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ニュースNo.202(2005年7月15日発行)

 

タイトル 無実の富山さんの再審無罪をかちとる会ニュース ●ニュースNo.202(2005年7月15日発行)◎高裁申し入れ行動
申入書
『社会の鑑』から

□大井町ビラまき報告(休載)

東京高裁第四刑事部に申し入れ (6月22日)

富山さんは無実です
すみやかに再審開始決定を
検察官に証拠開示を命令してください

【富山さんが提出した「申入書」】

11月12日(土)に『きゅりあん』で集会を行います。みなさん、ご参加ください。

□高裁申し入れ行動

6月22日、「かちとる会」は、富山保信さんの再審(異議審)が審理されている東京高裁に対し申入れを行った。

1985年6月26日の二審逆転有罪判決から20年。これまでも、この有罪判決が言い渡された6月に、「かちとる会」は繰り返し申入れを行ってきている。そして、6月は、再審請求書を提出した月でもある(1994年6月20日に再審申立)。

今回の申入れも、前回と同様、係属部の東京高裁第四刑事部の裁判官はおろか書記官さえ会わず、「裁判官会議で決めた」とかで、東京高裁刑事部の訟廷管理 官が応対した。再審請求人本人の富山保信さんが出向いているのにも関わらず、である。会場もかつてのように書記官室ではなく、1階の、しかも裁判所構内か ら一旦外に出た、入り口脇の部屋である。阿藤周平さんが、「裁判所は変わってしまった」と嘆くのも無理ない状況が続いている。

申入れには、富山さん、関東学院大学の足立昌勝先生、国賠ネットの土屋さん、「かちとる会」から坂本さん、うり美さん、山村が参加した。以下、私のメモに基づいて、それぞれの発言の要旨を紹介したい。

東京高裁からは、訟廷管理官の小山田氏、庶務課の角田氏、近内氏らが出席した。

まず、富山さんが用意した申入書を読み上げたうえで、「裁判官にきちんとこの内容を伝えてほしい。昨年の3月30日、長年放置されたあげくに再審請求が 棄却された。即刻、異議申し立てを行い、現在、第四刑事部に係属している。本来なら、第四刑事部の裁判官に直接会って訴えたいというのが、請求人本人とし ての切実な気持ちだ。しかし、それができないというのなら、ここで私たちが述べたことを正確に裁判官に伝えてほしい」と厳しい表情で述べた。

次に、足立昌勝先生が、昨年、第三刑事部に提出された「要請書」とその賛同人について説明した。

この「要請書」は、富山さんの再審請求が棄却されようとしていることに危機感を抱いた93名の方々が賛同人となり、昨年3月、第三刑事部に提出されたも のである。一昨年10月8日に第三刑事部から「求意見書」が弁護団に届いたあと、浜田寿美男先生をはじめとする呼びかけ人の方々の呼びかけに応えて、心理 学者、法学者、弁護士等93名の方々が、「(検察官が開示を拒否している証拠の中には)確定判決の成否を左右しかねない重大な証拠が存在する可能性があ り、真実を追求すべき裁判所として、このような証拠を未開示のまま、再審請求について判断するようなことがあってはならない」「本件再審請求の審理がどの ようになされるかは、日本の裁判所の目撃証言についての認識のレベルがどのような水準にあるかを世界に示すものとなるとともに、今後の日本の刑事裁判の行 方を左右する」「慎重かつ公正な審理のうえで、後世の批判に耐えうるような決定を出されるよう望む」とする要請書に賛同し署名してくださった。足立先生 は、この時、署名した方々を代表して、東京高裁第三刑事部にこの「要請書」と賛同署名を提出されたのである。

第三刑事部は、この多くの方々の要請を踏みにじって棄却決定を下した。

その後、この要請署名は、第四刑事部あてに、さらに拡大して集められつつある。今回の申入れで、足立昌勝先生は「呼びかけ人を代表して要請したい」と、 第四刑事部あてに用意した「要請書」を読み上げ、「この事件は目撃証言が争点となっている事件である。特に私が注目しているのは、この目撃証言について、 0・4の視力しかない目撃者が16・45m先の人物を正確に認識することはできないという、実験に基づいた鑑定書が提出されていることである。科学的見地 に基づいたこの証拠に、第三刑事部は真正面から向き合うことなく、棄却決定を下した。第三刑事部の時に多くの方々から『要請書』に賛同を頂いた。第四刑事 部に再度、さらに拡大して集めて提出したいと考えている。第四刑事部の裁判官には、ぜひ公正な審理のうえで、弁護団の異議申し立てを認める決定をお願いし たい」と述べられた。

