6月29日の集会は71名の方々が参加してくださいました。ご協力ありがとうございました。
(6月29日『きゅりあん』にて) |
■高裁申し入れ報告 6月28日、富山保信さんの再審が審理されている東京高裁第三刑事部に対して再審開始・再審無罪を求めて申し入れを行った。 今回は、阿藤周平さんと広島「かちとる会」の大槻泰生さんが翌日の集会に先立って上京し、申し入れに参加してくださった。国賠ネットの土屋さんも参加し てくださり、富山さん、阿藤さん、大槻さん、土屋さん、大井町のHさん、亀さん、山村の計7名での申し入れとなった。 事前に東京高裁に連絡し、申し入れに行くことを伝えると、例によって今回も、第三刑事部の書記官ではなく訟廷管理官が応対するとのことだった。そして、 「時間は30分以内。原則として書面による申し入れとその補充説明。参加するのは20人以内」という条件が示された。 一昨年から、「裁判官会議で決まった」とかで、係属部の書記官が応対するのではなく、総務課の訟廷管理官が出てくるようになった。申し入れの場所も第三 刑事部の書記官室から一階の片隅の部屋になった。再審請求人である富山さんが申し入れに来ているにも関わらず裁判官が会わないというのでも納得できなかっ たのに、書記官室にも行けず、書記官すら会わなくなった現状は理不尽としか言いようがない。 今回初めて富山再審の高裁申入れに参加してくださった阿藤さんは、まず、裁判所入口の金属探知機や手荷物検査に驚いていた。 「なんやこれは。わしらの時はこんなことはなかったで。裁判所はもっと開かれたものやった。いつからこんなに閉鎖的になったんや。大阪の裁判所もこんなことはせんのと違うか」 さらに、第三刑事部の書記官ではなく総務課の職員が応対すると聞くと、「それじゃなんもわからんやないか。裁判で何が問題になっているか、書記官ならまだしも、総務課じゃなんもわからんやろ」と憤然としていた。 裁判所入口の横にある部屋に入ると、約束した午後1時30分きっかりに3人の裁判所職員が出てきて、それぞれ「訟廷管理官の船戸」「副訟廷管理官の蓜(はい)島」「総務課の椿」と自己紹介した。「総務課の椿」氏以外は昨年も応対した職員だ。 最初に富山さんが用意した申入書を読みあげた。申入書を提出するにあたって、富山さんが「申入書はあなたたちが受け取ってどこに届けるのか」と確認した ところ、船戸訟廷管理官は「第三刑事部の裁判官と書記官に届けます」と言って申入書を4部受け取った。 申入書を読みあげた後、富山さんが、「毎年申し入れに来ているが、以前は第三刑事部の書記官に会って手渡すことができたのに一昨年から係属部の書記官に すら会えない。昨年の申し入れの時もあなた(船戸訟廷管理官)が応対したが、その際、申入書はどう扱われるのかという質問に、部の書記官に届けるというこ としか答えられなかった。申し入れた内容が第三刑事部の裁判官にどう伝わり、どう扱われたのか、誠実に実行されたのか否か、その反応を知ることもできない のは、請求人本人として非常に不本意な事態だ。昨年、確認した申し入れはどういうふうに処理されたのか」と聞いた。 船戸訟廷管理官は、「申入書は当事者以外の扱いになるので、総務課で受理し、事務局を経由して第三刑事部の書記官に渡すことになっている」と答えた。 富山さんが「私は当事者だ」と言うと、船戸訟廷管理官は「証拠としての書類という主旨です。申入書は証拠以外の扱いになりますので」と言い訳っぽく説明した。 富山さんが「これまでは第三刑事部の書記官に直接手渡せたのに一昨年からそれもできなくなった。申入書がきちんと裁判官に渡っているのかも確認できな い。受け取ったことを証明する印をもらいたい」と要求すると、船戸訟廷管理官は「申入書に対しては、受け取りは出していない」と言う。 富山さんが「憲法に保証された請願権に基づいて申入れに来ている。