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ニュースNo183(2003年12月15日発行)

 

●ニュースNo183(2003年12月15日発行)◎2・7集会の成功のために
自衛隊のイラク派兵絶対反対
『季刊・刑事弁護』に小原弁護士の論文掲載

大井町ビラまき報告

 集会にご参加ください

 裁判の質が問われている いまこそ再審開始を

とき 2月7日(土)午後6時半・開始
ところ きゅりあん(5階)第2講習室(JR京浜東北線・東急大井町線/大井町駅下車)

 ■2・7集会の成功のために12月26日の意見書提出の期限が迫りました。富山さん、弁護団、事務局は、より説得力ある意見書の作成のために全力を挙げています。
意見書提出をもって、形式上はいつでも、どんな決定でも下せるということになります。刑事訴訟規則第286条の「再審の請求について決定をする場合に は、請求をした者及びその相手方の意見を聴かなければならない」は、意見を聴くという手順さえ踏めば決定を下せるということなのです。そして、東京高裁第 三刑事部・中川裁判長のこれまでのけっして誠実とは言い難い対応からすれば、あってはならない決定を狙っていると危惧せざるを得ません。一瞬の油断もなら ない緊張状態に入るということを、意見書提出は意味しているのです。
したがって、意見書提出をもって一段落するのではなく、これまでにも増して緊張状態は強まるのであって、事実審理開始―再審開始の実現のためには正しい 決定をせよという有形無形の、とりわけ有形の裁判監視の声、世論、たたかいが求められます。中川裁判長の再審請求棄却策動をゆるさず、正しい決定=再審開 始・無罪を出さざるを得ないまでに裁判所を包囲し、追いつめる世論、たたかいをつくりあげましょう。
その第一歩が、2月7日の集会の成功です。これなくして富山再審の勝利はありません。会場から溢れるくらいの参加を実現し、参加された一人一人が富山さ んの無実を確信するとともに、一人一人の人権の確立・強化と富山再審の命運は一体であることをしっかり認識して「富山さんは無実。再審請求棄却策動はゆる さない。東京高裁第三刑事部は、検察官に証拠開示を命令せよ。事実審理を行え。再審を開始せよ」を広範な人民に訴えていく新たな出発点にしましょう。
当日は、皆さん一人一人が万難を排して、必ずご参加ください。それだけではなく、周囲の人々に参加を呼びかけて、ぜひ一緒に参加してください。一人でも多くの参加をかちとり、熱気溢れる集会を実現しましょう。よろしくお願いいたします。

裁判の質が問われている
いまこそ再審開始を
2・7富山再審集会

《発言》
富山保信さん(再審請求人)
阿藤周平さん(八海事件元被告)
葉山岳夫弁護士(再審弁護団)

2月7日(土)午後6時半・開始
きゅりあん(5階)第2講習室
(JR京浜東北線・東急大井町線/大井町駅下車)

 

