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ニュースNo.214(2006年7月15日発行)

 

タイトル 無実の富山さんの再審無罪をかちとる会ニュース ●ニュースNo.214(2006年7月15日発行)◎東京高裁に申し入れ
申入書

大井町ビラまき報告

7月7日、東京高裁第四刑事部に申し入れを行いました。

私たちの訴えに誠実に応えてください。

検察官に証拠開示を命令してください。

再審請求棄却決定を取り消し、開始決定を出してください。

□東京高裁に申し入れ

7月7日、富山保信さんと「かちとる会」は、東京高裁に対して、再審開始を求めて申入れを行なった。申し入れには、足立昌勝関東学院大学教授、国賠ネットワークの土屋さんも駆けつけてくださった。「かちとる会」からはうり美さん、山村が参加した。
高裁からは、訟廷管理官の猪浦氏、総務課の林氏、長岡氏らが出席した。
まず、富山保信さんが「申入書」(別掲)を読み上げ、「74年に事件が起き、翌年の1月に逮捕されて以来32年になる。その間、一貫して無実を訴え続けて きたが、私の主張をきちんと検討してくれたのは一審のみ。二審も最高裁も、きちんとした審理もせずに私の訴えを退けた。きちんと審理をすれば、私の無実は 明らか。ぜひ、事実調べを行い、確定判決を改めてほしい」と訴えた。
続いて、足立先生が「要請文」を読み上げ、「この事件について公正な審理を求めるという要請文に、多くの学者や弁護士が名前を連ねている。法と心理学会で も、参加する法学者や心理学者、実務家の多くがこの事件は無実だと思っている。支援の輪も広がっている。こうした人々の声を受けて、裁判所はぜひ真剣に検 討してほしい」「目撃供述の信用性が揺らいでいる。この事件の目撃供述は信用できないという心理学者の鑑定書も提出されている。本件は、目撃供述の信用性 が争われている事件として真っ先に取り上げられる事件で、多くの人々が注目している。裁判所として、無実の人間を有罪にしたままというのは大きな汚点にな る。ぜひ、再審開始をお願いしたい」と訴えてくださった。
次にうり美さんが、「もう十数年にわたって富山事件を支援してきた。普通に考えると、無実の人間が27歳から30代、40代の後半まで刑務所の中に置かれ るということは考えられないことだ。自分の人生に置き換えた時、とても耐えられないことだと思う。無実の人間が有罪にされるなど、あってはならないことだ と思う。無実なら、なおさら司法の名のもとに正されなければならない。ずっと汚名を着せられている富山さんのことを思うと、再審を求め続ける気持ちがよく わかる。もし、私が富山さんの立場に置かれたら、私も同じことをするだろうと思う。最後まで闘って無罪をかちとるだろう。やっていない人を有罪にするの は、司法犯罪だと思う。この事件は誰が見ても無罪だとわかる事件。素人の私が見てもそう思う。きちんと調べれば必然的に無罪となる。公正な裁判で再審を開 始してほしい」と訴えた。
土屋さんは、「国賠ネットワークをやっている土屋です。土・日・Pの冤罪事件の人たちの国賠をはじめ、国賠に取り組んでいる。僕は、今の裁判所は三菱自動 車状態、あるいはシンドラーのエレベーター状態だと思う。欠陥商品を放置している状態だ。ぜひ、誤りを認めて、改めるべきは改めてほしい」と訴えた。
