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ニュースNo163(2002年4月1日発行)

●ニュースNo163(2002年4月1日発行)◎まやかし「司法改革」は改憲の先取り・戦争への道□大井町ビラまき報告


まやかし「司法改革」は改憲の先取り・戦争への道

 日本の司法の現状は、これを知る者、とりわけ裁判の場において現に国家権力と争っている者または経験者あるいは関係者にとって、その改革は急務だと痛感し、切望せずにはいられないほどひどい。
この数年、「司法改革」が鳴り物入りで論じられてきたが(1999年7月27日に「司法制度改革審議会」設置、2001年6月12日最終意見書提出、同 年12月1日司法制度改革推進法施行、「司法制度改革推進本部」―本部長は小泉首相で、全閣僚がメンバー―が発足、同年12月27日「司法制度改革推進本 部顧問会議」発令、2002年3月19日司法制度改革推進計画を閣議決定)、「これから三年間、関係の法整備などに取り組」むという。では、切望してやま ない司法に一歩でも近づくのだろうか。結論から言えば、全く逆である。基本的人権は踏みにじられ、人民が営々と積み重ねてきた努力の成果・権利はことごと く剥奪されるのみか、それを裁判で争うことさえできなくなるという恐るべき事態を現出させようというのが「司法改革」の正体に他ならない。本来ならば、司 法審(「司法制度改革審議会」)の最終意見書を俎上にあげて全面的に論じるべきなのだが、紙幅の都合で別の機会に譲って、ここではデッチ上げとたたかって いる当事者の立場から具体的に「司法改革」=歴史の逆行=人類の叡智への敵対がもたらす刑事司法の惨憺たる姿を暴いていきたい。
最終意見書には、あれほど饒舌に「司法改革」を論じながら(インターネットで引き出すにもA4・50枚では足りない)「基本的人権」という言葉が条文の 引用のほかには登場しない。捜査、逮捕、拘留、取り調べ、公判過程さらには執行過程でどれほどの違法・無法行為、人権蹂躙がまかり通っているか知らないと でもいうのだろうか。知らないはずはない。いや、知りすぎるほど知っているから人民の目をふさごう、たとえ気づいてもすべては「後の祭り」という状態にし てしまおうとしているのだ。
数限りない冤罪(まず膨大な数の冤罪が存在することを認識すべきだ。裁判官でさえ「三分の一は誤判」と述懐している例がある。微罪だと未解決事件は殆ど 累犯者の犯罪とされて「一件落着」となる。これが実態だ)が教えているように、捜査・逮捕・拘留・取調過程にメスを入れなければ冤罪は根絶できない。とこ ろが、ブラックボックス化している取調過程に光を当てようという気もなければ、悪名高い「代用監獄」すなわち拷問等の違法・無法行為やり放題の警察の留置 場への勾留の廃止も取り上げてはいない。例えば「捜査ガイドライン」の必要性を論じることもしない。そもそも冤罪はないという立場であり、刑事裁判の使命 は無辜の救済、無辜を罰せずにあるのではなく、社会秩序の維持を最優先するという観点に貫かれているからだ。この日本(にほん)においては、かつて一度た りとも公的に冤罪の研究・解明が行われたことはない。当然、責任も明確にされない。行ったことと言えば、どうすれば冤罪=権力犯罪が露呈しないですむかの 工夫に腐心しただけである。
したがって、事実認定に科学的知見を導入しようということもしない。ある裁判官が任官まもないころ事実認定の学習・研究に取り組もうとしたら先輩裁判官 に「事実認定はカンだよ」と言われたという逸話があるが、「代用監獄」の存続、取調過程の客観的保存(録音やビデオ化等)の否定等々のうえに、「裁判の迅 速化」の異常な強調をもって、たとえカンであろうと事実認定に精力を割くことさえ拒否しようとしている。
最終意見書が強調し、小泉首相が顧問会議(「司法制度改革推進本部顧問会議」―座長は司法審会長の佐藤幸治)での挨拶で「裁判は早く行われなければいけ ないのであり、こういう点を踏まえて司法改革に取り組んでいただきたい」と明言しているように、目指されているのは闇雲な「裁判の迅速化」であり、これを 実現するためには「推定無罪」原則の否定のもとに刑事裁判を儀式化してしまう、つまり人民が裁判で争えなくしてしまうということである。
最終意見書の「Ⅱ、国民の期待に応える司法制度」の「第二、刑事司法制度の改革」では、「準備手続きの創設」として第一回公判前に、裁判所が争点整理を 行って審理計画を決めてしまう、そして「連日的開廷の確保等」のために「裁判所の訴訟指揮の実効性の確保等」と「弁護体制等の整備」を行うという。噛みく だいて言えば、こういうことだ。国家権力が証拠を独占(実質的には隠蔽ということ)し、得手勝手な操作によって行われる事前の争点整理にもとづく公判で は、捜査権限のない被告・弁護側には第一回公判前までの期間に有利な証拠を収集するなど事実上不可能であり、しかも連日開廷とあっては防御権など絵に描い た餅ですらない。抽象的に論じても、成立させるためには「事前の証拠の全面開示」が大前提だが(すべての証拠を洗いざらい出して、その証拠価値をめぐる応 酬をたたかわせて、第三者の公平な判断を仰ぐということ)、一顧だにされてはいない。現実の裁判の場で常に争われるのは証拠開示問題である。松川事件での 「諏訪メモ」隠しに典型をみるように、捜査当局(警察・検察)が無実・無罪証拠を隠すからだ。都合のいい証拠だけを並べ、あるいはデッチ上げて、都合の悪 い証拠は隠したうえで決められる争点整理―審理計画に沿って行われる裁判など真実究明と無縁なことは考えるまでもない。はじめに有罪ありきで有罪宣告に向 かって問答無用で進行させる儀式にすぎないではないか。