なぜ受け取りを出せないのか」と追及すると、船戸訟廷管理官は「受け取り印をというこ となら、申入書は受け取れない」と言いだした。このふざけた対応に、「受け取れないとはなんだ」「本人の申入書がなぜ証拠ではないのか」と土屋さんや大槻 さんが詰め寄ったが、船戸訟廷管理官は「申入書は証拠ではないので」と繰り返す。 申入れは最初から緊迫した雰囲気になったが、富山さんが「その問題は最後にもう一度きちんとした回答を求めたい。その前に、今日は遠方から八海事件の元 被告の阿藤周平さんが来てくださっているので、先にお話を」と阿藤さんを紹介すると船戸訟廷管理官はびっくりしたように姿勢を正した。 阿藤さんは、「私は、八海事件で死刑判決を受け、死刑―死刑―無罪―死刑―無罪と生と死を行き来し、三度目の最高裁でようやく無罪をかちとった阿藤周平 です。無罪をかちとるまで18年かかりました。今日は富山さんの再審について要望書を用意してきたので提出したいと思います。ぜひ、裁判官に手渡してもら い読んで頂きたいと思います」と前置きをして要望書を読みあげた。 阿藤さんは要望書を提出しながら、「私は18年にわたって辛苦をなめました。この要望書を裁判官に読んでもらったらその心労はわかると思います。私は、 富山さんが無罪かどうか、白か黒かということより、すみやかに正しい裁判をしてほしいと願っています。正しい裁判をすれば、この事件がえん罪だとわかりま す。そのことを私は18年間の八海事件の過程で知っています。富山さんやみなさんの要望を、真心をこめた申入れを、ぜひ裁判官に伝えてほしい。約束できま すか」と念を押した。船戸訟廷管理官、神妙な顔で「お約束します」。さらに阿藤さんがその顔をじっと見つめて「私は裁判所を信用しますよ」と言うと、船戸 訟廷管理官は「必ず伝えます」と緊張した面持ちで答えていた。 阿藤さんは続けて、「八海事件から30年が経ち、今の裁判所は、当時とは建物も警備のようすも違ってきているように思います。しかし、真実を裁く裁判官 の態度は変わらないと私は思っています。私は独房の中で12年間、踏まれても踏まれても強く生きてきました。なぜなら、真実は必ず通る、裁判官に通じると 思っていたからです。その身を富山さんに置き換えてみます。富山さんと私とは通じるものがあります。富山さんは10年間服役して大阪刑務所から出てきまし た。私は死刑―無罪―死刑―無罪を何度も繰り返して最後に無罪をかちとった。しかし、二人には共通するものがあります。それは、富山さんも私も裁判所を信 用するということです。なぜか。それは無実だからです。その、裁判所を信用する心を裏切らないようお願いします」と訴えた。 次に、大井町駅前で署名してくださって以来、高裁申入れの度に駆けつけてくださっている品川区のHさんが、「再審請求から8年、ここまで放置されると裁 判官の職務に対して疑問を抱かせることになる。昨年も来ましたが、なぜ7年も8年も再審請求がほおっておかれるのか納得できません。いつまで経っても、何 回も申し入れをやっても、『そうですか』では困る。 この事件の目撃証言は非常に問題がある証拠です。なぜ、それを裁判官が解明しないのか、私には理解できない。また、富山さんが無実の証拠を検察官が開示 しないというのはおかしい。裁判所が動くべきです。裁判官が検察官に証拠の開示を命令できないのですか。公正な裁判のためには、すべての証拠を見る必要が ある。それは再審でも、普通の裁判でも同じでしょう。それをやらないのは裁判官の怠慢ではありませんか。証拠開示の問題は、この事件で一番重要です。検察 官は自分たちに有利なものだけでなく全部の証拠を出して、裁判官に判断させなければならないのではないですか。 私は、この事件を知って、捜査官の目撃者に対する誘導を感じるのですが、そんな証拠で、一人の人間を10年間も拘束するのは、憲法に保障されている基本 的人権の立場から言っても軽率極まりないことではないですか。