山村は、「再審制度は無辜(むこ)の救済のためにある。請求人に有利な証拠、無実を明らかにする証拠があるのに、検察官はそれを隠し続けている。裁判所が それを開示させ調べることもせず、再審請求を棄却するのは再審の本来の考え方からしても許されることではない。一審の時からずっと裁判を傍聴してきた。目 撃証人の証言をじかに聞いて、こんないいかげんな証言で起訴したのかと思った。一審で無罪判決が出た時、当然のことと思った。二審でも、検察官の立証は無 罪判決を覆すようなものではなかった。むしろ、目撃証言が警察官の暗示・誘導で作られたものであることが明らかになったと思った。しかし、信じられないこ とに二審で逆転有罪判決が出された。目の前で真実が踏みにじられたと思った。これが日本の裁判所かと絶望した。富山さんが言うように、きちんと事実を事実 として調べれば、無罪になるのは明らか。今こそ、裁判所は事実審理を行い、再審を開始してほしい」と述べた。
再度、富山さんが、「私は逮捕された時、何が起きたのかわからなかった。警察で殺人事件の犯人だと言われたが、何がなんだかわからなかった。全く身に覚え のない事件だった。やっていないものはやっていない。一審の裁判所は私の無実の訴えに応えてくれた。そして、目撃供述の変遷を問題にし、信用できないと判 断した。ところが、二審の裁判所は変遷してもかまわないとした。二審で捜査責任者の警察官が証言したが、事件を目撃した人は約40人いて、そのうち34人 の調書があるということだ。しかし、明らかにされたのは7人のみで、他の目撃者を検察官は隠し続けている。弁護団の努力によって捜し出した目撃者は、法廷 に立った証人とは全く違ったことを言っている。私の写真を見て、『こんな男ではない』と証言した人もいる。こうした目撃者の調書を検察官は隠し続けてい る。それで有罪だというのは到底納得できない。証拠を開示して、すべてを調べて納得できる形で裁判をやってほしい。裁判所は検察官に対して証拠開示を命じ てほしい。そうすれば、私の無実は明らかになる」と訴え、証拠開示についての「かちとる会」のパンフレットを「ぜひ裁判官に読んで頂きたい」と手渡した。
富山さんは、さらに、「刑事裁判に科学的知見を導入するのが世界の趨勢となっている。日本は遅れている。弁護団からも提出されたと思うが、法と心理学会か ら、目撃供述についてのガイドラインが出された。第4刑事部の裁判官にこれをきちんと読んでもらい、刑事裁判のあり方に先鞭をつけてもらいたい」「あらか じめ無罪の前提に立って無罪を出してほしいとは主張していない。公正に調べてほしいと言っている。そうすれば私の無実が明らかになることは間違いない。ぜ ひ、再審を開始し、きちんと事実審理を行なってほしい」と訴えて申入れを締めくくった。
私たちの訴えを、訟廷管理官の猪浦氏たちはメモを取りながら一応真剣そうに聞いており、最後に「必ず裁判官にお伝えします」と約束した。しかし、毎年、申 入れを行なっているが、私たちの声が裁判官に届いているとは思えず、虚しい気持ちになる。富山さんにすれば、虚しいどころではなく怒り心頭に発する思いだ ろう。
再審請求申立以来、「かちとる会」は毎年、6月26日の二審逆転有罪判決の日に合わせて、この時期に申入れを行なってきた。富山さんが満期で出獄し、一緒 に参加するようになってから今年で11回目である。参加する人の顔ぶれも年々変わる中、昨年に続き今年も、足立先生、土屋さんが参加してくださったことは 大変心強くうれしかった。足立先生は、富山さんが勝手に「大学の先輩」と慕っているが、とても頼りになる「先輩」である。土屋さんからは、ご自宅の庭で採 れた杏のジャムと梅漬けを頂いた。「運動をやっていて、一番うれしいことは新しい人が参加してくれることだけど、こういうことがあるというのもいいで しょ」と渡されたジャムと梅漬けはかわいいタオルで包んであり、作った日付が丁寧に書かれていた。うり美さんは最初の申入れからずっと参加してくれてい る。再審は大変な道のりだが、こうした方々がいるから頑張っていけるのだと思う。みなさん、ありがとうございました。  (山村)