富山さんも、「2003年10月8日に裁判所から『求意見書』が届いた。弁護団の意見書が提出されるとともに、多くの方々から、『慎重かつ公正な審理を お願いしたい』という署名が集まった。2カ月くらいの間に、心理学者、法学者、弁護士をはじめとする93名の方々から署名が届いた。これに第三刑事部は応 えようともしなかったのは許せないことだ」と発言した。

足立先生は、さらに、「『法と心理学会』という学会が数年前に設立された。その設立大会で、私と九州大学の先生が富山事件について報告を行い、確定判決 の問題点について批判した。日弁連の研究会でも富山君の再審が検討されている。法律や心理学に関わる多くの方々が、この事件の確定判決はおかしいとしてい る。裁判所がこうしたことをまっとうに見ないでいいのか。なぜ、事実から目を背けようとするのか」と追及した。

富山さんも、「今、足立先生がおっしゃった『法と心理学会』で、目撃証言に関するガイドラインが検討されており、ほぼ完成に近い。今年中にも公刊される 予定になっている。裁判所が目撃証言について審理する場合のガイドラインともなるものだ。ぜひ、裁判官に読んでもらいたい」と述べた。

この後、「かちとる会」の坂本さんが、「僕には、この事件と富山さんがどうにも結びつかない。『有罪だ』とする裁判所が言っている論理は『世にも不思議 な物語』としか思えない。こんなことが通っていいのだろうか。警察は、富山さんの考えとか活動をつぶそうとして、とにかく逮捕したのではないかと思う。真 実がどうかではない。有罪を下した裁判所、再審請求を棄却した裁判所も、事実を審理するのではなく、富山さんの思想を裁こうとしたのではないか」と発言さ れた。

土屋さんは、「国家賠償事件に携わってきた。現在、愛媛の教科書裁判で裁判官の不作為に対して国家賠償を求めている。今日、ここで富山さんたちが述べた ことを裁判官にきちんと伝えてほしい。本当は直接伝えられればいいのだが。あなた方が窓口なのでしょうから、きちんと責任をもって伝えてほしい」と訴えて くださった。

山村は、「一審の時からずっと公判を傍聴してきた。この裁判に携わって30年近くになる。一審、二審の過程の公判を傍聴し続け、この事件の目撃者たちの 証言を聞き、その不確かさに驚いた。デタラメとも言える内容だった。富山さんが犯人ではないこと、目撃証言が誤っていることは、公判を傍聴し続けてよくわ かった。一審の裁判所は、この目撃証言を信用できないと、正当な判断を下して無罪とした。にもかかわらず、二審の裁判官たちは、目撃者たちの証言をきちん と検証しようとせず、目撃者を取り調べた警察官の証言だけを根拠に有罪とした。有罪判決が出された時も傍聴席にいたが、目の前で真実が踏みにじられたと心 底思った。再審請求書をきちんと読めば、富山さんが無実であることははっきりする。きちんとした検討も行わず、この再審請求を棄却した第三刑事部は真実を 見ようともしなかったとしか思えない。第四刑事部の裁判官には、ぜひ事実審理を行って頂きたい。弁護人が再審で提出した目撃証言や鑑定書を調べれば、真実 はたちまち明らかになる。ぜひ、第三刑事部の棄却決定を覆し、再審を開始してほしい」と述べた。

うり美さんは、「10年以上前から『かちとる会』に参加して、この事件に関わってきた。この事件では、目撃証言の信用性が問題になっている。目撃者の供 述を見ると、当初は『165センチ』と言っていた身長が、富山さんの身長に合わせる形で『180センチ』に変わっていく。これは、誰が見ても、どんな素人 でもおかしいと思う。また、『丸顔』が『角張った顔』に変わっていくなど、人を見た印象がこんなにも変わっていくことはあり得ない。しかも、それが、顔、 身長、体格、年齢、すべてにわたって変遷していく。明らかにこの事件の目撃証言は作られたもの、作為を感じる。しかも法廷に出てきた目撃証人はほんの一 部。残りの目撃者の調書をぜひ開示してほしい。富山さんが犯人ではないという証拠が必ずあるはずだ。私は、この事件は難しい事件ではないと思う。公正な目 で見てもらえれば、富山さんの無実ははっきりする」と証拠開示の重要性を強調した。