それでも必死に抵抗し、たたかおうとする被告・弁護側に対して、裁判所は訴訟指揮権をいっそう強化してのぞむ(法廷での弁護活動や反証活動の制限、圧殺 ということだ。私の一審では法廷での反証活動をみっちりやって証拠開示をかちとり、それが無罪判決につながったが、「司法改革」のあかつきには「証人保 護」等を口実にできなくされる。そして、弁護士の弁護活動も制限される。争点整理から外れるからと、阻止される虞が大である。すでに被告と弁護人の秘密交 通権を圧殺しようとする動きがある。さらに、統一被告団、統一弁護団も存在できなくされる等々、被告は裁判の当事者ですらなくされてしまう)という。これ を貫徹するために、弁護士のあり方を一変させてしまう、つまり公的弁護制度の創設による刑事弁護の国家管理や、弁護士事務所の法人化による変質を狙ってお り、国家統制を法曹養成段階から図るものとして「法科大学院(ロースクール)」の創設もある(金の苦労など無縁の人間しか法曹界に進めなくなる。あるいは 苦学して法曹資格を得たとしても、その段階で1000万円―学費がそれくらいかかる―の借金を抱えて返済に奔走しなければいけないので、手弁当で刑事弁護 に取り組むのは困難とか、法曹資格を剥奪される恐れのある刑事弁護は敬遠するということになりかねない)。「司法改革」の狙いのひとつが(成否がと言って もよい)、個々の弁護士の屈服・変質はもちろんだが、弁護士会のまるごとの変質・翼賛組織化にあることは明瞭だ。
また「国民の司法参加」の謳い文句のもとに「裁判内容に国民の健全な社会常識がより反映される」とされる裁判員制度とは、こうした刑事裁判の形骸化のうえに導入されるのであって、そもそも実態としても陪審制ですらない。
なお、もうひとつだけあげておけば、訴訟費用の敗訴側負担の導入は裁判を受ける権利さえ否定するものだ。これほどあからさまに「貧乏人に人権なし」を公言するものはあるまい。
要するに、小泉首相=行政権力の長が「国家戦略として取り組む」ものであって改善の余地など論じるまでもない。建前としての「三権分立」すら放擲されて いるではないか。現状でさえ冤罪をはらすのは並大抵の苦労ではないのに、「司法改革」が強行されてしまったら、しかも組織的犯罪対策三法や団体規制法さら にいま襲いかかろうとしているカンパ禁止法等の一連の治安法制の大改悪によって裁判のみか裁判支援さえがんじがらめにしようとたくらまれているとあって は、このままでは座して死を待つのみだと言いたくなる。断じて、そうあるわけにはいかない。いまこそ立ち上がり、声を上げて、たたかわなければならない。
さいわい、まだ間に合う。弁護士会も「司法改革」の反動攻勢に席巻されたわけではない。今年の日弁連の会長選挙の結果に見られるように、「司法改革」の 正体が暴かれるに従って「司法改革」反対の力が前進している。「司法改革」絶対反対派が1300票増大して5000、そうでないのが8000。弁護士会の 丸ごとの転向のために「戦争のできる国家体制づくり」勢力の総力をあげた攻撃と対峙してここまで前進したということは、いかに「司法改革」がひどいもの か、ありていに言えば「戦時司法」にほかならないことを示して余りあるといえよう。
いよいよ今国会には有事法制が登場する。現代版国家総動員法である。
小泉政権は、本音を隠そうとはしていない。昨年12月22日の外国船撃沈・虐殺の強行と、その引き揚げという軍事挑発、いわゆる「拉致問題」を使った排 外主義キャンペーン、朝鮮総連への破防法適用策動等々、アメリカ・ブッシュの「悪の枢軸」論以上の悪辣さで排外主義・愛国主義を煽って、戦争への道を突き 進んでいる。「小泉構造改革」とは、人間が人間らしく生きられる社会へと「構造改革」するのではなく、国家と大資本が生き延びるために人民を犠牲にすると いうことであって、大失業と戦争をもたらすものだ。
すでに国会には「憲法調査会」が設置されて改憲を前提に論議されている。憲法第9条について、もはや戦力不保持は歯牙にもかけず、交戦権の否認の否定が 公然と語られている。有事法制とは実際に戦争をするためのものにほかならない。そして、「司法改革」とは改憲の先取りであり、いわば内堀・外堀を埋めてた たかわずして落城させる最後の仕上げともいうべきものだ。
現憲法に結実されているのは、日本人民の「二度と戦争をしてはいけない」「侵略のための銃をとってはならない」「加害者にも被害者にもならない」という 反省と決意だ。これを言葉だけに終わらせてはならない。本当に実践するときはいまだ。さもなければ再び殺戮と破壊の東洋鬼としてアジア人民と対するのみ か、自らも悲惨の極にたたきこまれるのだ。
人権が踏みにじられるとき戦争が始まる。そして、戦争こそは人権蹂躙の極致なのだ。「司法改革」の行き着く先をみれば、「司法改革」と戦争の一体性は明 らかだ。まやかし「司法改革」は憲法改悪・戦争への道だ。まやかし「司法改革」をうち砕こう。戦争反対派は人民の多数派なのだ。これを正しく反映させよう と、心ある弁護士諸氏は決起している。私たちも、粘り強く、着実に、そして楽しくたたかおう。私たちは、必ず勝てる。ともに勝つためにがんばろう。  (富山保信)