これは人権問題ですよ。人権問題として証拠開示の問題があると考えます。このことを確実に裁 判官に伝えてほしい」 と訴えた。 阿藤さんが、「こうした申入書や要望書は裁判官に本当に届いているのですか。裁判官が目を通したかどうか、あなた、確認できますか」と再度確認すると、 船戸訟廷管理官は「裁判官が目を通したかどうかまでは私には確認することはできません。しかし、裁判官がいつでも見ることができるような状態にはなってい るということです」と答えた。 阿藤さんは、さらに「私の時はもっとストレートに行きました。要請文や嘆願書とか公正な裁判を求めるハガキなどは書記官室に持って行った。それを書記官 が受け取って裁判官に渡していた。私が獄中にいる時、私の家族が最高裁の判事の官舎まで会いに行っています。さすがに判事は会いませんでしたが、奥さんは 会ってくれた。暑いさかりです。奥さんは、幼い子供を背負った私の妻に、暑いでしょうとジュースを出してくれたそうです。それから30年経ちましたが、今 の裁判所はずいぶん変わったのと違いますか。第三刑事部の書記官なら事件のことは多少ともわかっていると思いますが、あなたたちは総務課でしょう。富山さ んの要望は本当に裁判官に正確に届くのでしょうか。あなたたちは第三刑事部に口頭で伝えるのですか」と追及した。これに対し、船戸訟廷管理官は「口頭で第 三刑事部の主任書記官に伝えます」と答えた。阿藤さんは「だったら、ぜひ、裁判官の耳に入るように伝えてください。これは紙くずじゃないんですから。みん なの心がこもった要望書なんですから。裁判官にきちんと伝えて頂きたい」と強く念を押した。 広島から駆けつけてくださった大槻さんは、「1994年の国連の人権委員会が証拠開示についての勧告を日本政府に出していますが、それは知っています か。証拠開示は重要な問題です。富山さんの無実を証明する証拠が開示されず、検察官が隠しつづけているのは公正な裁判と言えないのではないですか」と追及 した。船戸訟廷管理官は「人権委員会で勧告が出ていることは承知しています。しかし、証拠開示命令を出すかどうかは裁判官の判断で、私たちがどうこうする ことはできません」と回答、大槻さんが「一人の人間の無実がかかっているんですよ。本気になってほしい」と語気を強めると、「証拠開示命令を出してほしい という要望は第三刑事部に必ず伝えておきます」と答えた。 富山さんが、「申し入れに来ても、私たちとしては、それが裁判官にどこまで届いているのか確認する手づるがないわけです。請求人本人としては、係属部の 書記官でもないあなたに言ってもきちんと裁判官に伝わるのかと不安に思います。しかも受け取りも出さないと言うですから。先ほどあなたは口頭で伝えると言 いましたが、しかし、官公庁というものは書面として出すのが正式のやり方ではないのですか。今回、大阪から阿藤さんが駆けつけてくださっていますが、申し 入れや要望に来ること自体、私たちにとっては大きなことです。裁判官にきちんと事実を知ってほしいという気持ちで来ている。きちんと扱ってほしいという切 実な思いで来ている。しかし、現状はあなたたちを通してしか伝わらない、あなたたちを信用するしかないという状態です。これは私たちとしてはとても納得の いくものではない。以前のようにもどす余地があるのではないか、検討すべきではないですか」と追及すると、船戸訟廷管理官は、「その点について検討するよ う要請があったことは、裁判所の事務当局の問題として伝えます」と回答した。 最後に、富山さんが「再審請求を行ってから8年も経っている。真剣に考えてほしい。真剣に考えたら、証拠開示命令は発せざるを得ないと思います。確定判 決が正しいかどうか、それを判断するには、捜査責任者の警察官が34人の目撃者の調書があると言っているのですから、それを見て真剣にその正否を判断して ほしい。