 ■自衛隊のイラク出兵絶対反対

 小泉政権は12月9日の臨時閣議で自衛隊のイラク派兵を決定しました。戦後史の転換です。アジア・太平洋戦争の反省としてあった「不戦の誓い」は踏みにじられようとしています。
自衛隊のイラク派兵とは、自衛隊が侵略軍としてアメリカをはじめとする帝国主義侵略軍とともに軍事占領の一端を担い、イラク人民を殺すために出兵するということです。これ以外ではありません。
小泉首相は記者会見で「国益のためだ」「テロに屈するな」「武力行使はしない。戦闘行為には参加しない」と強調しました。嘘とペテン、開き直りの極致と言うべきです。
イラクは、いまどうなっているのでしょうか。アメリカが石油・中東支配のために膨大な「大量破壊兵器」を用いてイラク人民を虐殺し、軍事占領しているも のの、当然にも人民の抵抗闘争がたたかいつづけられて、アメリカによるイラク戦争とは侵略戦争にほかならないことが日々明らかになっています。侵略戦争開 始前から世界中で反戦のたたかいが展開されましたが、その正しさと必要性はますます鮮明です。米英など侵略軍・占領軍の一員としてイラクに乗りこむという ことは、権益の確保をかけた侵略そのものであって、けっして「イラク人民の支援」などではありません。いまここで参戦しなかったら帝国主義強盗同士の弱肉 強食戦で不戦敗になる、つまり帝国主義としてやっていけなくなるということなのです。いまイラク人民に向けられようとしている銃口の先には朝鮮―中国―ア ジア人民が標的としてあります。世界戦争の火中に自衛隊・日本侵略軍は投じられようとしているのです。
小泉記者会見は、恫喝と開き直りに終始しました。私たちは、こんなものに屈していいのでしょうか。
自衛隊が他国の人民を殺し、殺されることなど断じてゆるすわけにはいきません。それは、私たち一人一人が殺し、殺されることなのです。他国の人民をどん な理由があろうと殺す自衛隊は、今度は平気で自国の人民を殺すようになるでしょう。私たちは殺されるのはいやですが、同時に、私たちの分身である自衛隊員 一人一人に殺させるのはもっといやです。そうならないために、そうさせないために、全力で自衛隊のイラク派兵を阻止しましょう。
  戦争は究極の人権蹂躙です。人民の命は「鴻毛」のようにしか扱われません。手遅れになってからでは遅いのです。日本を戦争国家にするための国家改造攻撃が 襲いかかり、自衛隊の出兵すら現実になったいま、ここで立たずしていつ立つのでしょうか。いまなら、まだ間に合うのです。
朝日新聞12月11日付朝刊の記事をご覧ください。たった一人でも、いま立つことが大切なのです。それはけっして一人の決起にとどまらないで、かならず広範な人々の共鳴を引き出し、巨大な力を生み出します。
わが富山再審闘争もそうです。この情勢だからこそ、真実に立脚したたたかいは真価を発揮します。戦争への道にたちふさがり、人間が人間らしく生きられる 社会の建設のために積み重ねてきた努力に連なって、広大な支持と共感を得るのはこれからです。楽観は許されません。油断しないで、攻勢をとり続け、がんば りましょう。 (とみやま)

スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中央書記長の山川さんが、イラク侵略戦争開始前に書かれた資料があります。今日の情勢を知るためにも参考になると思い、転載をお願いしたところ快諾していただきました。お奨めいたします。

《参考資料》

アメリカは何故、イラクにこだわるのか―石油から見たイラク侵略戦争

山川博康

イラクの『石油』がキーワード

ブッシュ政権発足以来、アメリカの単独主義に批判的であったEUでは、ドイツが早々と「軍隊を派遣しない」と表明し、フランスも「確 たるデータがあるなら示すべき」と米英を牽制している。ロシア、中国も国連決議を条件にイラク攻撃を支持したが、本音は反対である。91年の湾岸戦争以来 既に12年が経過しているが、イラク経済制裁下で米英系企業が参入を排除されている間に、フランス、ロシア、中国の企業は石油権益を獲得したり、開発の交 渉中である。イラクの隣国であるサウジアラビアも、当初、「イラク爆撃の米軍基地の使用や領空の通過を認めない」と打ち出した。
これだけ主要国が反対し、かつ莫大な戦費を必要とするイラク爆撃に何故ブッシュはこだわるのか。そこには世界第二位の埋蔵量を持つというイラクの『石油』が一番大きなキーワードとして出てくる。

イラク石油開発に遅れをとったアメリカ

イラクの埋蔵量は1152億バーレルと、サウジアラビアの2618億バーレルに次ぐ世界第二位と推定されていて、世界の確認埋蔵量の 10・9パーセントを占めている。かつて、イラクの当局者が国際的な石油会議の場で、『イラクの確認石油埋蔵量は1120億バーレルだが、さらに、 2140億バーレルの可能性がある』と話したこともある。今日、一次エネルギー消費の40パーセントが石油(天然ガスは25パーセント弱)であり、20年 後の長期需要予測においても、この割合は大きく変化せず、石油がこれからもエネルギーの主役である以上、そして、世界の1/4以上の石油消費国であるアメ リカのブッシュ政権にとって、ロシアやフランス、中国に遅れをとっているイラクの石油権益の巻き返しがイラク侵略戦争である。

