、寒くなったりと天候不順がつづきます。ご自愛ください。

More