 申入書

1975年1月13日の不当逮捕から31年半、1985年6月26日の不当判決から21年、このけっして短くはない期間、私はひたすら雪冤の思いで無実 を訴え続けてきました。不当逮捕当時27歳になったばかりであった私は、いまでは58歳です。まもなく還暦を迎えようとしています。無実の私が、なぜ身に 覚えのない「殺人犯」という汚名を背負わされ、苦しみつづけなければならないのでしょうか。
あらためて私は裁判官諸氏に声を大にして呼びかけたいし、率直に問いたいと思います。一人の人間の人生をかけた訴えに耳を傾けていただきたい、想像力を 働かせて、真剣に検討していただきたい、と。あなたの裁判官としての、そして人間としての良心と見識に照らして、近代刑事裁判の到達した地平からみると き、原々審・無罪判決と原審・有罪判決のどちらが説得力を持っているのか、さらに高裁第3刑事部による再審請求棄却決定は真摯に事案に立ち向かい、虚心坦 懐に審理を遂げたといえるのか、を。
確定審裁判官と上告審裁判官、そして再審請求を受理後放置し続けたのみか棄却決定すら行った高裁第3刑事部の裁判官は、良心と誇りを投げ捨てた不見識の 極みと弾劾せざるを得ません。一例を挙げましょう。原々審において、検察官は大井証人運転のタクシー乗客であるサンケイ新聞K記者の存在を、詳細は不明で あると隠し続けました。しかし、員面調書が開示されて、当初からK記者の存在も氏名も知悉していたことが露呈したことに明白なように、検察官は少なくとも 本件においては平気で嘘をつくこと、したがってこの一事をとっても証拠の真の意味での吟味のためには他の証拠開示が不可欠であることが実例をもって証明さ れています。しかるに、前述の裁判官たちは、とりわけ再審請求棄却決定は、この事実にも証拠開示問題にも正対しようとはしていません。これでは一人私のみ でなく、誰をも納得させることはできないでしょう。
確定判決と再審請求棄却決定は、日本刑事裁判の汚点です。一刻も早くただされることによって、私が苦しみから解放され、救済されるだけでなく、日本の刑 事裁判が冤罪の根絶に向かって大きく前進する展望が開かれます。私は無理を言っているわけではありません。私と弁護団が一貫して要請しているように、科学 的知見を正しく導入することと証拠開示を実現すれば、私の無実はたちどころに判明します。科学的知見の導入と取調の可視化と証拠開示は、世界の刑事裁判の 趨勢であり常識です。けっして不当な要求でもなければ過大で困難な負担を強いるものでもありません。人類の知的営みの成果を正しく導入・活用して誤りなき を期するのは私たち共通の願いであり、冤罪の根絶という見地からも賞賛されこそすれ非難される余地はないと思います。
刑事裁判の使命は無辜の救済です。人権の擁護―これを審理の場において実現してください。すなわち、貴裁判所の立場に即せば、検察官に証拠開示を命じる こと、そして謙虚に科学的知見を尊重することによって、再審請求棄却決定を訂正し、再審開始という正しい結論に到達するということにほかなりません。
私は無実です。いまこそ真実が認定されることを期待・確信してやみません。
2006年7月7日   富山保信
東京高等裁判所第四刑事部御中

 

大井町ビラまき報告

 Mさん・・・・・0
うり美・・・・・0
山村・・・・・・0
富山・・・・・・0

「梅雨入り宣言」となった関東地方。今日も朝から雨が降り続いていた。どうやらこのまま、止みそうで止まない雨と暫し付き合わなくてはならなそうだ。午後4時半、ビラまき開始。
しかし、雨の中でのビラまきは、なかなか捗らない。傘をもち、署名板をもちながら、瞬時にビラを渡す。モタモタしていると、ビラが濡れてしまうのだ。こん な日は、行き交う人々も両手が塞がっている人が殆どで、ビラすら受けとってもらえない。というよりも渡すタイミングさえ計れない。
それでも「署名をお願いしまーす」と叫んではみるものの、目の前の濡れた路面を走り抜ける車の音に、私達の声はかき消されていく。
そんな中でも、足を止め関心を持ってくれた人が、山村さん一人、Mさんが三人、私も一人いた。残念ながら皆「良く(ビラを)読んでから」と言って、署名までには至らなかった。
雨だから、はなっから期待はしていなかったのものの、亀さんならきっと署名を取ったんだろうなと、ふと思う。
結局、またまたジャンケンで「ビラまき報告者」を選出することに。またもや嫌な予感。ジャンケンでは「私、ジャンケン弱いですから」と豪語していたMさんにも私は負けて、またもや報告を書くはめになった。
それにしても、ジャンケンというのは公平なのか。私には、不公平に思えてならない。 (うり美)

大井町のYさんから

休載

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