最後に富山さんが、「1974年の10月3日に事件は起きた。私は、翌年の1月13日に逮捕され、2月3日に起訴された。逮捕された時、なぜ逮捕された のか、私には想像もつかなかった。警察署で罪名を知らされ、血が逆流するような怒りを感じた。やっていないという私の訴えに応え、一審は無罪判決だった が、二審で逆転、有罪となり、その場で収監された。最高裁は事実審理もせずに上告を棄却した。一審無罪、二審有罪なのだから、少なくとも最高裁はきちんと 審理をして判断すべきなのに、それをしなかった。大阪刑務所に服役中の1994年に再審を申し立てた。これまで、5人の裁判官が代わったが、だれ一人きち んとした審理をせず、放置されたまま、中川裁判長は棄却決定を下した。これは門前払い以下である。弁護団や私の主張について答えているのならまだしも、 まったく審理していない。第四刑事部の裁判官には、きちんと向き合った審理をお願いしたい。審理をするのが裁判官の責務ではないか。この事件を支援してく ださっている方に八海事件の阿藤周平さんがいる。何回か申入れにも来て頂いた。今日は体調がすぐれず上京できなかったが、阿藤さんが、真実は必ず通るとい うことを信じて獄中で頑張ってこれたとおっしゃっている。これは私の気持ちと同じだ。また、阿藤さんは、裁判官はきちんと審理せよ、きちんと審理をしさえ すれば、無罪になるのは明らかとおっしゃっている。そのとおりだと思う。正面から向き合ってください」と訴えた。

訟廷管理官の小山田氏は、「わかりました。必ず、みなさんが言われたことを伝えます」と言ったが、訟廷管理官たちの態度を見ていると、今回の申入れの内 容がどれだけ第四刑事部の裁判官に伝わるのか、はなはだ心もとない。しかし、雨の中を、足立先生はじめ、土屋さん、坂本さん、うり美さんと、駆けつけて下 さった方々がいる。療養中のため、残念ながら今回は参加できなかった阿藤さんからも、申入れ直前に、元気の出る手紙が届いた。その阿藤さんの手紙にもあっ たが「横たわる巨大な壁(国家権力)、それに負けずに何べんも挑んでゆく、これこそ真実の闘い」である。「名張毒ぶどう酒事件」の再審開始の例もある。ま だまだこれからだ。諦めた時が負けだ。倦まず弛まず闘いを積み重ね、再審の「厚い壁」を打ち壊したい。真実こそがその鍵だ。うっとうしい梅雨空の下、久し ぶりに晴々とした気分で裁判所を後にした。
(山村)