経済制裁下で、イラクの石油権益を失ったアメリカ

イラク石油開発の歴史は英仏独の資本が主導したのである。第一次世界大戦後、独に代わり米企業が参入したものの他の中東湾岸産油国同 様に60~70年代における油田の国有化策で米石油企業は権益を失っていった。湾岸戦争以降、米英のイラク経済制裁により米英石油メジャーがサウジに接近 する中で、イラク・フセインは仏、伊、中国、ロシアなどの企業と油田の開発契約を進めてきたのである。イラク南部ではトタールフィナエルフ(仏)がマジュ ヌーン油田とナハル・ウマル油田の開発で交渉中であり、ロシアのルクオイルは97年に西クルナの開発権を得ている。また、ロシアとベラルーシュの合弁企業 スラブネフトはスッパ・ルハイス油田の開発権を昨年10月に調印し、中国石油天然ガス集団公司( CNPC)やイタリアのアジップなどもハルファーヤ油田の開発に向け交渉中である。

イラク侵略反対にまわったサウジ

世界最大の確認埋蔵量と有数の産油量を誇るサウジアラビアは、当初、米英軍のイラク爆撃に際して自国の米軍基地からの発着を認めてい なかった。これまでサウジはアメリカの同盟国として、最大の石油供給国としてだけでなく、湾岸戦争には米軍基地を建設し多額の戦費も負担した。しかし、 「9・11」以降、アメリカとサウジの関係が急激に悪化した。「反米自爆テロ」の多くがサウジ出身者であったことで、アメリカは全てのサウジアラビア人を テロリスト扱いした。これで多くの米留学生が帰国した。米国市場に流入しているオイルダラーも、一千億~二千億ドルをヨーロッパなどに異動させた。12年 前の湾岸戦争と違い、「保守からリベラルまでさまざまな立場の人が、アルジャジーラ(カタールの衛星テレビ)でパレスチナの惨劇を見て、反米感情を募らせ ている。米国が世界の警察官として米国のルールを押しつけるたびに、アラブの尊厳、イスラムの自由といった理念が強まって行く。大衆や宗教指導層はサウジ の基地から飛び立った米軍機がイラクを爆撃することを許さないだろう」と、英王立国際問題研究所のマイ・ヤマニ氏が言うように、サウジには米英軍によるイ ラク爆撃が王制国家体制の崩壊につながる危険性をはらんでいるのである。

湾岸王制国家の崩壊を招きかねないイラク攻撃

また、米ブッシュ政権高官の「サダム退治後、米国際石油資本が進出してイラクの原油生産を3倍に増やす」が、可能になる素地が十分に あり、現実となれば、OPEC内でのサウジの指導権は喪失、原油価格の暴落によるOPECそのものの解体、サウジをはじめ国家財政にオイルダラーの全てを 依存する王制国家の崩壊もあり得る。湾岸国家のとって最も危惧しているのが、フセイン政権打倒後のこのシナリオである。1980年から今日までの20数年 間において、原油価格が10ドル/バーレル以下に下落する、いわゆる逆石油危機が産油国を直撃したことが、86年、89年、99年と3回起きている。いず れもが経済不況による石油需要の減退による価格の下落が産油国の国家財政を直撃した。89年の逆石油危機では巨大国家であり有数の産油国であったソ連邦が 崩壊している。

イラク侵略戦争は絶対に許せない

IEA発表では02年の世界の石油需要は7663万バーレル/日、03年は7775万バーレル/日、02年比で約100万バーレル/日強 の増加を予想している。その1/4を消費し、地球温暖化防止対策としての97年京都議定書からの離脱を明らかにしている米ブッシュ政権がめざすのは、これ からもエネルギーの基軸をなす石油の支配であり、その軸が確認埋蔵量の66・5パーセント(可採年数105年)を占める中東の石油であり、イラク侵略であ る。湾岸戦争で10万人以上の人々を殺し、劣化ウラン弾による放射線障害で戦後も死者は絶えない。再び、侵略戦争をしかけてそれこそ大量破壊兵器でイラク 民衆を皆殺しにすることなど絶対に許せない。(おわり)