すべてを見て磐石の審理のもとで判決を出してほしいというのが請求人としての切実な要望です。そのことを裁判官に正確に伝えてほしい」と訴え、H さんが「真実と法律に拘束されるのが裁判官のはず。それに則ってやってほしい」、阿藤さんが「私たちは裁判官を信頼するしかない。真実は必ず裁判官に届く と信じています。それを裏切らないようにお願いします」と訴えて申入れを終わった。 昨年は、裁判所が勝手に決めた30分間という申し入れ時間の終わり近くになると時計を見ながらそわそわしていた船戸訟廷管理官も、今回は、阿藤さんや富山 さんの迫力に押されて時計を見ることもできなかったようだ。申し入れを始めてから40分を経過して、ようやく恐る恐るという感じで「時間も過ぎましたこと ですし、今回はそのへんで」と言いだした。 今回、阿藤さんが参加してくださったのは大きかった。阿藤さんの訴えは端で聞いていても胸に迫るものだった。およそ不誠実としか思えない船戸訟廷管理官 も、誤った裁判によって18年間にもおよぶ辛酸の年月を強いられた阿藤周平さんの「裁判所を信じます」という言葉に襟を正さざるを得なかったようだ。 また、富山再審への思いをこめた発言をしてくださった大槻さん、証拠開示を強調してくださった大井町のHさん、訟廷管理官のふざけた対応に怒りも露に弾 劾してくださった土屋さん、そして、なにより富山さんの訴えは本人にしかない迫力があった。申入書も請求人の切実な気持ちがこもっていた。裁判所に大きな インパクトを与える申入れになったと思う。 申し入れに参加してくださったみなさん、ありがとうございました。(山村) |
集会前日(6月28日)に東京高裁へ申し入れを行いました。
申 入 書私は無実です。こう繰り返し繰り返し訴え続けてきました。すでに1975年1月13日の不当逮捕から27年半たちます。1994年6月20日の再審請求から数えても8年です。 富山保信 東京高等裁判所第三刑事部御中 |
要望書 八海事件 元被告 貴裁判所に係属中の再審請求事件(請求人富山保信)につき要望書を提出いたします。 東京高等裁判所 第三刑事部 御中 |
■6・29
6月29日、大井町の『きゅりあん』において、「かちとる会」は富山さんの再審無罪を求める集会を行いました。集会には71名の方々が参加してくださいました。 今回は集会でご協力頂いたアンケートを掲載します。 ■アンケートから ▼ビデオ、非常に分かりやすく、広く多くの人に見てもらいたいと思いました。 ▼一番よかったです。〔男性/76歳/日雇〕 ▼たいへん勉強になった。これからの集会情報を送ってください。定例会の情報も。ホームページに日時が出ているのでしたらよろしいです。〔男性/私立高校教諭〕 ▼富山さん、阿藤さんの迫力ある肉声に圧倒されました。主人の実態と重なる部分が多く、改めて「あたり前のことがあたり前に行われる世 の中に」の気持ちを強く致しました。主人は来年1月4日に戻ります。今日のお話の中で訴え続けることの大切さを実感しました。「無実(やっていないこと) を証明する」ことは難しいですが、取り組んでまいります。 ▼日和らないで来て良かったと思います。必ず得るものがあります。この事が会員、関係者等に共有されるといいのですが・・・。 ▼ ▼ビデオは一層真実を明らかにする内容として前回のよりも拡充してました。 ▼ビデオが前に比べ、富山さんの人となりが伝わる立体的でわかりやすいものになった。 アンケートへのご協力ありがとうございました。 |
今回の大井町での署名集めの結果は 大井町のYさんから、6月26日付で、 |
●お詫び 前号のニュース165号の「資生堂製品の不買を」の中の(注)は私が無断でつけたものです。そのために、せっかく寄稿していただいた土屋さんにた いへんご迷惑をおかけしました。心からお詫びするとともに、以後こういうことを繰り返さないようにいたします。申し訳ありませんでした。
富山保信 |