 今回から、大井町での署名集めは、これまでやってきた再審要求署名から証拠開示を求める署名に切り換えて行うことになりました。
「34人の目撃者の供述調書がある」とされているにもかかわらず、検察官は、そのうち7人の供述調書しか開示していません。開示されていない目撃者の中 には、富山さんが「犯人」であることを否定している人がいることが弁護団の調査でわかっています。いまだに開示されていない残り27人の調書をはじめ、富 山さんの無実を裏づける証拠を検察官は隠しつづけているのです。検察官にとって有利な証拠は出すが、無実を訴える被告にとって有利な証拠は隠す、こんな卑 劣なことはありません。
弁護団は裁判所に、検察官に対して証拠開示命令を出すよう求めており、証拠開示を求めるたたかいが焦点になっています。
事件現場である大井町の人々にも証拠開示の重要性を訴えたいということで、今回、証拠開示を求める署名を前面に出して署名集めを行うことになったものです。
また、これまで、立ち止まって話を聞いてくれる人でも、「話を聞いただけでは、無実かどうかすぐには判断できないから」と言って署名は断る人がいまし た。そういう人たちにも、証拠開示を求める署名の「公正な裁判のためにも、まずはすべての証拠を明らかにして審理すべき」「検察官が証拠を隠しつづけてい るのはフェアではない」という主張は受け入れやすいのではないか、これまで署名をためらっていた人たちにも納得して署名してもらえるのではないか、という ことが定例会で話題になり、検討した結果でもあります。
証拠開示を求める新しいビラは富山さんが作りました(6ページにビラの表を載せました。裏面に事件の説明、裁判の経過、申し入れの内容がありますが、紙面の都合で割愛します)。
その成果は、

亀・・・・・・3名
富山・・・・・2名
山村・・・・・1名
でした(うり美さんは体調を崩してお休み)。

今回、署名を終わろうとしていると、杖をついた男性が近づいてきて、何をしているのかと富山さんに話しかけてきました。その人はしば らく前から署名している私たちを見ていたらしく、富山さんの説明に、すぐ署名してくれました。そして、富山さんが無実なのに10年の刑を受けた本人である ことを知ると、「それはご苦労さまでした。大変でしたでしょう」と帽子をとって深々と頭を下げられたのには、富山さんのみならず私たちも恐縮してしまいま した。
この方は、沖縄の名護市出身とのことで、「国家権力というのは平気でそういうひどいことをする。沖縄の例をみてもそれはわかる」とおっしゃっていまし た。また、既成政党に対しても「だらしがない」「選挙の時にしかいい顔をしない。選挙が終わるととたんに住民のことを忘れる」と批判されていました。
その他にも貴重なご意見を伺うことができ、こういう方が署名してくださったことに大変勇気づけられました。毎月欠かさず、大井町駅頭に立っていると時々すばらしい出会いがあるものです。 (山村)

 3月19日付で、

 「(歩数の)数えなおしありがとうございます。明日のための第23歩目。
季節は桜の咲く季節となりました。
20日以上遅れました」

というお便りとともに2000円。

3月28日付で、

 「明日の為の第24歩目。
季節は春を通り越して夏のようです。桜も雨で散ってすぐ葉桜になってしまいました。ぐっと外にいるのも楽になりました(雨と風以外ですが)。(あっと、花見ができなかったか。)」

というお便りとともに2000円を頂きました。ありがとうございました。

 練馬区の読者の方から、住所変更の連絡とともに、「『明日のための・・・』を真似して・・・。2000円、お使いください」とカンパを頂きました。
また、以前、集会に参加してくださった大井町の方から、「カンパ。いつも御手紙ありがとうございます。これからも頑張って下さい」というお便りとともに3000円を頂きました。
また、他にも集会に参加された方で、3000円振り込んでくださった方がいます。
みなさん、ありがとうございました。

▼以前、集会に参加してくださった方からニュースのお礼と、職場の都合で地方に引っ越すので今度はそちらに送ってほしい旨のメールが届きました。
お送りしているニュースが確実に読まれていることに大変励まされます。これからもよろしくお願い致します。