 『季刊・刑事弁護』  小原弁護士の論文が掲載される 再審弁護団の一員である小原健弁護士の「法と心理学の接点としての富山事件」が、『季刊・刑事弁護』36号(2003年10月発行)に掲載されました。原審から弁護を担当された小原弁護士の力作から教えられるところが多いので、紹介します。
まず「富山事件の概要」で事件と弁護活動を概括的に説明し、獲得目標を「富山事件弁護団は、富山事件の弁護を通じて、わが国の捜査手続や裁判手続が、実 証的な裏付けのないまま、捜査機関が提出する証拠に安易に依拠している実態を批判しつつ、なんとか犯人識別供述の信用性について、科学的知見に基づく適正 な評価をさせ、富山氏の無実を明らかにしようと活動してきた」と要約したうえで、そのために「弁護団は、心理学者に依頼し、心理学的見地から実験を実施し てもらい、報告書や鑑定書が作成され、裁判所に提出された」ことの意義を提起。
つぎに、「心理学者への協力依頼の契機」として「そのうち私は、富山事件で犯人識別のために用いられた面割写真の束を持ち歩き、富山氏を見たことがない 人たちに見てもらうようになった。すると、ほとんどすべての者が、事件の状況を説明されただけで、同氏の写真を事件の犯人にもっともふさわしい者として選 び出すことに気づいた。そして、このことから、捜査段階で犯人のいわゆる面割りに用いられた富山氏の写真自体に、実は犯人である(と捜査当局がみなしてい る)ことを暗示させる情報が組み込まれているのではないかと思うようになった」ので「伝をたどって心理学者」を紹介してもらったそうです。
そして、「心理学鑑定による鑑定書や報告書の提出」で提出された報告書や鑑定書が紹介され、各々の証明力が展開されています。あえてひとつだけとりあげ れば、「最良の証人(確定判決)」といわれる「視力が0・4の人物」には「16・45メートル離れたところにいる初対面の人物の顔の同定識別はできない」 「見えない」という実験結果が出ています。この実験は、実際にどう見えるか(見えないか)がビデオ映像化されているのだから、裁判所は自分の目で確かめて みればいいのに、そうはしていません。
核心の「富山事件における心理学鑑定の課題」で「再審の段階で心理学鑑定の資料を提出しているが、いまだ具体的な成果を生むに至っていない理由」を 「1,事実審での提出ではない」「2,目撃証言に関する知識とこれに裏づけられた見通しが不足していた」「3,目撃証言評価の科学的側面につき裁判官を十 分に説得しきれていない」の三点に総括したうえで、「教訓と今後の展望」が提起されています。
結語は簡潔に要約されていてわかりやすいので、そのまま紹介します。
「富山事件においてもそうなのであるが、目撃証言は、一般に衝撃的、決定的印象を与える。目撃証言の危険性は明らかである。呪縛を解くのは、科学の力しかないであろう。
実際、明白な結論を示す目撃証言をあえて否定するためには、科学的根拠に対する信念と独善を戒める謙虚な人権感覚が必要である。さらに、自己の経験則自 体を対象化し、動かしがたい事実に照らしてその経験則自体を疑い、論理操作で思いこみを絶対化する独善性や硬直した態度を乗り越える内省的作業も必要であ る。考えてみれば、このようなことは、虚心に証拠に向き合い、あくまでも真実を探求するという、あるべき事実認定の姿勢そのものである。目撃証人論は、単 なる目撃証言という、ある特定の証拠の評価にとどまらず、裁判に対する姿勢そのものを問うことにつながる」。
実務家の見地からコンパクトにまとめられており、読みやすいうえにわかりやすい論文です。いま富山再審はどうなっているのかを知るとともに、説明するにももってこいの資料といえます。お奨めします。
【『季刊・刑事弁護』36号・現代人文社刊・2500円】
(と)

大井町ビラまき報告

休載

大井町のYさんから

 「明日のための第四十二歩目、
季節は冬です。とても寒い、コートが欲しい」

というお便りとともに二千円いただきました。ありがとうございます。
異常に暑くなったり、寒くなったりと天候不順がつづきます。ご自愛ください。