□申入書

6月22日の申し入れ当日、富山さんが提出した申入書です。

申入書
私は無実です。しかし、棄却決定という事実を踏みにじる決定が行われました。怒りに耐えません。再審開始こそが、事実に踏まえた正しい決定なのです。
仙波裁判長には、誤った棄却決定を訂正、取り消していただきたい、そして真実の実現にむけて事態を打開していただきたいと心からお願いいたします。
棄却決定は、私の訴えを真摯に検討した結果であるとは、とても考えられません。あらかじめ棄却という結論だけがあって、そのためにのみ腐心した産物と断定せざるをえません。
なぜ第三刑事部は証拠開示を命じなかったのでしょうか。証拠開示問題を論じるどころか、言及さえしなかったのはなぜなのでしょう。
34人分の調書の存在は、捜査責任者が法廷で証言しています。開示されていない調書の中に、私の無実を証明している証言があるに違いありません。だから 検察官は隠しているのです。そうでないというのなら、開示して決着をつければよいではありませんか。
刑事裁判の存在理由は《無辜の救済》にあります。その最後のチャンスともいうべき再審において、十全の審理を保障する証拠開示に背を向ける態度は、怠慢を通り越して裁判官としての職責放棄であり、刑事裁判の使命への敵対であるというべきです。
検察官に証拠開示を命じてください。そして、それにもとづく正しい判断をしてください。
さらに、棄却決定はなぜ科学的知見の導入をかたくなに拒むのでしょうか。なぜ、ことさらに歪曲してまで科学的知見の説得力を否定、無視しようとするのでしょうか。
一例だけあげます。近藤鑑定をご覧ください。16・45メートルの距離からは、視力0・4の人物には初めて見る目撃対象の人相は識別できないという実験 結果が出ています。この絶対的事実を直視してください。そうすれば、棄却決定の誤りが歴然としていることに気づかれるはずです。
私は、これまで繰り返し繰り返し無実を訴えるとともに
「当たり前のことが当たり前のこととして実現される裁判、正しいことが正しいこととして通用する裁判であれば、私の無実は判明すると信じて裁判に臨みました。近代刑事裁判が到達した地平と成果をそのまま適用すれば可能なはずなのです」
と訴え続けてきました。
また、
「誤りを率直に誤りと認めて改める裁判所のあり方こそが日本の刑事裁判を血の通った信頼できるものにし、その前提があってはじめて、『法の安定性』はその名にふさわしいものになる」
と主張してきました。
これらは、至極当然の要請であり、主張にすぎません。それがことごとく裏切られ続けているのです。
1975年1月13日の不当逮捕以来の私の怒りと苦しみは筆舌には尽くせません。
第一審は刑事裁判の原則に忠実に則って正しい事実認定を行いました。ところが、第二審は予断と偏見に基づきほとんど同一の証拠で逆転有罪を宣告するとい う近代刑事裁判が到達した地平と成果をあえて踏みにじる暴挙を働いたのみか、最高裁もこれを容認して日本の刑事裁判を刑事裁判の名に値しないものへとおと しめてしまったのです。この恥ずべき過ちが改められない限り、私が苦しみ―身に覚えのない殺人犯という烙印を押され、真実を訴えているにもかかわらず嘘つ きとして全人格を否定されたままであることの苦痛―から解放されることはありません。解放されるのは、唯一、再審無罪によってのみなのです。
裁判官諸氏に心から訴えます。私の怒りと苦しみを洞察力をもって理解してください。そして、自ら原審に臨み、原判決を書くつもりで虚心坦懐に審理してく ださい。そうすれば、必ず検察官に対する証拠開示命令と棄却決定の取り消しに到達すると確信しています。今度こそ裏切らないでください。切に願ってやみま せん。
2005年6月22日
富山保信
東京高等裁判所第四刑事部御中

□『社会の鑑』(足立昌勝さんのホームページ)から

高裁第四刑事部への申し入れを行っていただいた足立先生のホームページに、早速当日の申し入れ行動の意義が掲載されましたので、許可を得て転載します。
2005年6月22日(水)
富山事件

今日は東京高等裁判所に行き、3月30日に同裁判所刑事第三部で棄却された再審請求の異議審を担当する刑事第四部に、再審開始決定の要請を行った。
富山事件の詳細については、こちら【注:「かちとる会」のホームページにリンク】をご覧ください。そこになぜ再審請求を行うのかとともに、再審請求の基本的証拠が記載されている。
私から見ると、目撃証言が警察に誘導されて現れてきたことと視力の弱い人が実際に現認できないにもかかわらず詳細に供述していることは、まさにその人の嘘を証明している証拠であると思う。
 裁判所は英断をもって再審の開始決定をすべきである。
従来の判断は、これらの証拠に真正面からは答えず、再審を棄却した。このような裁判官は、何を根拠にそのような決定をしたのであろうか。彼らは、自らの胸に手を当てて考えてもらいたい。提出した証拠を検討しないで棄却決定をしたことに深い反省を表すべきである。
刑事第四部は、このような誤りを犯してはならない。人の人生がかかっているのだ。あなたが裁判官として人生を送り、そこから給料を得ているように、彼に も生活がある。裁判官は、何がどのようにして起こったのかを客観的資料に基づいて検討する義務があるだろう。それを行えば、富山保信さんは無罪である。一 日も早く、彼の再審を開始させようではないか。
【『社会の鑑』は、YahooまたはGoogle、MSNで『社会の鑑』を検索してくだされば、すぐ見つかります。 】
2005年6月22日の日誌をご覧ください。

http://home.kanto-gakuin.ac.jp/~adachi/

 

大井町ビラまき報告

休載

大井町のYさんから

休載

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